風のささやき 俳句のblog

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詩や短歌も掲載しています

雨強し金木犀も終の香か【季語:金木犀】

2024年10月19日 | 俳句:秋 植物

会社帰りのこと
天気予報が見事に当たり
強い雨が降っていました

折りたたみの置き傘を開いたのですが
雨脚は予想以上に強く
駅まで歩くとズボンがびっしょりと濡れそうです

けれど予報では一時的な雨ではないので
仕方が無く雨の中を歩きだしました

すると鼻には予想をしていなかった
金木犀の微かな香り
こんな雨の中でも香るのだと
その香りの強さに少し驚くとともに

きっとこの雨で散ってもう
これが最後の香りだと
僕に伝えるために匂って来たのだと
そう確信めいたものを感じていました


暗闇やしるべ鮮やか金木犀【季語:金木犀】

2024年10月12日 | 俳句:秋 植物

夜の街灯のない暗い道を歩いていました
曇り空だったので月明かりもなく
光がわずかな場所では視覚は随分と役にたたない物ですね
僕は何となく不気味な感じを覚えながら歩を進めました

するとそこに金木犀の甘い香りが漂ってきました
その香りがどこから流れてくるのかが
まるで一筋の道をたどるようにわかります

視覚が頼りなくなる場所では
嗅覚がこんなに頼りになるのかと
ちょっと驚いたほどだったのですが

香りを辿っていくと
確かにオレンジの花を咲かせた
金木犀に辿り着くことができました

それは暗闇で迷っている僕を
導くために香りを届けてくれたようでした


黄落の空は静かだすっとなる 【季語:黄落】

2023年11月18日 | 俳句:秋 植物

銀杏の街路樹が続く道を
子供と一緒に歩きました

空が淡い青色に澄んで
それを背景にして黄色い落葉が
風が吹くたびに空を舞います

美しい一枚の絵画を見ているようで
心が静かになります
沢山の人が歩いていたのですが
その姿もまるで背景の一つのように言葉もなくて

僕は一つ呼吸を吸って
胸の内が鎮まることを覚えました
すっと自分の中から何もなくなって
ただ秋の余韻に呼応するような僕でした


団栗を一つ拾わん目のすさび 【季語:団栗】

2022年11月12日 | 俳句:秋 植物
子供たちの学校公開日

いつも子供たちが通っている
通学路を歩いていると
道に団栗が一つ落ちていました

踏まれて割れた団栗の中
その一個だけが綺麗な形で
色つやもあり
思わず拾い上げてしまいました

何をする訳でもなく
ただ目に止まって惹かれてしまい
捨てるに捨てられずに
ポケットに入れました

そうして家に帰ると
捨てるのも可哀想で
鉢植えの土の上にそっと置いてみました

風雨過ぎ銀杏匂いの落し物 【季語:銀杏】

2022年10月29日 | 俳句:秋 植物
強い雨風が過ぎた日
銀杏並木の通りでは
実をつけていた沢山の銀杏が振り落とされて
地面に無残にも転がっていました

それを沢山の自転車や人が踏みつけて通り
辺りには銀杏の強い匂いが
漂っていました

金木犀も咲いていたのですが
その甘い香りさえも打ち消すような感じで
そこにずっといることもできずに
足早に信号を渡り逃げ出した自分でした

図書館の前で君待つ金木犀 【季語:金木犀】

2022年10月22日 | 俳句:秋 植物
金木犀の香る季節です

道を歩いていると
遠くの方で咲いている金木犀にも
その香りで気が付くことがあります

図書館の前を通ると
その植木にも金木犀が花をつけていて
思わずその前で立ち止まりました

若かりし頃に
図書館の前で待ち合わせをして
大切な人が来ることを待っていたことを思い出し
金木犀のような甘い香りが
胸に広がりました

毎年、この時期になると
幸せな気分にしてくれるオレンジの花に
今年も感謝していました

告げ口は一粒葡萄の盗み食い 【季語:葡萄】

2022年10月01日 | 俳句:秋 植物
高級な葡萄を送っていただきました
子供たちは大喜びで食べていました

種類も幾つかあって
一房ずつ食べてゆこう
ということになったのですが
その日の分を食べた後に
長男が冷蔵庫に入れていた葡萄の一粒を
つまみ食いしたようです

それを見ていた三男が
怒って僕の所に告げ口に来ました
葡萄を食べてずるいと

子供たちは良く
食べもののことで喧嘩をしています
大人になるとそんなこと
どうでも良いだろうと思うのですが

確かに美味しい物を食べるのは
一つの楽しみで
子供の頃には自分も食べ物のことで
怒ったり争ったりしていた気がします

三男の告げ口に苦笑いしながら
それは駄目なことだねと答えを合わせておきました

2の次はあやふやな子も食らう柿 【季語:柿】

2021年10月30日 | 俳句:秋 植物
子どもたちが数字を覚えて
それをきかせてくれます

確実に1と2は分かっている様子なのですが
その先はあやふや

一緒に数えると10までは
それなりに言えるのですが
意味は分かっていないようです

そんな数字の知識よりも
目の前のおいしい食べ物の方が
子どもにとっては重大な関心ごとのようで

両手に柿を持って食べている子供を
苦笑いしながら眺めていました

黄の矛で空突き上げる銀杏かな 【季語:銀杏黄葉】

2021年10月23日 | 俳句:秋 植物
天気の良い秋の午後でした

大きな道沿いを歩いていたら
街路樹の銀杏の木々が
黄色に色づいていました

時間があったのでゆっくりと
その木々の色合いを
楽しみながら歩いていたのですが

あまり背の高くはない銀杏の先はとんがって
まるで黄色い矛(ほこ)の様です

それが何本も地上から生えて
空を突き上げているようで

急に血気盛んな木々が
空に反抗を企てようとしているように見えて
刺々しく感じられてきました