風のささやき 俳句のblog

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赤い風船 【詩】

2019年12月05日 | 
「赤い風船」

いつからお前はそんな所で木枯らしに遊ばれていたの
街にはもうクリスマスのイルミネーションが飾られて
人の体は温かい衣服でつつまれているのに
細い枝に捕らわれた糸が
いつまでも解けずに途方に暮れている赤い風船

空は直ぐそこなのに飛び立つこともできなくて
意地悪な枯葉の乾いた言葉に
胸張り裂けて破裂してしまいそうだ

道行く人々はそれぞれの会話に忙しく
その様子には気づくこともない
その声よりもさらに声高に
叫んでいるのは呼び込みの声
ビルにはめ込まれた大きなディスプレーは
空に向って独り言を垂れ流している

一人かすかにこぼす赤い風船の助けは
重ねられた声の壁の奥に捕らわれて
誰にも気づかれることがない
君のその声に気づいた僕だけど
ごめんね僕には手が届かないや
ごめんね君を見上げているだけで

僕は君とよく似ているよ
都会の片隅の風景に誰にも気づかれずに
かろうじて引っかかり
そこから飛び立ちたいと願っているんだ

けれどその中身には何もなくて
ほんとうは助けを求めて震えている
君は一体誰に手を離されたのだろう
そうして僕は一体誰に手放されたのだろう

ほんとうは自分から空に昇ろうとして
途中で引っかかってしまったんだ
自分の力を知る術も持たずに

赤い風船の下を楽しそうに人々が歩いて行く
飛び立つこともできず助けられることもない
風船はいつまでも独りだ

着膨れて居場所争う乳母車指し手争い止める術なし 【短歌】

2019年12月04日 | 短歌
外に直ぐに出たがる子供たち
近頃は玄関にある靴を持ってきて
外に行こうとアピールをしてきます

仕方がないので準備をするのですが
この時分風も冷たく
色々と着せているうちに
随分と着膨れてしまいます

その状態で乳母車に乗せるのですが
着膨れたせいで狭く感じるのでしょうか
お互いに手で相手を押しのけようとします

まるで小さな相撲取りが
指し手争いをしているよう

やめろというのですが
その手が止まることはなく
やりたいままにさせていました