風のささやき 俳句のblog

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詩や短歌も掲載しています

人肌の風のうねりや台風裡 【季語:颱風裡】

2019年08月31日 | 俳句:秋 天文
台風が日本を縦断するとのこと
風は人肌の生温かさでで僕に吹き付けて
耳元をうねっていきます

ざわざわとなる木立
背の低い草花たち
そうしてかろうじて鳴いている虫の声も
どこか緊迫感が漂っているような感じです

やがて傘も役に立たないほど
強い風と雨なのだろうなと
ちょっと憂鬱な気分にさせられました

Haiku 蚊

2019年08月30日 | Haiku
朝夕は少し涼しくなってきたのですが
今だ寝ていると蚊に刺されるときがあります
先日は三日続けて蚊に刺されて目を覚ましました
きっと家に潜んでいる同じ蚊が犯人だと思うのですが


───☆

耳元に蚊の羽音がして
それを手で追うもその羽音は少し力をなくして


☆-- Haiku --------------------------------------------------☆

the end of summer
the end of chasing away mosquito
accelerating as time goes by


☆-- 俳   句 --------------------------------------------------☆

蚊を追うもこれで終わりか夏の果て

ka-wo oumo korede owarika natsuno-hate


家のテーブルの上には
夏の名残の虫刺されの薬が
置いたままになっています

白い朝 【詩】

2019年08月29日 | 
「白い朝」

白く燃え立つ夏の朝 僕の心は
やがて消えていく 白い喪失の悲しみ
炎のようにうずまき 祈りに差し出す両手から
窓にこぼれる 朝日に焼かようと

さっきまで 僕を泣かせていた
夢は消え去った 涙の跡だけを残し
風にちぎられた 白い花のように 散れ散れに

放心した 僕の脳裏の地平には
わき上がってくる 雲のように
白い墓標に眠る日々が
涼しい一群の風に
青春の涙よりも淡い色で 吹かれている
ー夏の葉の照り返し 遠くさわぐ子供の手足
 とんぼの乗る静かな時間 光りを集める小川のせせらぎ
 涼しく 肌を打つ通り雨の清らかさ
 星をつかもうと 差し出した手の穏やかさ
 もう声も思い出せない あなたを見ていたときの胸の高鳴り
 くったくもなく 語り合って楽しかった午後
 そうして一人夕日に 流したともどもない涙
僕に眠り 何も言わずに僕と滅んでいく
誰にも渡せない風景 けなげな生のかたみ

何のために新しい朝は 僕を眠りから呼び起こし
僕に悲しみを増やしていくのか
失われていくだけの 僕は羽根を生やし
飛び立って行きたい 開け放たれた空へ
すべてのものが 心から許され
受容される 大きな腕の中へ
蘇る者達と 静かに 瞳をかわしていたい

