風のささやき 俳句のblog

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いつかいい風が吹いて 【詩】

2023年03月30日 | 
「いつかいい風が吹いて」

いつかいい風が吹いて
君たちがいい顔で笑って
それが僕の幸いとなった日

いつかいい陽ざしが降り注ぎ
君たちが褐色の肌をして
それを僕が頼もしく思った日

いつか抱き上げた体の重さが
確かな感触で腕の中に残り
それが僕を生かす力となった日

いい具合にブランコは跳ね上がり
面白くて君たちは笑い続けて
僕が押す小さな背中に
あらん限りの透明な手形を押して

いいことがありますように
いいことがありますようにと
それは儚い親の願い
君たちに希望を託して

いい風はいつでも君たちに吹くさ
晴れた空の心持ちを忘れずに
雨降りの日にも淡々として

いつしかひとりぼっちの夜には
いい友達が声をかけてくれるさ
君たちが人の信を失わないならば

いつの間にか意固地な思いも
癒されていい気分で
心から笑える時がくるさ

いつかいい風が吹いて
君たちがいい顔で笑って
いつからか君たちは僕の宝物になって
君たちにいつでも
いい風が吹きますように

いつでも君たちがそれを
喜びとして感じられる
素直な柔らかい心でいられますように

読書するあなたの窓を春の風 叩き、感謝の温もり伝えて 【短歌】

2023年03月28日 | 短歌

色々とお世話になった人を思い出します

伝えきれない感謝の思いが胸に湧くのですが
今ではそれを伝える連絡先もなくして
どうしているだろうかと
昔の面影を思い出したりしています

せめてこの時期
暖かな春風がその人の窓辺に吹いて
その人を温めてくれればと思います

 # 2020 春に


花吹雪纏いあなたと巡る夢 【季語:花吹雪】

2023年03月25日 | 俳句:春 植物

夢の中で桜の花が舞っていました

華やかなその桜吹雪の中に
一人で佇んで
景色に見入っていました

どれぐらいしてからでしょうか
その花吹雪の中から
人影が現れました

昔はよく顔を見合わせていた
懐かしい人たち

その人たちと会って
久しぶりと会話を交わす夢でした

それだけの夢なのに
目を覚ますとどこか胸のあたりも温かく
もう一度目をとじて
その夢に浸ろうとしました

 # 2020 春に


この空に 【詩】

2023年03月23日 | 
「この空に」

この春の空はいつかあなたと一緒に
見た空だろうそれに似ている懐かしい
花が開いた香り良く芝生の緑が気持ち良い
陽ざしが眩しいくすぐったい目が笑う

桜舞う頃きっと生まれる前の昔の昔
一緒に腰かけ肩寄せて温かく
言葉なく穏やかに見上げた空に似て
菜の花の黄色が似合う柔らかい青の空

どこの国のどこの丘だろうか
あるいは川べりあるいは花畑に寝ころんで
それでも春のある国であったことに違いない
桜がたがわずに舞っている合間の陽ざし見ていたから

くるくると空舞え落ちて来い花びらくるくると回れ
塞げ僕の唇奪えあなたの唇を
そうして巡りくる春の喜びを伝えよ
あなたと一緒に迎えまた過ごして行く嬉しさを

その僕の思いあなたの思い
その時の穏やかな思いが今につながっているに
違いない疑う余地なし口にするまでもなくて
また巡り来た日曜日の長閑な春を

あなたと一緒に肩寄せながらあることを
あの時とは一緒ではないかも知れない背格好
僕が重たかったかあなたが重たかったかもう少し
凭れあうお互いその変わらない喜び

ねえそう思ってもいいよね信じてもいいよね
僕らは時を超えて一緒に過ごしてきたこと
だからこんなにもこの場所の空が初めてなのに
こんなにも懐かしく思えいつまでも見上げていたいこと

今日の空を今日の穏やかさを新しい胸の一頁に
そうして時が来れば手をつないで家に帰る僕らがいて
今日の夕食の買い物をしてそれを作る僕の順番だとして
あなたの喜ぶものを食べて欲しい僕の聞きたい満足をしてごちそうさま

また次に僕らが出会う時の思い出の一つにして
懐かしく見上げる空があって言葉がいらなくて
桜の花が舞って嬉しくてしょうがなくて
また繰り返しまたあなたから教えてもらうことばかりで

生きていることはそれを思い続けることで
きっと終わりがないよねまた二人で春を巡るよね
僕の出で立ち変わっているかなあなたは僕を見つけられるかな
あなたの顔も少し変わっているよねでも僕はきっとわかるよ

