超人日記・俳句

自作俳句を中心に、自作短歌や読書やクラシックの感想も書いています。

<span itemprop="headline">ローマ人の人間模様を知る一冊</span>

2014-04-16 20:17:10 | 無題

古代ローマ人の24時間という本を読み終わる。古代ローマ人の起床から就寝までを記述するという体裁で、市民生活の一コマ一コマを切り取って詳しく説明してくれる。
ローマ人の書いた本は多いが実際どう寝起きして何を食べどれぐらい働き何を娯楽にしていたのかを手軽に知るのは難しい。
それを世界ふしぎ発見のようなルポライター感覚で見てきたように実況してくれるなかなかの優れものである。
先日カトゥリ・カルミナがNHKで放送されて大きな話題になった。
お魚のように飛び跳ねるあなたのメントゥラ、私の泉を求めて、みたいに男女掛け合いで歌われるカトゥルスの詩が、あまりに刺激的だったからである。
私はテレビを見ていて恥ずかしくなってチャンネルを変えてしまった。
NHKにしては大変な冒険である。
カトゥルスの恋愛詩はサッフォーをモデルにした女性に捧げられた恋愛詩で、古代ギリシアの教養を模範にした格調高い伝統の上にある。
とはいえローマ人の想像力は非常に直接的で、読んでいる方は笑いを禁じ得ない。
このような愛すべきローマ人がどのような暮らしをしていたか、興味をそそられるところである。
河出文庫の古代ローマ人の24時間は現代人が感じる素朴な疑問に親切に答えてくれる良書である。
ただし、コロセウムで果たし合うショーの投げ掛ける深刻な人間存在の闇への答えは与えてくれない。
この本は剣闘士や人間模様の是非をうんぬんせず、現実を提示して見せる。
筆致が軽やかだけに、人間それでいいのかという深い疑問が残される。
最後に至るまで昂揚するのが生の哲学の暗い真実であるとすれば、ローマ人の実態も許容範囲だろう。
だが、こんな運命ありかと立ち止まってしまうのが私の本心である。
恋愛に手を出せば人生を断ち切られるローマの巫女の悲運に思わず立ち止まってしまう。
友人は良い本を貸してくれた。臆病な私には良い刺激である。
古代ローマ人の24時間、好奇心旺盛な読書家にはお薦めの一冊である。

闇の奥人間模様を丁寧に伝えてくれる本を読み終え



コメント
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