馬糞風リターンズ

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イチジクのセックス。

2014年02月24日 | 自然
イチジクは漢字で「無花果」と書きます。これはイチジクが花を咲かせずに実をつけるように見えるからです。しかし無花果といえども実を稔らせるということは花が咲き、雄しべと雌しべがあり花粉を受け渡しすることにより子孫を残しているのはほかの植物と全く変わりはありません。イチジクの実は、無数の小さな花が空洞になった内部に向かって咲いています。この隠れたイチジクの花はどのようにして受粉しているのかというと、たった一種類の花粉媒介者(ポリネーターpollinator)に依存しています。
イチジクが頼りにしている唯一の花粉媒介者とはヌカカ程の大きさの「イチジクコバチ」と言う昆虫です。イチジクコバチのメスが、イチジクの先端にある小さな穴からイチジクの内部に潜り込みます。
この時、イチジクコバチは雄花の林の中を掻き分け掻き分け実の内部に進んでいきますから身体中花粉だらけになっています。イチジクの雌花は花柱の長いものと短いものとの2種類があります。イチジクコバチが産卵するのは花柱の短い雌花です。しかし、イチジクの内部は暗闇です。イチジクコバチは暗闇の中で産卵管を花柱の根元まで届くまで雌花の花柱を刺し続けます。その時、繁殖能力のある長い花柱に花粉を付けます。こうしてイチジクのセックスは終了してイチジクの次の世代の「種」を作り出すことが出来る訳です。
イチジクが次世代を引き継ご為の受粉(セックス)の手助けをしたコバチへのご褒美は、花柱の短い雌花をコバチの絶好の産卵場所として提供することです。花柱の短い雌花は、イチジクコバチの産卵に格好の場所で、理想的なエッグカップ形をしていた産み付けた卵の上を保護膜まで作ってくれます。これがイチジクのお返しとしてイチジクコバチへの贈り物です。
クリックすれば拡大図になります。
産卵を終えたイチジクコバチは死んでしまいます。数週間後、イチジクの実が熟すにつれてコバチが羽化します。不思議というか面白いことにイチジクコバチの羽化は、雄蜂が雌蜂より1日早く羽化します。雄蜂は羽化した瞬間から交尾を始めます。まだ羽化していない雌の保護殻に穴を開け、ペニスを差し込んで受精させます。それが終わると雄蜂は雌蜂が脱出するためのトンネルを掘ってそしてイチジクの実の中に戻って一生を終えます。そのトンネルをくぐり抜けて雌蜂は外界に飛び出し、今度は自分の卵を産むために未だ熟していないイチジクへと飛んでいきます。
 イチジクの結実時期がずれて年間を通してどれかのイチジクの木に実が成るのは、イチジクコバチが産卵から羽化までに約1ヶ月掛かるため、もしイチジクの結実時期が皆同じであれば、羽化したイチジクコバチの次の世代を受け入れる未受精イチジクが存在しなくなってしまいます。この為に、熱帯雨林のイチジクは年間を通してどれかの木に栄養豊かな実をタワワに付けることになります。そのお陰で熱帯雨林のコウモリ、猿、オウム、その他多くの小型の哺乳動物、無数の無脊椎動物、またそれらを捕食する動物たち・・・。このイチジクが熱帯雨林の生態系を支えています。
 しかし、このイチジクの豊かな結実を支配しているのは、イチジクコバチと言う小さな小さな昆虫なのです。もし、このイチジクコバチが消滅すれば、自動的にイチジクは結実できなくなり、熱帯雨林の生態系は一挙に崩壊してしまいます。

今、地球上でイチジクコバチのような花粉媒介者(ポリネーターpollinator)が謎の消滅をしています。


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1 コメント

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Unknown (あーちゃん)
2021-03-17 23:46:01
先日テレビでその様子を視聴しました。
オスが外に出た瞬間アリに食べられメスがその隙に飛んで出てくると言うのが驚きました。
まるで人間の世界のようにメスがが強い!
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