風のささやき 俳句のblog

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オリジナルの俳句を中心にご紹介しています
詩や短歌も掲載しています

日本海 【詩】

2021年11月25日 | 

「日本海」

受け取ることを
拒否しているわけではないんだよ
その月の光りを

僕に銀波を
届けようとする
日本海の波は激しく
何故にそんなにも焦れているのか

砕け行く波打ち際の音は
恨みがましい失意の
咆哮にも似て
それを何度でも繰り返す

ごめんよ僕が
月の雫を
受け止めることができなくて

ごめんよ僕が
やるせない思いの
その訳を知らず

そうして今は
その叫びから逃れようと
そっと窓を
閉めてしまおうと
していることを


我先にケーキの蝋燭消している年取ることがまだ嬉しき子 【短歌】

2021年11月24日 | 短歌
子供たちが誕生日を迎え
丸いケーキを買ってきて
お祝いをしたのですが

蝋燭をつけてあげると
我先にと火を消そうとします

二人いることだし
一回ではつまらないだろうと思い
もう一度つけてあげたのですが
これまた懸命な顔で火を消していました

お兄ちゃんだねが
褒め言葉の二人
年をとることがまだまだ嬉しい年頃を
うらやましく思ってみています

来年の今頃には
もっと色々なことが
出来るようになっているのでしょう

その反面
赤ちゃんらしいあどけなさが
姿を消すのかなと思うと
ちょっと寂しい感じもします

ケーキを食べて満足そうに眠った二人
その寝顔は健やかでした

すり寄るは小便臭き子古蒲団 【季語:蒲団】

2021年11月21日 | 俳句:冬 人事
朝晩が寒くなると
手放せなくなる厚い布団

朝は布団から出るのが億劫で
ついつい起きる時間も遅くなり
ぎりぎりまで布団の中にいます

それは子供たちも同様のようで
いつまで布団の中でグズグズと目覚めず
布団を剥がれると
僕の布団の中に入ってきます

僕は僕で布団から出たくないので
その子供を抱えて
布団の中で丸くなります

最後は怒られて起きるのですが
それまでのちょっとの間

小便臭いおしめをの子供を抱え
ぬくぬくとしている時間が
とても幸せに感じられる冬の朝です

着ぶくれた子供の頬も餅の様 【季語:着ぶくれ】

2021年11月20日 | 俳句:冬 人事
寒くなって来ると
子供たちについつい
厚着をさせてしまいます

子供は風の子なので
大丈夫だろうと思いつつも
風邪など引かれたらと思うと
一枚余分に服を着せてしまいます

それで着膨れる子供たち
動き回るにもちょっと窮屈そうです

その着膨れた体と釣り合いを取るように
また頬に肉がついてきた上の子供

それが艶々として美味しそう
ついつい食べさせてと
口を近づけてしまいます

十三夜 【詩】

2021年11月18日 | 

「十三夜」

いつの間にか
空の高いところから見ている
十三夜は
丸みを帯びた暗がりの猫の目

僕を見つめて離さない
真っ直ぐでやさしい瞳

月の雫はその目から
思わず零れ落ちた
欠伸のときの
ミルク色の涙

その涙は
日本海の海原に
一瞬にして
止め処もなく広がり

しまったと思いながらも
猫の目は
そんな素振すらみせず

僕を眺めている
空の奥の方から
すましたままで


紫蘇の葉が冬に伸び行く陽だまりは廃墟のビルの花壇なりけり 【短歌】

2021年11月17日 | 短歌
取り壊される予定で
廃墟となったビルの花壇に
紫蘇が背を伸ばしていました

日当りが良いからでしょうか
葉を伸ばしてすこぶる元気そうです

その花壇はパスタ屋さんのあった
店先の花壇です

もしかするとお店で使うために
紫蘇を植えていたのではと
思ったりした自分でした

お店は移ったけれど
紫蘇だけは新たな場所に移ることもできず
ビルの取り壊しとともに
抜き去られる運命なのだろうなと思うと
一生懸命に葉を伸ばす様が
ちょっと哀れに感じられました

せちがらさ胸に沸き立つ冬初め 【季語:冬初め】

2021年11月13日 | 俳句:冬 時候
残すところ後二ヶ月を切り
年内に遣り残したがことが
まだまだ沢山あるのですが
どうもそれも片付きそうにありません

肌に当たる風が寒くなってきているせいか
余計に胸の内がせちがらく感じられます

毎年こんなものだったかしらと
昨年の記憶を手繰り寄せたりしています

ブナの林で 【詩】

2021年11月11日 | 

「ブナの林で」

僕らはもうすぐ散っていくよって
色づく ブナの葉っぱが伝えている

ヒラヒラ ヒラヒラと
手を振っている
大きな手 赤子の手

さようなら
ありがとう

葉っぱの間から太陽が零れ落ちている
葉っぱがまるで若い歯のように笑っている
何の憚りもなく
もしくは 人生を通り抜けた老人の破顔

 さようなら
  ありがとう

散って行く先の深遠を
葉っぱはもうきっと
感じ取っている

僕の知らないその先へ
僕の恐れてしまうその先へ

明るく落っこちて行く 葉っぱ
それに 続いて行く 葉っぱ

 さようなら
  ありがとう

きっと 怖くはないんだね

 さようなら
  ありがとう

色い葉っぱの笑い声が 木霊している

 さようなら
  ありがとう・・・・・


週末や一日過ぎたおでん食べ家で寝過ごす冬の雨降り 【短歌】

2021年11月10日 | 短歌
寒い朝でした
前の晩からの雨もあがらず
外に出る気がしないのは
家族で一致していました

そのせいか皆
パジャマ姿でダラダラと
テレビを見て過ごしていました

食事も前の晩に作っておいた
おでんの残り
もちろん味がしみて悪くはなかったのですが
やる気のなさが食卓にも表れていました

子供にも親のダラダラぶりが伝染しつつあるので
ちょっと気をつけなければと思いました

秋寂びて松脂鈍く光りおり 【季語:秋寂び】

2021年11月06日 | 俳句:秋 時候
仙台に暮らしていた頃

同僚に車に乗せてもらっていた時に
冬タイヤへの履き替えの話が話題になりました

紅葉も進んで
葉の落ちていく木々の枝を見ていると
心に寒いものを感じます

散歩をしていた最中にも
とある松の木のそばを通ったら
樹皮の上に染み出した松脂が
深い琥珀の色をして鈍く光り

寒い塊を見たような気分でいました