風のささやき 俳句のblog

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Haiku 蒲公英、菜の花

2019年05月31日 | Haiku
春の風景をひと際
明るくしてくれる菜の花と蒲公英と
その風景に早く出会いたいなと思う
春を待つ気持ちです


───☆

野に菜の花と蒲公英が
色を競い合うように咲いて


☆-- Haiku ---☆

contest in the fields
master of yellow
dandelion and field mustard

(tanpopo=dandelion
nano-hana=field mustard)


※日本語に慣れ親しんだ僕には
 タンポポと菜の花の語感がしっくりくるようです


contest in the fields
master of yellow
tanpopo and nano-hana


☆-- 俳   句 ---☆

453 菜の花と蒲公英の黄の色比べ


nanohana-to tanpopo-no ki-no irokurabe


駅のポスターには
沢山の花があって
野山に人を誘うのでしょうね

別れ際のバス停で 【詩】

2019年05月30日 | 
「別れ際のバス停で」

ステップを踏んで 僕が先に降りて
それに続いて あなたがバスから降りてくる
その横顔が 夕日に赤く濡れて
名前は知らないけれど どこか懐かしい
赤い花に 似ていた

まだまだ 話し足りないような気がして
それでも たどり着いてしまった
バス停にいる 間の悪さに
喉元に ひっかかっている
言葉は もどかしいブロックの塊

あなたは 少し微笑んでいる
僕の好きな その横顔を
風が 当たり前のように触れていく
僕はそれが 羨ましくて
風になれればとさえ 思っているんだ

走り出した バスはもう
随分先の 交差点で
赤信号に 捕まっている
横断歩道を 急いで渡るのは
買い物帰りの 親子連れ

あなたの行く方の そちら側まで
僕も 連れ添って帰れれば
けれど 僕が帰るのは
バスがやって来た ずっと反対の方向

どうして時間は こんなにも
人と人との間に 割り込んで
人と人とを 離そうとするのだろう
心細くなり いつまでも
あなたを 抱きしめていられればと
胸に湧き上がる そんな思いを抑えられずに
それでも 平然としたふりで
いつものように 別れ際の
挨拶の 手を上げる僕に

あなたが応えて 振る手の指先から
夕日が見え隠れして ルビーのようにまぶしい
僕は 目を細めてあなたの方を見る

まるであなたは 夕日に抱かれているみたいだ
あなたの鞄も あなたの靴先も
あなたの髪も あなたの細い肩の線も
どこか 人の世のものではないみたいに光っている

だから 僕の言葉はもう届かないね
いつものように 今はあなたを見送ることにして

あなたの姿が 交差点を過ぎ
小さく 見えなくなるまで
手を 振ったままで

あなたの 別れ際の
「また明日」 の言葉を信じて
あなたに 明日渡したい言葉
胸の内にそっと 繰り返しながら

何度でも立つこと欲すその足の力を欲しくてこの体には 【短歌】

2019年05月29日 | 短歌
まだハイハイもしない子供たちなのですが
何故か体を支えて立たせると
うれしくてたまらないようで
満面の笑みを浮かべます

まだまだ足腰が弱いので
当然フラフラとしているのですが
それでも自分でしゃがんだり
また立ったりと
飽きることなく繰り返しています

その親はと言えば
ちょっと立つのにもよいしょの一声

子供の足の力を
分けて欲しいなと思います

鼻たらし逃げる子速し初夏の空 【季語:初夏】

2019年05月25日 | 俳句:夏 時候
風邪の割には元気一杯の子供たちをつれて
公園へと遊びに行きました

乳母車から解き放つと
蜘蛛の子を散らすように駆け出す二人
各々の遊びたいところに走って行くので
どちらを追いかけようか迷ってしまいます

まだ風邪が治っていないせいもあり
くしゃみをすると勢い余って
鼻水も出てくるので
それを拭いてやろうと追いかけると

遊びだと思っているのか
面白がって駆け出す子供たち

その逃げ回る背中が
初夏の明るい空の下で
躍動していました

緑の木陰で 【詩】

2019年05月23日 | 
「緑の木陰で」

いつの間にか緑のドレスをまとい
すっかりと色を濃くする木陰で
餌を貰う犬の楽しいお昼時

緑の芝生のランチョンマット
口から伸びる長い舌は
彫刻のされた銀のスプーン代わり
尻尾を振り振り待つ時間も
楽しい食事の前菜のようだ

木漏れ陽の下で
食べるためだけに使われる牙は
すっかりと鋭さをなくし
宝石のようにキラキラと光っている

お前の食べる様子
嬉しそうに見守る少女
爽やかな風は快いバックミュージック
すべてのものがお前の平和な食事を祝福している

毎日のあたりまえの繰り返し
それがどんなに幸せなことなのか
ついぞお前が知る余地などないだろうけど

お前よりもお腹を空かし
お前よりも食べ物が少ない人のことを
遠く離れた大地にいる
お前よりも年若い
もしかするとそれは
子供だったりすることを
僕は知っていながらに

