アートの周辺 around the art

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引っかかるアートにまつわるもろもろを記してまいります。

宇佐美圭司回顧展 絵画のロゴス@和歌山県立近代美術館

2016-03-13 | 展覧会

今年前半は、何かと和歌山にご縁がありそうで…。2月にクエを食いに白浜に行ったばっかりですが、お目当ての展覧会が始まった和歌山県立近代美術館を訪ねました。4月末には「恩地孝四郎展」も控えてますしね!

現代美術家である宇佐美圭司さんが、2012年に逝去されて以来、関西圏では初めてとなる回顧展。以前、彼の著書を紹介した記事にも書いたが、私にとっては、1992年に大阪南港にあった安藤忠雄建築のライカ本社ビルで行われた展覧会が、ものすごく印象に残っています。天井の高いコンクリートの無機質な展示空間に、ブルー系の美しい色彩の思索的な大画面の作品が並べられていた光景が今でも目に浮かびます。(今調べてたら、この建築はライカ倒産により2012年に取り壊されていました…。う~ん、過ぎ去った年月の長さを感じるなあ。)

宇佐美さんの作品の一番の特徴は、1965年の「ライフ」誌に掲載されたロサンゼルス・ワッツ地区で起こった黒人暴動を報じた写真から、4つの人型(投石する人、走る人、たじろぐ人、かがみこむ人)を抽出し、これらを人間の持つ根源的な形態として、以降、繰り返しモチーフとして作品に描き込んだことでしょう。

それ以前は、色が乱舞する抽象画、そしてそれを鎮静化するような白で塗り込まれた抽象画を制作されていました。抽象表現を徹底的に突き詰めたその先にあらわれた4つの人型。実際にその写真が掲載されている「ライフ」誌が展示されていましたが、この中から4つの人型を見抜いた宇佐美さんの眼っていかなるものだったのでしょうか…。

以前見た展覧会が1992年ですから、宇佐美さんはまだ52才、振り返ればまだ「中堅どころ」だったのかもしれないですね。久しぶりに宇佐美さんの作品に再会できて嬉しかったし、その後の20年に、どんな風に作品が変遷したのかも、とっても興味深かったです。

初めの頃の作品は、4つの人型が、一定の規則をもって配されながらも、点在し静止している印象を受けますが、晩年の作品は、この4つの人型がぴったり円の中に収まり(まるで、ダ・ヴィンチの有名な人体図のように)、その円が連なって画面を構成しているので、ものすごく動きを感じます。

円の連なりが生み出すうねりは、遺伝子の螺旋を思わせたり、天空の星の動きを思わせたり、はたまた、曼荼羅を思わせたり…。大きな動的エネルギーを感じ、なんだか前に飛び出してくるように見える一方、すごく画面が静謐で深遠な感じでもあるのです。具体的な人型を用いながらも、やはりこれは、抽象表現主義絵画なのではないだろうか?と思いました。

色が何ともいえずに美しいのですよね~。ほとんどが2m四方を超えるような大作ばかりですから、「絵」を見る楽しみを心から感じることのできる満足の時間でした。カタログがまだ出来ていなかったのは残念!次回訪ねた時には買えるかな??

展覧会は4月17日(日)まで。美術館は、和歌山城のすぐそば、建物や施設に、黒川紀章さんのこだわりが満載で、とっても個性的です!


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