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超人日記・俳句

俳句を中心に、短歌や随筆も登場します。

#俳句・川柳ブログ 

<span itemprop="headline">文字の呪能</span>

2009-07-01 22:18:24 | 無題

漢字学者、白川静氏のお陰で、漢字の原初的な本来の意味がかなり明らかになった。
白川氏は漢字は多かれ少なかれ象形文字かその組み合わせだと言う。
白川氏は殷の時代の、紀元前1400年代の甲骨文字を徹底的に読み解くことで、漢字の形の元の意味を浮かび上がらせた。
白川氏の研究は台湾では有名だが、中国本土ではその道の権威と称する人が多すぎて、認知度が低いと言う。白川氏の最大の功績と言われているのは、言うなどの漢字についている口の字の原義を明らかにしたことだ。口の字はくちの象形文字ではなく、正確にはUに横棒をつけたsaiと呼ばれる字である。
このsaiは祝詞を入れる器の象形文字だと言うことを白川氏は発見した。
例えば、言うという字は、もとは辛の下にsaiを書いた字である。
辛とは入れ墨を入れる針の象形文字で、この辛(はり)を祝詞を入れる器saiとともに置くことで、神への誓いを立て、誓いを破ったら体に入れ墨を入れても構わない、という意味で用いたという。
甲骨文字は占いに用いたのが始まりで、その一文字一文字には呪能があると信じられた。
白川静氏のおもしろいのは、文化の呪術的起源をひも解いて行ったところだ。
有名な話だが、道という字に首があるのは、知らない地を旅する時に異民族の首を手に持って魔除けとして持って歩いたからだという。
文という字は人が大の字で死んでいるようすを表した字で、文の字の空欄の胸の部分に×の字やVの字を書いたのもあって、死体の胸に×の字を書いてお祓いをしたり、蘇りを祈念したのが始まりだという。この意味を留めているのが文身ということばだという。胸という字や凶という字に×がついているのも、死体の胸に×印をつけた名残りである。
また、眉という字はめとまゆのうえに飾りの線を描いた象形文字で、殷の時代には媚女と言われる呪力の強い巫女の集団がいて、国政や戦争を左右するとされた。夢という字は夜(夕)眠っている時に眉を飾った媚女が夢魔として現われているようすだという。白川静氏の著書には皆こういう刺激的な話が満載で、文字の呪能が伝わってくる。(「文字逍遥」ほか参照。)



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