『八月十五日の終戦記念日が今年もめぐってきました。あの日から早三十四年が経ったわけです。当時の日本男性の平均寿命は驚くほど低くなったという記録が残っているそうです。若く、尊い生命がどれだけ戦火に奪われてしまったことか……。
現在の私たちの繁栄は、そうした人たちの血と涙の犠牲の上に築かれていることを忘れてはならないのですが、三十四年の時の経過は、そうした記憶を次第に消し去っていくように思えます。いまの私たちは、平和にどっぷりと漬(つ)かりながら、その平和のありがたさを忘れがちなのではないでしょうか。
終戦後、日本はなんの犠牲も払わずに民主主義を与えられ、それがいまや、わがまま勝手の代名詞のようになっています。民主主義は決して完全なものではありません。しかし、かつて全体主義が日本をあの悲惨な戦争に導いたことを思うと、私たちの手で、この民主主義をよりよいものに育てていく大切さを痛感せずにはいられません。それには、国民自身の成長がなにより大事です。平和憲法さえあれば何もしなくても平和でいられるのではなく、一人ひとりが平和のために自分にできる献身を惜しんではならないのです。』
庭野日敬著『開祖随感』より