『私たちはいま、地球上の出来事はもちろんのこと、他の天体のことまで分かる時代に生きています。ところが、それほど物知りになった現代人が、自分自身のことについては何も分かっていない、というのが正直なところではないでしょうか。
仏教には「脚下照顧(きゃっかしょうこ)」-自分の足元を見つめよ、という教えがありますし、西洋の哲人もまた、「汝(なんじ)自身を知れ」と説いています。「現代人とは、自分のこと以外はなんでも知っている人間だ」と、皮肉たっぷりに言う人もいます。
つまり、ほかのことはなんでも知りたがるのに、自分自身のことは少しも知ろうとしないのが現代人だ、ということになりましょう。
人の欠点や失敗、スキャンダルは見逃さないのに、自分の欠点には気づこうともしないわけです。
子どもたちにしても、最近の子どもは昔の五十代、六十代の人よりも物知りではないかと思える半面、人間の心得とか、他人への思いやりといったことについては、まったく何も知らない。いや、教えられていないのです。それで友だちとどう接したらいいのか分からずに苦しんでいる子どもも多いといいます。こんな不幸なことはありません。』
庭野日敬著『開祖随感』より