生家の本棚にこんな冊子がありました。著者は未だに不明です。
この冊子に書かれた現場を訪ねています。
17.婆落し(孫兵ヱ作)
昔、桜井にとても気の優しい若者がいました。
ある朝、両親がこの若者に、おいぼれた婆さんを車に乗せて、お婆落し(桜井の国民休暇村の下あたりだと言われる。)に捨ててくるように言いました。
言われた通り、お婆落としの所まで連れてきたものの、若者はどうしても婆さんを「お婆落し」から落す気になりません。
そこで婆さんをその場にまたせておいて、空の車をおして家に帰りました。
若者の両親は口をそろえて「なんで、その車も一緒に捨てなんだ。その車はもういらんぞ」と言いました。
若者は静かな口調で「この車は、又お父さんとお母さんを捨てに行く時、使わなならん」と答えました。
我身の事を忘れていた両親は、顔色を変えて狼狽し、若者をせきたててお婆落しまでいきました。
若者の言葉を信じて待っていたお婆さんを見るや、両親は抱きついて歓喜にむせびました。
それから、その若者の一家は代々孝養の念に厚い家として人々からうらやましがられました。このことがあって以来、この悪い習慣がこの地方からなくなったと言うことです。
この冊子に書かれた現場を訪ねています。
17.婆落し(孫兵ヱ作)
昔、桜井にとても気の優しい若者がいました。
ある朝、両親がこの若者に、おいぼれた婆さんを車に乗せて、お婆落し(桜井の国民休暇村の下あたりだと言われる。)に捨ててくるように言いました。
言われた通り、お婆落としの所まで連れてきたものの、若者はどうしても婆さんを「お婆落し」から落す気になりません。
そこで婆さんをその場にまたせておいて、空の車をおして家に帰りました。
若者の両親は口をそろえて「なんで、その車も一緒に捨てなんだ。その車はもういらんぞ」と言いました。
若者は静かな口調で「この車は、又お父さんとお母さんを捨てに行く時、使わなならん」と答えました。
我身の事を忘れていた両親は、顔色を変えて狼狽し、若者をせきたててお婆落しまでいきました。
若者の言葉を信じて待っていたお婆さんを見るや、両親は抱きついて歓喜にむせびました。
それから、その若者の一家は代々孝養の念に厚い家として人々からうらやましがられました。このことがあって以来、この悪い習慣がこの地方からなくなったと言うことです。