超人日記・作文

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#俳句・川柳ブログ 

<span itemprop="headline">バルテュス展と老画家の祈り</span>

2014-05-09 23:01:10 | 無題

上野の公演口の東京都美術館で開催されている、バルテュス展に行ってきた。
夜のせいか比較的空いている。バルテュス展のポスターになっている絵が何とも官能的である。
バルテュスといえば、哲学者ピエール・クロソフスキーの兄弟である。クロソフスキーと言えば、『生きた貨幣』や『ディアーナの水浴』など鋭い洞察力のある哲学書で知られている。
またバルテュスもピエール・クロソフスキーも哲学者のジョルジュ・バタイユやロジェ・カイヨワの盟友であり、いっしょにアレクサンドル・コジェーヴのヘーゲル講義などを聞いて哲学談義に明け暮れたことで知られている。その仲間に若き日の岡本太郎も交じっていた。
日本には黒い表紙のフランス系難解書と呼ばれる一連の分野があって、その中央を占めるのがクロソフスキーやバタイユのあぶない著作である。
その錚々たる知識人の青年群像の中で、バルテュスは静かに眠れる少女の寝姿などを黙々と描き続けた。
その主題的あやうさが時として話題となるバルテュスであるが、その官能性は意外と控えめである。
一生涯、伴侶の節子クロソフスカ・ド・ローラさんとともに少女の永遠性を晩年まで追求し続けたバルテュスである。
その最晩年のモデルを接写したリアルな写真集が部数限定で売られていた。
有名な暖炉の横で足を投げ出して眠っている少女の官能美を描いた絵が実物を見ると凄いアウラを漂わせていた。
連作猫絵画ミツという小品集が猫の描写が細かく、子どもでも微笑んでしまう親しみやすい作品群だった。カップルで見に行くのも躊躇われるし、家族連れで見に行くのも躊躇わられる。
そのような秘密の薫りがするバルテュスの展覧会が上野の真ん中でひっそりと開催されている。
フランス文学や絵画に関心のある人にとっては、実に奥深く、心ひかれる展覧会であった。会場で上映されていたバルテュス伝のDVDは京都の芸術センターで借りて見た思い出がある。心ひかれる映像である。

長細い少女の脚の永遠をひたすら追った老画家の祈り



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