風のささやき 俳句のblog

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水馬が滑る用水路の上の雲 【季語:天馬】

2019年06月29日 | 俳句:夏 動物
青い稲がすっきりと背を伸ばす
水田の間を歩いていました

遠くに見える山の方まで
遮るものもなく水田が続き

普段はPCを覗いて疲れることの多い
目を喜ばせてくれます

風が吹くたびに稲が頭を揺らし
風の通り道も良くわかります

水田の側には用水路
水面には空と同じ夏雲が浮かび
その上を気持ちよさそうに
水馬(あめんぼう)が滑っていました

田沢湖にて 【詩】

2019年06月27日 | 
「田沢湖にて」

あなたは深い湖の底から湧き上がる
小さな気泡から生まれた

岩と岩の間から漏れ出でた気泡が重なり
やがてそれが地上へと向う
一つの言葉となって
気がつくとあなたはそこに目覚めていた

藍色の水を着物にまとって
漆黒の暗闇で黒髪を染めて

開かれたあなたの瞳は
仄暗い水の底から
遠い湖面に注がれていた

金色の魚のように
ゆるやかに流れに逆らいながら
昇って行く手足に
いつしか水が逆立たなくなったとき
あなたは湖の上に降り立っていた

祝福するように青い月影
銀色に輝く水面は揺り篭のような静けさに
風はいよいよ意味深く
森はいよいよ静けさを増していた

あなたの瞳に映し出されるものは
すべて意味深い答えを持っていた
それを伝えたくて
すべてが身もだえをしていた

あなたの胸の中の一つの言葉が
確かにあなたの胸を熱くしたままだった
生あることの甘露

そうしてもう二度と
深い湖の底に帰りたいと
思うこともなかった

あなたはそれから
静かなたたずまいのまま
湖畔に身じろぎもせずにいる
巡り変わる日々の色合いには
未だ飽きることもなく

あなたの瞳に映るものの答えを
拾い集めたままで

清濁を湛えて保ち豊かさが広がり行けば年追うごとに 【短歌】

2019年06月26日 | 短歌
人はきっと清濁を合わせて持つことで
人としての豊かさを得られるのでは思います

清いものあるいは汚いものに
振り回されることもなく
また自分の中にあるそれに
目をそむけることもなく
溢れるがままのものを湛え保っていくことで
人としての幅が広がって行くのかなと思います

