ブラームス交響曲全集は比較的安いので気を抜くと結構な量になる。
私が一番気に入っているのはクルト・ザンデルリンク・ベルリン響の全集である。雄大でコクのあるスローテンポな美品である。
ザンデルリンクは息子のトーマスとフィルハーモニアの盤も素晴らしい。親子そろって美感が優れている。
次に好きなのはジュリーニ・ウィーンフィル盤である。これもスローで深い味わいがある。大人の全集である。
三番目に挙げられるのは、意外にもビエロフラーベク・チェコフィル盤である。チェコフィルの渋みが利いていて丁度良いテンポだ。ビエロフラーベクの顔立ちもいい。
また、定番のベーム・ウィーンフィルの線の細い繊細な響きも捨てがたい。それから興奮ものなのは、フェドセーエフのライヴ中継盤である。フェドセーエフの息遣いまで伝わってきて、ロシアの熱い血と臨場感が楽しめる。
ロシア物ではコンドラシンの全集も私が知るなかではテンションが高い。
私が最初に聞いたブラームス全集はサヴァリッシュ・ウィーン響盤で、地味だが今でも愛着がある。次に聞いたのがヴァント・北ドイツ放送響で、これはテンポが速いと思った。
他にはハイティンクの旧盤もきめ細やかでバランスが取れている。同じコンセルトへボウではベイヌムの二枚組も気品ある逸品である。古いところでは、ワインガルトナーが堅実な構成美を聞かせる。またメンゲルベルクのライヴも生々しい。
新しめのところでは、シャイー・コンセルトへボウ盤も良かったが特徴に乏しい。マッケラスの室内楽ふうのオリジナル派の全集は風通しがいいが、ザンデルリンク盤に慣れた耳には薄味に感じられる。
交響曲第一番の悲壮感溢れる出だしから胸に込み上げてくるものがある。
ブラームス交響曲全集の至福感は、筆舌に尽くせない。