アートの周辺 around the art

美術館、展覧会、作品、アーティスト… 私のアンテナに
引っかかるアートにまつわるもろもろを記してまいります。

堂島リバービエンナーレ2011「Ecosophia(エコソフィア)」

2011-08-19 | 展覧会
危なかったです。こんな面白い展覧会を見逃すところでした!
堂島川沿いにリバービューを望む堂島リバーフォーラムにて、堂島リバービエンナーレ2011が8/21(日)まで開催。見つけたのはこちらのサイト
2年に1度のこのイベント、今年は2回目だそうで、テーマは「Ecosophia ― アートと建築」。



テーマの由来は、今は亡きフランスの哲学者フェリックス・ガタリが提唱した「エコゾフィーの実践」で、エコゾフィーとは、環境の生態に止まらず、心や社会の生態を組み合わせた考察という意味の造語とのこと。
作品たちは、地圏、水圏、気圏という3つのカテゴリーに分けられ、3.11の東日本大震災の影響も色濃く反映された地球という壮大なテーマが掲げられている。
会場はホールのような場所。天井が高く無機質だ。全体に暗いけれども作品へのスポットはかなり強烈。この空間に渦巻いている音楽は坂本龍一教授のオリジナル曲「エコソフィー」。そこここで唸っているようで、どれもが個々の作品のためにあるような不思議な聞こえ方…。

入っていきなり、安部典子さんの紙をくり抜き一枚一枚重ねた気の遠くなる作品。紙の重なりがまるで等高線のようで、地質にあいたくぼみのようだ。別の作品は材料の紙に3月11日の震災を報じた新聞が使われていて、この展覧会が震災に触発されていることを強く印象づけられた。
一番おもしろかったのは、インドの作家であるアニッシュ・カプーアさんのかなーり不思議な建築模型の数々。模型とのことでほんの5ミリくらいの人がミョーな形の巨大な建築物のまわりにいるんだけど、初めこの作品を見たときは、抽象彫刻だと思った。で、よくよく見るとミニの人がまわりに立ってて、それによって自分がそのミニの人になって、巨大な建築物を見上げているような錯覚に襲われた。とても建物には見えないものにも、まわりにミニの人がいることによって、突如建築物に思えて、自分の目の前にそびえたっているような感覚になるから不思議だ。今解説をよく読んでいたら、実際につくられたパブリックアートの模型…と書いてあってびっくり。あんな建物、ホンマにあるんやろか~??見てみたい。

会場の奥にでかい雪山のように鎮座しているのは森万里子・隈研吾による「ホワイトホール」。ホワイトホールとはブラックホールの時間事象を反転させたアインシュタインの方程式の解として今も大きな議論が展開されている…とのことだが、難しい理論とかわからんけど、白いウレタン素材でおおわれたでかい山状のものは、私には巨大なカマクラに見えたね。細い通路から中に入れるのだけれど、中はじっと立っていられないような空間。薄明かりというのでしょうか、なんかポッカリとした空間はよりどころがなくて、見上げていると眩暈がして倒れそうになりました。

もうひとつの目玉は、杉本博司・永山祐子の「NO LINE ON THE HORIZON」。杉本さんの写真作品である「海景」のさまざまな海の水平線をフィルムのようにつなげて海の表情の変化を見せつける映像作品。でっかいスクリーンが湾曲しておりさらに両側に鏡があるので、前に立つと、左右に限りなく海が広がっているように見える。作品はモノクロなのだけど、今思い返すと色があったように思えてくる。それほど海面の、水平線の、海を取り巻く空気感の表情が豊かなのだ。
もうひとつ、映像作品でズンと来たのが、チームラボ・柳原照弘の「百年海図巻 アニメーションのジオラマ」。これはWWFが2009年に発表した「今世紀末までに地球の海面は最大120㎝上昇する」という予測に基づき1世紀後に向け上昇していく海面の様子を100年間実寸で上映し続ける作品だそうだが、今回は10分ほどにまとめられていた。ホールの2階から約15mの幅のスクリーンを眺めるのだが、古典絵巻物を動画で見るように、背景は金箔貼り、アニメーションで海面がうねっているところに松の生えた小島が右から左へと流れていく。それがしばらく続いた後、海面がどんどん上昇していって、ついには島々が波間に消えていくのだ…。それが、今回の津波の海の水がどんどん増していってすべてのものをのみ込んでしまうのとイメージがすごく重なって、すごくキレイな映像なのだけど、とっても重苦しい気持になった。

作品たちも3.11を色濃く反映していたし、見る側の私たちも(直接ではないですが)それを体験している。人々の日常を吹き飛ばしてしまうほどの自然とか地球とかに対し、畏怖の念を抱かずにはおれない、そんな気持ちをこの展覧会で共有したように思った。

空間も作り込んでいるし、作品自体も、身体全体に迫って来るようで、久々にすごく五感にしびれる展覧会でした。おすすめいたします!!

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