もちろん言うほどにそれは
簡単なことではないのですが
年を追うごとに自分の幅を広げて
周りにも還元できたらなと思う
今日この頃です

梅雨曇り恨みがましき目の子供 【季語:梅雨曇り】

2019年06月22日 | 俳句:夏 天文
その日は朝から曇っていて
今にも雨が降り出しそうでした

天気予報を見ると
やがては雨になる予報です

外に出かけるのが好きな子供たちですが
不幸にも双子用の乳母車は
傘に収まりきらず
雨の時は散歩を控えています

散歩中にも雨が降りそうで
出かけるのを躊躇していると
それで不機嫌になる子供たち

ほら外は雨が降りそうだよと
窓の外を見せると
それでも納得がいかないのか
恨みがましそうに
空を見上げていました

夏の夜の星屑 【詩】

2019年06月20日 | 
「夏の夜の星屑」

昼間の暑さが和らいだ星空に
ほっとした星屑がこぼれ落ちた
気を抜いてしまえば星屑さえも
夜空にとどまれるものではないと
   
   ○

星屑はどんな術を持って
夜空に居座っているのだろう
僕は小さな二本の手に力を入れて
顔を赤く頑張る
星屑を思ってみたりする

  ○

真っ暗な夜空に
燃え立つように消えた星屑
滑り落ちて行ったあの暗がりは
とても寂しい場所ではなかったか

自分のいる場所を
誰かに知って欲しくて
星屑はあんなに明るく
燃え上がったのではないか

  ○

旅を終える星屑が
夜空から降るときに
人はその星屑に願いをかける
星屑がどれだけ慌てふためているのか
気づくすべも無く

   ○

星屑と星屑との間には
言葉が通じあうのだろうか
そうでなければ
いつまでも夜空で一人
星屑は寂しく流離うままだ

   ○

星屑よ
この星めがけて落ちてきたのは
僕らの場所が言葉に満ち溢れているからか

けれど僕らの言葉だって
どれぐらい通じ合えているかは
心もとない限りだよ

   ○

真夜中に一人 耳を澄ませる夜空
僕の溜息の他には
何も聞こえてはこないよ

もしかしたら夜空に一人でいる
星屑 お前と
言葉が取り交わせたら僕も
寂しくはなくなるのだろうけど

夕涼み車輪軋ませ乳母車見る見る重くなる子を乗せて 【短歌】

2019年06月19日 | 短歌
日中は随分と暑かったので
日が落ちてから子供たちを乳母車に乗せて
夕涼みに出かけました

ここのところ抱き上げるたびに
重くなっているように感じる子供たち
双子の割には標準の子供よりも
少し発育はいいようで

後数ヶ月もすると
重くて抱えるのにも苦労するのではと
心配してしまいます

いつも二人が乗っている乳母車もその被害者
今日も押している間中
ずっと車輪を軋ませていました

蝸牛我が物顔や雨歩道 【季語:蝸牛】

2019年06月15日 | 俳句:夏 動物
その日も朝から大粒の雨が降っていました
ズボンのすそが濡れて嫌だなと思いつつ
水溜りを避けながら歩いていました

途中
野原のところにさしかかると
たくさんの小さなカタツムリが
雨に誘われたのでしょう
歩道に出てきていました

踏んではいけないと思い
カタツムリも避けるように歩いたのですが
その数の多いこと

ところどころでは
仕方なく水溜りを歩き
靴もしっとりと濡れてしまいました

雨降る街で 【詩】

2019年06月13日 | 
「雨降る街で」

いつの間にか 肌に冷たい雨が降っている
散歩好きの子犬も 早く家に帰りたがる始末
街路樹は言葉を忘れた 老人の群れのように青白い

灰色の空の下で しっとりと濡れているビルの谷間に
青い傘を差した あなたは一人佇み
少し青ざめた唇をして 雨の染みる茶色の革靴

いつからあなたは そこに立っているのだろう
時折辺りに 投げる視線は
あなたの待ち人に 送ろうとするものか
それとも街中に 落としてきた忘れ物
捜し出そうと しているのか

雨雲は黒い犬の 毛並みのように
あなたの背中に 重く覆い被さってくる
あなたの肩を 一層小さくする冷たい雨
あなたの長い髪も 程なく濡れてしまいそうだ

いつしか この冷たい風景に
あなたが 塗りこめられてしまいそうで
他人事なのに 不安に思っている僕は
あなたから 目が離せないでいる

あなたは 何時になったら
そこから 立ち去ることができるのだろう

あなたの 待ちわびる人は
ほんとうに 現れるのだろうか
あなたの 忘れたものは
ほんとうに 捜せるのだろうか

いつしか僕まで 足を釘付けにされている
あなたの姿を 見失わないようにと
必死に 目を細めている

夕暮れの風が押さんと乳母車子供らいずこに運ばれんとす 【短歌】

2019年06月12日 | 短歌
夕暮れの風が僕の手元にやってきて
子供たちの乗っている乳母車を
もっと押してあげるよとでも言うように
強く吹きつけました

僕はしっかりと乳母車の持ち手を押え
風の自由にはさせなかったのですが

そんな僕の思いとはうらはらに
子供たちは自分の意志を持って
どこかに歩いて行こうとするのでしょう

感傷を覚えた僕は
この子達は何処に運ばれていくのだろうかと
風に訪ねていました

初めての夏の陽強し目開けぬ子 【季語:夏】

2019年06月08日 | 俳句:夏 時候
晴れ上がった日
朝の早いうちに
子供を連れて散歩に出かけました

太陽の日が随分と眩しく感じられたので
乳母車に日よけをつけて
準備万端で出かけました

乳母車を押していると
心地よかったのでしょうか
子供たちは直ぐに眠ってしまいました

それからしばらくは静かだったのですが
目を覚ますと退屈したのでしょうか
身をよじって泣き騒いでいます

しかたが無いので
抱き上げると
初めて迎える夏の陽射しが
強すぎたのでしょう
顔に日が当たっている間は
ずっと目を閉じていました