新・本と映像の森 333 柞刈湯葉「冬の時代」『人間たちの話』早川文庫、2020
作者氏名の読み方は「いすかりゆば」です。日本の新進SF作家。
本は『人間たちの話』<早川文庫JA>、早川書房、2020年3月25日、283ページ、定価本体740円。
巻頭7ページから50ページ、43ページの短編です。
「冬の時代」は、なぜかはわからないが雪原と化した日本列島が舞台。列島のまんなかへん、海岸沿いを南下してていく男の子2人連れ。
12才のヤチダモと19才のエンジュ。
2人はもといた岩手県あたりのコズタカの村から半年かけて歩いてきた。ヤチダモの母が伝染病で死んだので、ヤチダモとヤチダモと一番親しいエンジュは、おきてどおりに1年間、村をはなれることになった。
あれ、これって宮崎駿さんの「もののけ姫」で、イノシシの祟りを受けて故郷岩手の村を追われるアシタカの運命に近い?影響を受けた可能性はありますよね。
それに遺伝子的に改良されたと動物たちいうのも宮崎駿さんのマンガ版『風の谷のナウシカ』の世界だ。
ボクは、なによりも作者と登場人物との「心理距離」、作中の登場人物と描かれた現実対象との「心理距離」がすごく気に入っている。
最近はコロナで「3密」になるなと言われるが、「距離」が密接すぎるか、「距離」が遠すぎる人が多い。
やたら密になりすぎて支配したがる、支配されたがるのもいやだし、遠すぎて密林のオランウータンさんのように「ひとりもの」状態もいやだ。
このような心地よいちょうどよさの世界をこれからも描いて欲しい。