ねえ独りよがりではないよね言葉には出さない
それを分かってくれるあなたの肩にもう少し凭れて
それを受け止めてあなたが笑った芯から僕は嬉しくて
また巡るこの先のずっと先のその先の春の空の下でも
あなたと肩を寄せることを楽しみにしているんだ


来年は、きっと窮屈、冬服だ 伸びる背、残すか、迷う、早春 【短歌】

2023年03月21日 | 短歌

三男の服は貰い物のお下がりが多く
箪笥に溢れて抽斗が閉まらないほどです

冬物も沢山あるのですが
中には来年は着られないだろうなと
思う服もあり

一思いに処分してしまおうか
迷ってしまいます

使い古しなので
ヨレヨレとしたものも多いのですが
勿体ない根性が先にでてしまい
迷ってしまいます

三男とどうするか相談して
決めています

 # 2020 春に


片付かぬ春炬燵まだ潜る君 【季語:春炬燵】

2023年03月18日 | 俳句:春 人事

春分の日も間近
だいぶ暖かくなってきたのですが
炬燵好きの家族たち

炬燵にもぐりこんで
ゴロゴロねたりしているので
中々、片付けようと言い出せません

確かに、温かい炬燵で
まったりとテレビを見たりしている時間は
至福の時間なので
否定するものではないのですが

炬燵の中でゴロゴロとする
家族を見ながら
熱くていらないと言われるまでは
片付けを我慢しようかなと思います

 # 2020 春に


菜の花の春 【詩】

2023年03月16日 | 
「菜の花の春」

菜の花が一斉に手を振る
黄色の花畑を歩こう
蝶のように夢見心地で
バッタのように足に力をいれ
流れをいっそう速くする
川の勢いを心に

春の陽射しに淡く燃える
菜の花は黄色の炎
近づくと温かく体もほてり
僕たちもいつの間にか春の一部

大地にふれる風は
冬の名残を振り払う大きな手にも似て
だから眠ぼけていた 蕾も目を覚まし
遅れまいと 一斉に顔を開くんだ

坂の上、空の青さに、春の雲 菜の花の黄を、見に、息切らす 【短歌】

2023年03月14日 | 短歌

急な坂の上の方に
青い空が広がっていました
下から見ると、坂がそのまま空に
繋がっていくようにも見えます
その上には柔らかそうな雲も浮かんでいます

その坂の上を以前、歩いたこともありました
大分前のことですが

家の間に畑があって
菜の花も咲いていた記憶があります

久しぶりの坂の上の風景を見たくて
息を切らしながら
その坂を上りました

 # 2020 春に


ものの芽や苔の緑も今一段 【季語:ものの芽】

2023年03月11日 | 俳句:春 植物

茶色に変色して
枯れてしまったのかなと思っていた苔から
急に艶やかな緑が伸びてきました

何種類かの苔を
同じ鉢植えで育てているのですが
生育の差はあれ
どれも新しい緑が顔を出して
賑やかに見えます

普段は目立たない苔の世界でも
季節の移ろいが見られるとは
面白いものだなと思います

ここの所は
毎日のようにじっと苔の鉢をのぞき込んいるので
家族から変な目で見られます

 # 2020 春に


溺死 【詩】

2023年03月09日 | 
「溺死」

腐りかけた魚の目のような
白く濁った灯りで夜を走りすぎる列車
レールは悲鳴を上げる
踏み切りが早鐘の警笛を鳴らす

魚の吐息に満ちた生臭い夜
ぬめる海藻のような風が吹く
鰯のように車の灯りが群がり
照らされた女の横顔には
赤いヒトデのような痣が浮かんだ

夜の闇に息を殺す
ここにいることを知られたら
不意に誰かが襲ってくる恐怖で
翡翠色に点滅する僕だ
夜目のきく大きな口の深海魚
蟹のような目で三百六十度を警戒する

謂れの無い命令を下す標識
ここは「止まれ」
この先は「行き止まり」
ここは「一方通行」右に曲がれと
この手足の所有者は僕ではなかったのか

ビルの壁面の鮮やかな映像が欺く
皆が喜んでいるのだと言う
僕の違和感が悪い夢なのだと
脳を洗おうとする

けれどここでは呼吸ができない
海の奥底にいるようだ
肺は藻のたぐいで苦しくなる

ようやく波間に顔を出して
大きく息を吸ったかと思えば
また口の中に押し寄せる塩っ辛い波で
喉は焼かれ声はしゃがれて

瞳を横切る青空は涙にゆがむ
潮風に流されてトンビは
羽ばたくことを放棄した

地上にいながらに僕は
もっとも苦しく溺れ死んでしまう
自分が死んでいることさえ
気がつかないままに
水面漂う海藻の類に混ざる