風のささやき 俳句のblog

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詩や短歌も掲載しています

野良猫の後を追って 【詩】

2020年07月30日 | 

「野良猫の後を追って」

気取った野良猫が歩いてゆく
しっぽを左右に振り
軽いスキップを踏んで

楽しい場所に行くのだろう
仲間がきっと待つのだろう
ニャーニャーと迎えられて

その三毛模様を追いかけたいな
行く先々で新しい何かが
見えるような気がする

垣根をくぐり
縁側のある庭に野の花を眺め
壊れかけた電灯を心細く見上げ
塀の上から眺める人の群れは
ちょっとユーモラスな黒い波

毎日が同じに見える
僕の目線もきっと自由に
違うところに注がれるようになる

けれどしがらみに縛られて
大きな体をして
野良猫の自由な足並みには
ついていけないな

今も次の約束に縛られている
まだ来ないバスに気が急いて
イライラとしている
軽やかに歩く野良猫の姿を
羨ましげに見送るばかりだ

遠ざかる三毛模様の背中
僕も軽いステップで
追いかけて行きたいな


初めての海の広さに恐れなし抱っこ抱っこと泣き怯える子 【短歌】

2020年07月29日 | 短歌
先週子供たちは初めて海に連れて行ってもらいました

自分は残念ながら行けなかったのですが
その時の様子を聞い短歌にしてみました

一人は海を怖がり抱っこしろと騒いでいたとか
もう一人は親の手を振り払い
海の方へ向っていったということで
相変わらず性格の違う双子です

もっとも海を怖がっていた子は
庭でのプール遊びが大好き
もう一人はプール遊びを嫌がっていた方

同じ水遊びでも
プールと海とでは異なるようです

それぞれに反対の反応であれば納得もできたのですが
僕の予想も見事にはずれました

一体どんな思考が働いているのか
頭の中を覗いてみたいものです

遠花火気づく間も無く寝る子かな 【季語:花火】

2020年07月25日 | 俳句:夏 人事
家からそう遠くないところが花火の会場なので
毎年ベランダから小さな花火が見られます

子供たちにも
小さいながらの花火を見せたいと思っていたのですが

そんな親の気持ちなどは気に留めることもなく
花火の始まる頃には
布団の中で眠っている子供たちがいました

一日と子供たちと 【詩】

2020年07月23日 | 
「一日と子供たちと」

一日一日と君のお腹の中で
二人の子供が成長を続けている
君のお腹が日々大きくなって
張り裂けるのでは思うぐらいに

けれど子供たちは
健やかに育つことをやめない
どれだけ充実した生の時間が
そこには流れているのだろう

育ち行くことが喜びであるかのように
動き回って落ちつきのない
子供たちの手の跡が
お腹の上に刻まれて消える
幸せが一瞬かたどる手形

無事にこのまま育ってくれればいいと
不安を感じている僕らの
気持ちが伝わることはないのだろうけど

暖かな病室の窓の外では
秋の冷たい風に葉っぱが揺れている
金色になって黄金の小判が実っているようだ
来年はきっと子供たちと
そんな葉っぱを指差すことができれば嬉しいけれど

こうも一日は長く
充実しているものなのだと
君と話しているこんなわずかな時間にも
子供たちは健やかに育まれ
その恵みの深さには
あらため感謝するばかりだ

僕は少し手持ち無沙汰になって
真っ赤に染まった林檎の皮を剥いている
いたずらに時間を費やしている僕には
口にした一年の実りの味は
すっぱく思えていた

早起きや咲いたばかりの朝顔の笑顔に与る三文の徳

2020年07月22日 | 短歌
ここのところ
寝相の悪い子供たちに蹴られたりして
朝早く起きることも多くなりました

秋田で過ごした週末も
そんな風に目覚め
もう眠れそうになかったので
庭先にサンダルをつっかけて出てみました

すると今咲いたばかりのような
朝顔の花が5つほど

空を明るくする朝の陽射しに
輝くような笑顔を見せてくれました

早起きはやはり三文の徳
直前までは少し不機嫌だったのですが
自分を叩き起こした子供に
少し感謝をしていました

過ぎ去れば皆懐かしき夏の空 【季語:夏の空】

2020年07月18日 | 俳句:夏 天文
夏の空を見上げていると
どこか遠い郷愁に呼ばれます

子供の頃に見ていた
夏の空への憧れが
また蘇ってくるからでしょうか

子供の時分は
その空の向こうに
何か素敵な事が自分を待ち受けているのではと
疑わずに思っていられました

今では色あせたその憧れも
夏の空に向っていると
またカタカタと動き出して

けれどそこには戻れないことを
知っている心は
その動きを押さえ込もうとして

ただ微かな甘酸っぱい余韻だけが
僕の中に漂います

新しい気持ち 【詩】

2020年07月16日 | 

「新しい気持ち」

泉のように
新しい気持ちが胸に湧く
思えばそれは不思議なこと

こんな小さな胸に毎日
朝が来るように決まって
あふれるほどの思い
ときに苦しくなるけれど
きっとたくさんのものと
つながっているからに違いない

日々歩く道に感じる季節
街路樹の若葉、花壇のサルビア
汗をかく夏の太陽の眩しさ
それを隠す雨音
色づく木々の秋の入り口
マフラーをする温もり

あなたと待ち合わせて
つないだ手が温かい
あなたの笑顔も温かい
たくさんの思いが重なる
人と今と昔と

そうでなければ
思いは枯れてしまう
あまりにも貧弱で
細りきって自分勝手だ
何も生みださず
誰の心とも響き合わない

だから僕に触れるもの
つながるものの
すべてが幸いであればいい
大地に根をはる果樹のように
つながれたものから
楽しい気持ちを受け取って
思いは豊かになる
輝く笑顔の実をつけるから


何かしら暖かきもの流れ込む赤子を抱いて野道歩けば 【短歌】

2020年07月15日 | 短歌
秋田で週末を過ごした時のことでした

夕方近くなり
家の中で遊ぶのにも飽きた子供を抱いて
散歩に出かけました

あちらこちらと
行く方向を指図する子供の
言うがままに合わせて
野道を歩いていきました

途中夕焼けが綺麗に見える場所があり
立ち止まってその夕日を眺めながら
子供に話かけていました

子供も静かに黙って夕日を見ていたので
抱きしめていると
何か暖かいものが胸に流れ込んできて
有難いなという気持ちになっていました

水遊びする子の尻の光りかな 【季語:水遊び】

2020年07月11日 | 俳句:夏 人事
随分と陽射しが強かったので
子供たちは庭にプールを準備してもらい
水浴びをしていました

真っ裸になって水で遊ぶのは
子供の夏の特権
いつまでも遊んでいたので
随分と気持ち良かったのでしょう

まわりで見ている大人は
強い日差しにやられてしまうので
日陰に座ってその様子を眺めていたのですが

子供たちが立ち上がったりする際に
ツルツルの肌を流れて行く水は
まるで透明な光る衣服のよう

丸みを帯びた
お尻のあたりを流れて行く水は
殊にて光って見えました

懺悔の詩 【詩】

2020年07月09日 | 
「懺悔の詩」

生かされてあるこることが
悪ふざけとしか 思えない夕べ
力なき肩は夕日にまみれて
血塗られて

歌はいつでも秋の風に弱く
僕の唇に震えて止まらない
言葉はそこからは出てこないもう
秋の風にふさがれて

あじけなくつづる
汚れた手の上の営みには
涙だけが暖かく