20年くらい前のこと、ラーメンブームがありました。ブームにはランキングなるものができます。「ちばき屋」は全国トップ10の常連になりました。聞くと、その店は当時住んでいた隣の駅近くに在りました。時々一人で、たまには子供を連れて食べに行きました。 休日しか行けなかったので、行列に30分待ちは当たり前でした。そのうち羽田空港にも店を出しました。そこで食べられるように意識して出張スケジュールを組んだりしたものです。
やがて現在の住居に住むようになって足が遠退きました。ブームが去って、やがて羽田空港の店も無くなりました。その頃から、メタボ対策もあって、滅多にラーメンを食べなくなりました。夏場に冷し中華を食べるだけです。そうなってもう10数年になっていました。
縁とは不思議なものです。 前の住居近くの床屋にずっと通っていました。歩いて1分の距離です。頭髪が薄くなって、今のヘアースタイルを作ってくれた店です。現在の住居に引っ越した後も自転車や電車で通っていました。黙って座れば的確に整えてくれる安心感があります。最盛期には二人の店員を雇っていました。もう30年以上他の床屋に行ったことがありません。
それが2年くらい前に、突然店主からメールがありました。そのメールが言うには、「店を畳んで理髪店に就職した。良かったら引き続き新しい店に来てくれ」というものでした。 床屋が変わるのは面倒です。私の髪のことは全部分かっていて、黙って座れば気にいるスタイルに仕上げてくれるのがありがたかったし、30年以上の付き合いが何より大事で、早速行きました。 髪を切って貰いながらの問い問われ語りに言うには、「友人にお金を貸したんだけど自殺してしまってお金が戻って来ない。友人の父親は既に無く、母親は介護施設に入っていて支払い能力が無い。それより何より、友人との間で借用書を交わしていない。運転資金がショートして、貯金を叩いて店を整理したので雇われることにした」とのことです。
なんと、その彼が就職した理髪店が「ちばき屋」の近くなのです。こうして私のちばき屋通いが復活しました。今は3週間に1度の平日に、散髪を11時に予約して終わった後、その足でやって来ます。ラーメンブームが去っても、緊急事態宣言下でも、時々行列ができていて並びます。味は変わっていません。
今は、ある意味散髪に行くのが楽しみになっています。