『銀行に預けたお金の利子で暮らせるようになったら、もう将来なんの心配もない、と考えがちです。そんな身分になれたら、どんなに幸せだろう、と考えるのですが、働かなくてもお金の心配がまったくないということほど、怖いことはないと思うのです。
それが、いちばん人間を変えてしまうのです。それも、悪いほうに変えてしまう場合がほとんどです。バブル経済でも、お金があり余って、それを元にして、もっともっと増やそうと考えて足をすくわれてしまった人が多いのではないでしょうか。
「負う」という字は、人が財を持って、それを頼みにしている意味を表わしているのだそうです。お金だけを頼みにするようになってしまったら、その人生は「負け」になってしまうわけです。伝教大師が「道心の中に衣食あり、衣食の中に道心なし」と教えられたのも、そこのところなのです。
自分の本業に全力を尽くして、それで人さまのお役に立たせてもらう。その働きの中にこそ、最高の安心と幸せがあるといえましょう。』
庭野日敬著『開祖随感』より
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