風のささやき 俳句のblog

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詩や短歌も掲載しています

交差点初秋風に首さらす 【季語:初秋風】

2021年08月28日 | 俳句:冬 天文
仙台にいた頃
買い物を思い出して外に出ました

いつものようにTシャツに
短いズボンの出で立ちだったのですが
風がどこか肌寒く感じられて
ちょっとびっくりでした

周りを見ると僕のような軽装の人はおらず
しまったと思ったのですが
家に引き返すのもめんどうで
そのまま歩いて行きました

交差点で待っていると
一際秋を感じさせる風が吹き
まだ日焼けの跡の残る首を
僕はその風にさらし
秋の気配を感じていました

夏の弔い 【詩】

2021年08月26日 | 

「夏の弔い」

過ぎてゆく夏を惜しんで
ひぐらしたちが
遠い山から寂しい
大合唱を繰り返す
残り短い命を絞り出すような
広い田畑には重たげな
黄色い稲穂が
頭をひっそりと垂れて
夕焼け雲の合間には
赤とんぼの群が
透明な羽までも紅に
飛び回っている
体の中の
方位磁石が狂ったような
でたらめなその飛び方で
生い茂っていた
木立の上には
少しずつ
星がまたたこうとする時刻が
もう訪れようとしている。

惜しむことなく
明日には秋が
山並みの上の空を高くして
夏を弔うかもしれない
少し冷たい風を
喪に服させて。


怒りにて心の歯車回す時焼き切れ落ちん思考の先が 【短歌】

2021年08月25日 | 短歌
疲れている心の中をのぞくと
色々と小さな怒りがたまり
それが心を悪い方へと
回しているのが解ります

一度回りだした心は
怒りを強めながら
あらぬ方向へと転がりだして

やがてまともな思考も働くなり
怒りにまかせて
おかしな行動をとってしまったりします

自分では気づいてない怒りも多いのですが
怒りに振り回されては行けないなと
改めて思ったりします

朝採りの胡瓜の美味やぱくつく子 【季語:胡瓜】

2021年08月21日 | 俳句:夏 植物

秋田を訪れた際
朝にもいだ胡瓜をいただきました

無農薬栽培のせいか
とにかく甘くて美味しいものでした
普段は胡瓜はあまり食べない自分ですが
その胡瓜は酒のつまみにと
何本も食べたぐらいです

小さな子供たちも
美味しいものはわかようで
胡瓜を手に掴んでは
大きな口でかぶりつき
まるまる一本食べていました

日に焼けた小麦色の頬っぺたが
りすのように膨らんでいました


田舎の猫 【詩】

2021年08月19日 | 

「田舎の猫」

薄暗い玄関の土間に佇んでいる一匹の猫
まるで木彫りの置物のように
ずっと以前からそこにあったように馴染んで
背中には室内の薄暗い影を背負っている

何かを待って佇んでいるのか
あるいは家の中に入ろうとする
目に見えないものから
家を守ろうとしているのか

玄関の外には
晴れ渡った夏の午後が
どこまでも続いている
のうぜんかずらのオレンジの花が
その青さにからみつく
いつからかそのままそこにある風景

その仕事を邪魔するかのように
寄ってくる蝿にも余裕の素振で
しっぽを時折動かしながら
玄関に佇んでいる家の猫

都会から遊びに来ている
隣の家の子供たちは
どこかに遊びにでも行っているのだろうか
随分と今日は静かだ
(それとももう
 都会に帰ってしまったのだろうか)

その静けさを埋めるように
降り止まない蝉時雨
その旅立ちの後の空蝉を今朝
庭の葉陰に見つけた
それを隣の子供たちにも
見せてあげようと思っていたのだが
(それとももう
 都会に帰ってしまったのだろうか)

木彫りから石化してしまったように
玄関に佇んだままの玄関の猫
あくびをすることもなく
寝転ぶでもなく

田舎にはこうした守り神が
たくさん昔からいる


お砂場で遊ぶ子供ら分かち合う玩具にシャベル仲良き楽しさ 【短歌】

2021年08月18日 | 短歌
子供たちが砂場で遊び始めました
他の子供が持ってきた玩具に興味を持ち
貸してもらって遊んでいます

時として喧嘩をし
奪い合うこともあるのですが
どの子も親に教えられているからでしょうか
大概は友達と仲良く譲り合いながら遊びます

その楽しそうな様子を見ていると
少しのことも譲れなくなっている
自分の心の頑な様子が
寂しく思えてきたりします

祈ること止むことはなき原爆忌 【季語:原爆忌】

2021年08月14日 | 俳句:秋 人事
広島や長崎に
原爆が落とされてから数十年以上が過ぎ
毎年テレビの映像で
その様子を眺めるのですが
その度に胸に痛みを覚えます

静かに祈りを捧げる方々の胸中を思いやると
何の言葉も続かず
ただテレビの映像に合わせるように
祈りを捧げるばかりです

風化させてはいけない記憶
平和への思いを深く深く
胸に刻みつけなければと思います

夏の午後のまどろみ 【詩】

2021年08月12日 | 

「夏の午後のまどろみ」

レモン色をした 太陽に染まる 夏の午後は
天使も 飛ぶことを厭う
まどろみの支配する 時間

一時は 肉食獣であることをやめ
草食動物の 黒く優しい 目をして
美味しい 葉っぱの形に
思いを めぐらしている
柔らかな 幸いの 夢を見る

大樹の木陰 千手の風が
手を合わせている その念仏を
聞いている 葉っぱが
静けさに耐え切れず くしゃみをし
揺れる そこは 木洩れ日の住処

ソーダ水の 炭酸が
湧き上っては 少しずつ
跡形もなく 消えて行く
誰も口を つけなくなった
赤いストローの グラス
解け出した氷が 立てる音は
南極の氷が 解ける音の赤ん坊の音

そのテーブルの上 確かに
まだかすかに漂う 笑い声も
炭酸の泡のように いなくなってしまうことを

聞いていた 僕の耳には
物憂い 喪失感が押し寄せている
僕も 僕もと
すべてが 消えて行くことを
その消息に 伝えて行く

僕はまた 目が開けられない
消えていった 炭酸の
かすかな喉越しを 恋しく思う
汗が一筋 僕のどこからか
流れて 行くだけ


寝ない子が布団の中でクスクスとおとぎの国の鬼とお話し 【短歌】

2021年08月11日 | 短歌
お昼寝をしすぎたのか
夜遅くまで眠らない子供が
僕の布団の中にいました

手には蛍光色に光るボールを持ち
楽しそうに呟いています

何をしているのかと聞くと
そのボールの明かりで
布団の中の鬼を確認しているのだとか

その発想が面白くて
笑ってしまいました

おとぎの国の鬼とも通じ合える
子供は羨ましいなと思いました

硝煙の余韻酸っぱき花火かな 【季語:花火】

2021年08月07日 | 俳句:夏 人事
親戚の子供たちが集まって
花火をして遊びました

我が家の子供たちは花火が怖い様子で
火をつけてもたせてようとしても
なかなか手に持ちません

その間にもどんどんと
花火に火が点されて
あっという間に最後の線香花火となりました

勢いのままに
花火に火を点けたせいで
あたりは煙だらけ

直ぐに終わってしまった
線香花火のあっけなさとも相俟って

鼻の奥が
どこか寂しく
酸っぱい感じがしていました