片岡球子の迫力に充ちた作品に衝撃を受けたのも、やはり愛知県美術館のコレクション展だったように思います。いざ、球子に会いに名古屋へ!
1905年に生まれ、103歳まで画業を追求した片岡球子の生誕110年を記念する本展覧会は、院展に初入選した作品から代表作の富士山や面構シリーズ、そして晩年に取り組んだ裸婦に至るまでの画業を辿る60点の作品と、作品制作の裏側を語るスケッチや資料なども加えた回顧展。球子芸術をめちゃ堪能できます!
小林古径に「ゲテモノ」と評されたと言う球子の人物像は、うーん…何と表現すればよいのか、確かにデフォルメされ歪んでいるような、ヘタウマなような、でも何とも言えない味があり、まさにその人らしさを表出しているような、力強く迫力のある表現なのです。
50歳まで教師を続けたという球子、やはりそれ以降の作品の充実ぶりには素晴らしいものがあると思いました。作品も本当に大きいものが多かったです。
大迫力だったのは、富士山や浅間山など、山を描いた作品たち。きょうの日曜美術館では、球子は表現を追求するために、日本画の枠を超えて木工用ボンドに油絵具を混ぜて、何と!手で描いたのではないか、と言われていました。見ることにこだわった球子の目に映った山肌は、光が色とりどりに乱舞し、力強い画材の存在感が迫って来るようで圧倒されます。
そして球子が尊敬する歴史上の人物を描いた「面構(つらがまえ)」シリーズ。ちらしに載っているのは足利尊氏。これは京都の等持院にある足利尊氏の像をもとに描かれたそう。日曜美術館で何度も描いた球子のスケッチが紹介されていたが、実際の像を見ると、球子が受けた印象に共感ができて、球子が理解した足利尊氏がわかるような気がしました。
その他にも、上杉謙信や北斎、写楽、豊国などの浮世絵師、雪舟、一休さん…球子のとらえた人物像を見るのが楽しいし、その人が背負う背景を踏まえた画面づくりがおもしろいなあ!と思いました。
私は、今回、何といっても球子の装飾性といいましょうか、特に人物像の着物の柄の細かさと美しさに目を奪われました!きょうの番組では、描く人物の時代背景なども調べ上げ、当時の着物の柄も研究し尽くし表現に生かしたというエピソードがありましたので、今思えば、あの美しい衣裳の柄ひとつひとつにも意味があったのかな…。
衣裳の柄の素晴らしさや山の迫力ある表現のみならず、球子の作品は印刷物ではその素晴らしさがなかなか伝わりません!絵の背景なども相当凝った描き込みがなされています。大きさも含め、実物の作品に対峙してこそ味わえる迫力と感動がありました。
103歳まで描き続けた片岡球子は、わがホームミュージアムの滋賀県立近代美術館がコレクションを所蔵している小倉遊亀と少しイメージがだぶります。二人とも日本美術院を代表する女流画家であり、画家に専念する前は教師をしていて、ともに100歳を超えるまで描き続けました。遊亀さんもデフォルメした人物像を描いているので、決して対照的とは思いませんが、やはり球子の絵画の個性的なのは群を抜いている気がします。同時代の二人の関係性なども、興味があるところです。
展覧会は、7月26日(日)まで。日曜美術館は、来週12日夜8時から再放送。生前の球子へのインタビューなどもあり興味深いですよ!