風のささやき 俳句のblog

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詩や短歌も掲載しています

元気でと稲撫ぜる風夏の果 【季語:夏の果】

2017年08月26日 | 俳句:夏 時候
稲が実り始めた田の間の
あぜ道を歩いていました

時折僕が近づく足音に驚いて
飛び上がるバッタ以外には
物音を立てる者もいない
静かな午後の一時でした

随分と実ったものだなと
僕が稲の穂先に触っていると
稲を撫で付けるように
一陣の風が吹いてきました
まるで稲を愛おしむように

もう辺りには秋の気配
もうすぐ去らなければならない夏が
名残惜しげに告げる別れの挨拶に
僕も触れてみようと目を閉じました

空蝉やベル押す間もなく旅の空 【季語:空蝉】

2017年08月19日 | 俳句:夏 動物
朝歩いていたら
平屋の玄関の呼び鈴のすぐ下に
蝉の抜け殻があることに気づきました

きっと前の日の夕方に
地中から這い上がって来たのでしょう
近くには大きな木もあるのに
何故こんなところにと思い

旅立ちを知らせようとしたのか
それとも脱皮の最中の
見張り番を頼もうとしたのかと
勝手な想像を膨らませていました

蝉の抜け殻を見たのは
随分と久しぶりのこと
朝日を浴びて薄くすけている
その形状をしばらく眺めていました

暗き夜に航路を曳くや蚊の羽音 【季語:蚊】

2017年08月12日 | 俳句:夏 動物
ここ数日のことですが
急に蚊の羽音に注意が向くようになりました

春先の蚊の羽音は弱々しく
刺されることもないだろうなと
高をくくっていたのですが

ここのところはその羽音も力強く
隙を見せたらすぐに刺されてしまいそうです

蚊の羽音ばかりに注意がいくせいでしょうか
蚊が飛び回っているとその羽音の後ろに
すべての物音が集まり
引きずられて行くような気がして

まるで暗闇の中に一筋の航路ができるようです

少年の憧れいずこ夏木立 【季語:夏木立】

2017年08月05日 | 俳句:夏 植物
陽射しの強い日でした
大きな木立が黒い影を作っていたので
その木陰に涼もうと逃げ込みました

汗を拭いながら
ホッと一息をついて眺めると
頭上には青いだけの空が広がっています

少年の頃の夏の日
こんな風に木陰から
青い空を眺めては
自分でも止めることのできない
胸の高鳴りを感じていました

その胸の高鳴りも
今では感じることもなく
少年の日の憧れだけが
青い空の向こうで燻っているようです