風のささやき 俳句のblog

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慰めの、たいしたことない、自分には たいしたことで、あるから問題 【短歌】

2024年01月30日 | 短歌

大丈夫、たいしたことないよと
慰められたりすることがあります

確かに傍から見れば大したことはなくて
冷静になると自分でもそう思えてくるのですが

自分にとってはたいしたことだから
悩んでいるのだと内心
腹を立ててみたりします

ものの受け止め方は人それぞれ
感じ方も人それぞれ

そんなことを考えると
下手な慰めの言葉をかけるのも
ためらいを感じてしまいます


雪背負う田舎のバスの煤けよう 【季語:雪】

2024年01月27日 | 俳句:冬 天文

子供たちについて
雪深い道をスキーに出かけました
メインの車道はきちんと雪かきがされていて
これならば慣れぬ僕のような者でも
運転ができるかなと思うのですが

ちょっと脇にそれて
雪かきが中途半端な道に入ると
ちょっと運転には自信がもてません

そんな雪景色の中を
大きなバスも走っていきます
雪を車体の上に載せてどこか重そうに
そうして泥が跳ね散った車体で

ただでさえ古びた感じのバスが
余計に古臭く今にも壊れてしまうのではと
感じられるほどでした


雨音、あるいは叫び 【詩】

2024年01月25日 | 

「雨音、あるいは叫び」

ねえ、窓に雨がぶつかって、砕けている
雨音は、一粒一粒の、雨だれの悲鳴のようで
聞いていられない 
一つ一つが、潰れて行く(あるいは潰されて)
心の様だ、と、その鈍痛

さっきから君は、ガラス越しに降る雨を眺めている
雨の一つ一つ、忘れられて、姿をなくし
屋根にぶつかり、傘にぶつかり、地面に落ちて水たまり
どれだけの雨が今日一日で、地に落ちたろう
君は加速して、落ちてくる、時間の一方向を眺めている
もう、戻らない、戻れない、空には

僕の聞かない、聞こえない
悲痛な叫びを沢山、君はこの世界に聞く
それは、往々にして救われないもので
僕は少なくとも、答えを持っていない
だから、ごめん、黙ってしまうだけで
だから、君には、こんなにも暮らしにくい場所だ

放置される、その叫び声にすべて
耳を傾けられる者がいるとしたら
それを神とでも呼びたいと思う

一つ一つの悲鳴を、和らげてくれるものがいるとしても
その手元から、悲痛は瀑布のようにこぼれ
サラサラの砂を手のひらに、注ぎ込むように
世界はあまりにも脆く
叫びをあげて崩れて行くばかりだ
君も、僕も、この世のもの
逃れる術もない、寂しさにいる

それを土台にして、ここのところ
暮らす心持の僕がいる

窓の外を眺めたままの君
冷たい雨だ、君の体にも、その冷たさ沁み込んでしまう前に
こっちにおいで、少しで良いから
一緒に笑おう


待ってよと言っているのに置いて行く時は意地悪同情知らず 【短歌】

2024年01月23日 | 短歌

時間はいつでも
僕を置き去りにしていきます

待ってよと思っても
そんなことは聞く耳も持たず

もっとも苦しい時間であれば
速く過ぎてしまえと思うので
自分の心の持ち方によるのでしょうが

慌ただしいと
大切なものを沢山取りこぼしている気がして
もっと時間がゆっくりと過ぎればいいのにと思います

けれど時間があればあったで
漫画を読んだりしてだらける自分なので
結局は、自分の時間の使い方が問題なのでしょうね


凛といて君の光と冬の星 【季語:冬の星】

2024年01月20日 | 俳句:冬 天文

夜、ベランダに出ました
バスタオルを干していたのですが
それを取り込むのを忘れていました

夜空を眺めると
雲一つなく、晴れて星が良く見えました

夜空に凛として身じろぎもしない星
まるで僕に進む方向を指し示す標のようです

その冬の星の姿は
大切な人の姿と重なります
僕を高い処へ導いてくれるその姿と

しばらくは、冬の星と向き合っていた自分ですが
寒さを感じて、バスタオルを手に
家の中に逃げ込みました


とある朝に 【詩】

2024年01月18日 | 

「とある朝に」

僕が目を覚ますまで
あなたが口づけをくれて

その柔らかい息使い、微笑みが影になる
その顔の向こうには
手を伸ばしたくなる青空があって

実際に、僕は、そうした
戻す手であなたの背中を抱きしめた
頬が重なり柔らかだった、僕の顔は
青空に向けられて、決然とした彫像のようだった

目覚めは悲しい
そこから始まるのが悪夢
それが僕の一日の、始まりだった

涙は雨のように降り続いた
降り続くものが涙だった
かすむ風景の色彩は
追剝ぎにあった鼠色
ビルも木立も、信号も
人も車も、横断歩道の
工事現場の重機さえ
そこから滴り落ちるのも涙だった