水溜り海と呼ぶ子の服は濡れ青き海原見せてやりたし 【短歌】

2019年08月28日 | 短歌
前の晩に激しい雨が降った翌日
子供たちをつれて公園に出かけました

よっぽどの雨が降ったのでしょう
公園には水溜りの範疇を超えた
大きな水溜りが出来ていました

もちろん水遊びが大好きな子供たちですので
その水溜りの中に猪突猛進
突っ込んでいきました

水はあまり綺麗ではないのですが
その楽しげな様子に遊ぶがままにさせていました

時々海と叫んでいたので
まだ見せたことのない
ほんとうの青い海を見せたら
その大きさに驚いて
きっと喜ぶだろうなと思っていました

機会を見て連れて行ってやりたいものです

あきらめる術見当たらず夏の果 【季語:夏の果】

2019年08月24日 | 俳句:夏 時候
暦の上では秋を迎えて
少し秋らしい空の色が広がっていました

また一つの季節が足早に去ろうとするのに
僕の心には様々な思いが
諦めつかぬままに燻っています

その火種を消し去ってしまう術を
探り当てることもできず
呟きを続ける胸を抱えて
ただ立ち尽くすばかりです

夢のひとときに 【詩】

2019年08月22日 | 

「夢のひとときに」

暑さに寝苦しい真夏の夜だった
止まらない汗に窓を開け放った
明日に備えて誰もが眠ったのだろうか
外は風ばかりが鳴るのだった

古めかしい蚊取り線香の匂いがした
みんな窓を開けて、でも蚊はお断りで
その匂いはどこか懐かしく
子供の頃の家族旅行
波の音の旅館の
寝苦しい闇を思い出した
   
電車ばかりが思い出したように走り
うとうとしかけた目を開くと
その後はまた何事もなかったかのように
静かに風が語りだすのだった

何回そんなことを繰り返したのか
やがて電車の本数もまばらに
それでも聞き耳を立てる僕がいて

遠くからレールを軋ませて走る
電車の音が近づく
深夜の闇をライトが払いのけて

いつの間にか僕は車中の人であった
窓の外にぽっかりと浮かぶ
丸い月を眺めた

お客さんはまばらで
みんな今日の仕事に疲れきって黙っていた
僕もつり革につかまってそれに習った

電車はゆっくりと走る
古い木造の家々、その住宅街を走り
通り過ぎる駅舎は古い教室のように
裸電球の街灯が道を照らし
星空は街よりも明るい

車内に迷い込んだ白い蛾を
追いやる手、手
疲れてしわくちゃな僕の手
古ぼけたジャケットを着て
背中を少し丸めながら
誰も気がつかないような溜息をついた

これは誰
見慣れない指と伸びた爪
網棚の捨てられた新聞紙に
手を伸ばしかけて止めた
揺れる電車、車輪は低い声で文句を呟く

毎日 頑張っていた
そこにいるのは僕の命を
つないでくれた人
夜遅くまで働いて
眠った頃に家の玄関を開ける人

僕の夢とその人の懐かしい
記憶とが胸の内で結ばれる
人は誰かと混ざりあうことで
きっと豊かになる
ときどきは時間の熟成を必要とするけれど

汗ばんだ布団で目を覚ますと
まだ夜中の3時前
寝苦しい暑さではない
懐かしい気分に胸は温かだった


日に焼けた顔は精悍小さくも男の子だと思う休日 【短歌】

2019年08月21日 | 短歌
外で遊びまわっているせいか
子供たちの顔も
随分と日に焼けました

時々女の子に
間違われたりすることもある二人ですが
日に焼けるとやんちゃな男の子という感じです

その日も公園で遊ばせていたのですが
走り回る姿は活発な感じで

特に髪をさっぱりと短くしたせいもあるのですが
小さくても男の子は男の子なんだなと
変なことに関心していた
とある休日の午後でした

生き急ぐ蝉のいばりや青き空 【季語:蝉】

2019年08月17日 | 俳句:夏 動物
秋の気配が漂う青い空の下でした
残り少ない生の日を感じてか
林では蝉が喧しく鳴いていました

とある木の下で
蝉の声があまりにも近くに聞こえたので
蝉の姿を探したのですが見つからず

やがて蝉が鳴き止んだかと思うと
頭の上には
一瞬のにわか雨のような蝉のいばり

一本の木でゆっくりと過ごすには
あまりにも時間が無いと
生き急いでいるようでした

雨の電波塔 【詩】

2019年08月15日 | 
「雨の電波塔」

鉄骨の間を雨で滲ませる電波塔
白くかすれた姿は寄木細工のようにか細く
今にも折れてしまいそうにも見え
そんな体で街中に電波を送り続けている
しっとりと濡れた電波塔

誰に一体届けようとする電波なのだろう
そうして一体誰に届いている電波なのだろう

ビルの巨大なスクリーンには
明るい話題を機関銃のように話し続けるコメンテーターの顔
どんな希望的な観測がその顔を明るくしているのだろう

耳障りな言葉の洪水が耳に流れ込んでくる
その誇らしげに甲高い声は鳴り止まない頭痛の種

通りを歩く人たちはその言葉への術を知っている
自分の言葉の大きさでその言葉を打ち消すこと
会話にはならない独り言
まるで小さな電波塔のように

その術を知らない人は一人家に閉じこもり
頭に浸み込もうとする乱雑な言葉から身を守るばかりで

僕も送り出される電波にはもう辟易として
無関心を装いながらも不機嫌な顔をしている
声にならない僕の胸の内の言葉も
いつかその電波と混線を始め
不明瞭な言葉が僕の口から漏れてくる

いつからかそこに立ち続けることしかできなくなって
終わる当てのない電波を送り続ける電波塔
雨なのか涙なのか濡れている体はやがて錆びて
朦朧としたまま電波を送り続ける電波塔

夏の夜に一人目覚めて日記書く記憶を手繰り数日分の 【短歌】

2019年08月14日 | 短歌
子供たちを寝かしつけている間に
一緒に自分も眠ってしまったようです

早く眠ってしまったせいか
夜中に目が覚めて
それから眠れなくなってしまいました

テレビを見ることもできないので
仕方なくパソコンの前に向かい
しばらく溜め込んでいた日記をつけていました

何日か前の記憶を呼び起こそうとするのですが
特に平日は日々の記憶が混ぜこぜになっていて
それを解きほぐすのに時間がかかります

忙しくあっという間に過ぎて行く毎日も
こうして日記をつけていると
確かに着実に過ぎて行くのが実感できます

程なく疲れてきたので
静かに寝息を立てる子供の側に戻って
また布団の中に入りました