さっきまでカフェで
ビールなどを飲みながら
ほろ酔い加減で
偶然に見た犬の食事の美しさで
感傷を覚えているから

夏の空よ
果てしなく広がるお前の下で
何て僕はちっぽけで
不誠実なんだろう

舞い上がったビニールの
白い買物袋と僕と
区別さえつかないんじゃないか

僕はいつも思っているばかりだ
思うことを手玉に取って
すっかりと安心をしきって

その道を右に曲がったところには 紫陽花がある色まだ薄い 【短歌】

2019年05月22日 | 短歌
時折散歩をする道を
乳母車を押しながら歩いていました

子供たちが静かになったので
様子を見ようと乳母車を止め覗き込むと
すやすやと眠っていました

その場所からはちょうど
右に曲がる細い道が続いていたのですが
その奥の方にはまだ色の薄い紫陽花が
綺麗に咲いていました

思いがけない発見をしたようで嬉しくなり
ここを右に曲がれば
綺麗な紫陽花が見えるよと
誰かに教えたい気分でいました

泣き虫の子もあやされて薫る風 【季語:香る風】

2019年05月18日 | 俳句:夏 天文
その日は朝から暖かでした

部屋の換気をしようと
幾つかの窓を開けると
風の通路ができたのか
カーテンを膨らませて
暖かな風が勢いよく吹き込んできました

その風がよほど気持ち良かったのでしょうか
あやしても泣き止まなかった子供たちが
急に笑顔になりました

そうして風が入ってくるたびに
笑いながら風をつかもうと手を動かします

子供たちに大人気の風に負けた気分で
ちょっと嫉妬を感じながらも
僕も子供と一緒に
心地の良い風を楽しんでいました

退屈な毎日に 【詩】

2019年05月16日 | 
「退屈な毎日に」

マンションの向こうにまた今日も
夕日が落ちて一日が暮れる

あの夕日はどこへ逃げ去ったのだろう
足早にマンションの一室に隠れこんで
古ぼけた皿の風景にでも
成りすましているのだろうか

僕はまた今日も
無駄なことを考えながら
歩き慣れたこの道を帰る

見慣れた赤いポストもいつものままに
バスを待つ人の顔も同じで
花屋の軒先の花束が
どこかお疲れ気味なのも決まりきったように

そうしてきっと明日もその次の日も
トボトボトボトボと
歩く僕の姿にも変わりはないと

雨は降るかも知れないが
風が吹くかも知れないが
繰り返す波のような単調な毎日が
僕の脳裏を
雨ざらしの鉄くずのように
赤く錆付かせるから

僕の口はいつからか
鈍い低音の響きしか
発することができなくなっている
僕自身でさえその音には
ゾッとするぐらいだが

いつから僕は
こんな退屈というあやかしに
取り込まれて生きているのだろう
煙草を燻らせるように
怠慢を口にしながら
青空を眺める目は
もう涙でジュクジュクと窪み

僕の毎日はもう
退屈という波の上で揺られる
眩暈のようなもので

こんな毎日にもう僕は
すべての意志も思考も諦めるだろう
退屈の奥底で舌なめずりをしている死が
すぐに吐き出す味のないガムのようになって

春の暮れ迷子になったせつなさを思い出したし灰色の日々 【短歌】

2019年05月15日 | 短歌
柔らかな夕日が
空に落ちて行きました

昔こんな時分に
一人はぐれて
迷子になったことがあり
とても不安でせつない気分に
なったことを覚えています

大人になって
変わり栄えのない毎日が続く中で
自分の気持ちにも変化があまり
見受けられなくなりました

胸を締め付ける
甘酸っぱいせつなさに
身をゆだねてみたいなと
そんなことを思っていました

赤子(こ)の爪を切る目は細し青嵐 【季語:青嵐】

2019年05月11日 | 俳句:夏 天文
前の晩に子供に
顔をつかまれたのですが
爪が痛くて思わず声を上げてしまいました

自分の顔も引っかき傷で一杯にしていたので
昼寝の合間を狙って爪を切ることにしました

もともと手先が器用ではない自分に
小さな赤ん坊の爪を切るのは一仕事です
指を傷つけるわけにもいかず
一本一本の指の爪を
慎重に切って行ったのですが
小さな指先なので
思わず目も細くなってしまいます

そんな僕の姿が可笑しかったのでしょうか
窓から入ってきた強い風が
僕の細い目をなぞっていきました