その涙も乾くことを知る
と、あなたに乾いた涙は
夏の扉を開けるように
一杯の降り注ぐ陽ざしだった
濡れていた分、乾いた
涙に洗われた風景は、色鮮やかだった

目覚めが悪い夢ではない事
心の振れ方で頬を触る風も
優しい指先をしているということ
人も、むさぼるだけではなかった
穏やかな笑顔を、雑踏に返す人もいて

それはあなたの指先から
波紋のようにゆっくりと広がった、気づき
一人ではどうすることも、できないでいた
固い鎧、僕の弱さ、恨みつらみ、を
ひび割れさせて、少しずつ砕く、その勇気

心を許すことを覚えれば良かった
おずおずと心開けばそこに
触れてくれる人もいる
その分、傷づけられることがあるにせよ

そうして目覚めた
あなたの口づけ、柔らかい余韻が
瑞々しく残る青空は新鮮で
桜吹雪が、ただ幸せに舞う、ようでもあった

僕は、もったいないことをしていたのかしら
それは、言っても仕方のない独り言
あなたの背中、その上に置かれた僕の両手
あなたの重さ、感じながら目をつむる
温かい、確かにすっと
青空が僕の中に、取り込まれている

縋ることも、やがては虚しく終わることも
知っていて、なお


唇は冬の額に触れているあなたはそこから温かくなれ 【短歌】

2024年01月16日 | 短歌

コートを着ていても
隙間風が体を凍えさせようとする日

隣を歩く人も
体を寒さから庇うように腕を組んで
前かがみになっていました

心もそうですが
体も寒い時には
人の温もりが恋しくなりますね

その冷たい額に
軽く唇をつけて
そこから温かくなればいいのにと
そんなことを想像しながら
人混みの中を歩いていました


寂しい口笛 【詩】

2024年01月11日 | 

「寂しい口笛」

あなたはその透明な口笛の
寂しい音色を聞く
誰かの耳に届かせるものではなくて
僕の心を通り抜ける隙間風

僕の心はいつから乾いていたのだろうか
ささくれ立った、そうして冬のあかぎれて
枯葉のようにかさかさと、乾いた音でなっている

寒い冬の夜、ひと際冴えた星を一人
見上げて、夜空に吹く、か細い生の基音
何処まで行っても、知る人もいない、遠い場所だ
歩みを挫けさせるには十分の、手がかりのないところに
手を掛けようとして、今日もつくため息のような
口笛は嘆きか、強がりか
自分を宥めるような、心よ、落ち着け
とでも吹くような、弱く震えた音色

聞こえることのない、他人にはと
思っていた、その口笛の音色が
けれどあなたに、聞こえていることを知る
驚きは、その音符を聞いている
あなたも、寂しい、消え入るような、声の歌い手

重なり合うと、寂しさは、和らぎを知り
寂しみ続けて、良い事を知る
人の世は寂しい、語り尽くせぬほどに、けれどそれを
同じ音色で聞いている人よ、そこで
肩寄せ合うこともできて、言葉尽くす、説明もいらない
冬の夜空の遠い、一等星の瞬きも、ちっぽけで
儚い存在だとする、肯い、いつかはたどり着ける心地で
憧れとして見ている、あなたは
僕の寂しい口笛を聞く

歌は素直に、重なり合うことができる
聞こえてくる歌があり、頬を重ね合わせるように
素直に重なり合えば、流れて行く、歌がある


沁み込んだ冬の冷たさ骨凍え何をやっても温まらない【短歌】

2024年01月09日 | 短歌

冬の夜に一人で部屋にいたら
窓の方から冷気が染み渡るようで
身体が凍えるようでした
まるでその冷気自体が自分の骨になってしまったように
身体が温まりません

思えばここの所は
そんな風に身体の芯が凍えていて
何をやっても温かみが感じられません
身体だけではなくて心もなのですが

生き続けることで
霜のようなものが身体に根をはるのでしょうか
白い息でかじかむ手を温めるような日々です