雨宮智彦のブログ 2 宇宙・人間・古代・日記 

浜松市の1市民として、宇宙・古代・哲学から人間までを調べ考えるブログです。2020年10月より第Ⅱ期を始めました。

哲学の学習3 「発展」と「展開」

2010年01月01日 19時36分24秒 | 人間・生命・宇宙
 弁証法哲学では「発展」はきわめて重要なキー概念だと思います。発展とは、たとえば青木書店発行、森宏一さん編『哲学辞典 第4版』(1987年)の「発展}の項目(p376)ではこう書かれています。
 「変化の一形態であるが、この変化の特徴は一義的な方向をもつことである。」とし、「単純なものから複雑なものへ、低い段階から高い段階へと移りいく変化である」としている。これは正しいと思う。
 さらに「発展はたんなる量的変化ではなく、古いものが新しいものへという質的に変わることで生じる変化である」とし、その後に、重要な点を青木版『哲学辞典』は指摘していると思います。
 すなわち「繰りかえされる変化ではなく、新たな段階にのぼりいくのであって、円周をめぐる繰りかえしの変化にくらべると、変化するものがふたたび変化の出発点にもどり、またそこから始まるのではなく、変化の終点は最初の出発点より高いところにある。そしてこの高いところの出発点からつぎの変化の過程をはじめる。そこでたんなる円周上の変化とちがってラセン状に変化する」としている。
 これは正しいのですが、ここでいう「発展」ではないことろの「繰りかえされる変化」「円周をめぐる繰りかえしの変化」という概念が規定されていません。
 そのことを、生物学者の井尻正二さんは『ヘーゲル「大論理学」に学ぶ』}(築地書館、1980年)の「Ⅲ 展開と発展」(P79~p135)で、ヘーゲルが『大論理学』の第3巻「概念論」で展開した「発展」は、生物の系統発生(=進化)を述べたのではなく、生物の個体発生を述べているのであることを指摘しています。
 さらに、井尻さんは、混同されている生物進化における「発展」と、生物の個体発生とを区別し、個体発生のような。低いところから高いところへ、単純なものかた複雑なものへの場合で、かつ循環的で円周的な、出発点に戻る変化を「展開」とすることを提案しています。
 不可逆的・非可逆的な変化のなかで、出発点に戻る「展開」と、出発点に戻らない「発展」とを区別することは、きわめて重要な指摘だと思います。このことを考えていきます。

(2010年1月1日投稿)