ひょうきちの疑問

新聞・テレビ報道はおかしい。
2020年のアメリカ大統領選以後はムチャクチャ

授業でいえない「公共」 7話 プラトン ユダヤ教

2024-02-17 06:53:00 | 高校「公共」

【古代ギリシア】つづき
ギリシアのところですね。ギリシアは民主主義のルーツといっても、今とはかなり違っています。民主主義のルールというのは、中学校から聞いているように、キーワードでいうと自由平等なんです。
ついでだから言うと、この二つはイクオールではない。自由と平等というのは対立概念です。「自由にしていい」と君たちにいったら、この教室の40人はバラバラになる。北に行く者、南に行く者があって、帰る者もあったり、部活に行く者があったりで、自由にしていいぞというとこうなる。ここから違うことが生まれる。
しかし平等というのは読んで字のごとく同じことをして、同じになることでしょう。違うことと同じことがイクオールなわけがないです。これは全然違うことをいっているけど、当たり前のごとく「自由で平等」な社会という。これは実はものすごく難しい。違うことを両立するというのは。自由であれば自然と平等になるか。そうならないです。自由であれば差がつきます。今の日本のように。ここ30年の日本のように格差社会になる。貧富の差が広がる。
逆に平等にしようとすると社会主義になる。でもこれは働かなくなる。さぼる人間と努力した人間が同じ給料もらったら、昔のソ連みたいに、みんな働かなくなる。
自由と平等、これはぜんぜん違うことです。とても両立しがたいことです。

古代のギリシア社会というのは自由でもない。平等はまだ出てこないです。では民主主義がなぜ成立したか。それには条件があった。それが戦争に行くことだった。ここはポリス同士が戦う社会です。給料は、とかいうと、バカタレだったでしょ。軍役の義務を果たして、初めて一人前の口が効けるんです。そういう社会です。
というか、権利義務の関係は今だって同じです。権利というのは、基本的に義務を果たした人間だけの特権から発生します。もともとは一部限定のものです。お前はこれをしたから、これをしていいと。それが広く国全体に行き渡ったときに、この権利というのが憲法で保証されるようになるけど、そこまでいくには紆余曲折のカーブをいくつも回って2000年かかる。


そういうことを今説明してるんですけど、このギリシアは戦いの世界ですけど、そこに大きな敵が現れた。これがアケメネス朝といいますけれども、ペルシア帝国ですよ。ギリシアの「シア」とか、ペルシアの「シア」というのは国のことです。イタリアの「リア」も国のことです。「シア」も「リア」も似てるでしょう。ペルシアは今のイランです。ペルシアはこんなに大きい。アテネは、ギリシアはここです。こんなに小さい。

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ペルシアがどこまで攻めて来たか。ギリシアの目の前まで来た。これは勝てないだろう、イヤやるよ、という。そして大番狂わせで勝ったんですよ。これが前490年マラトンの戦いです。この戦いが、この地図で見ると小さいけれども、この縮尺が500キロぐらいです。九州と大阪ぐらいある。この距離感で見てください。マラトンというのは、ここらへんです。アテネから40キロぐらい北にある。勝ったぞ、勝ったぞという知らせを、早く嫁さん子供に知らせたくて、一人の兵士がずっと走って知らせに行く。その距離が40キロぐらいだったから、これがのちにスポーツ化してきますね。これがマラソンです。それがマラトンの戦いです。
オリンピックだってオリンピア競技でしょ、日本の奉納相撲と同じで、裸でふんどし一つで、フルチンでやったという話ですけど、これが100メーター走になったりやり投げになったりするだけの話しです。神様に見てもらうんです。そうやってこれがスポーツ化して、今のマラソンになった。この大番狂わせで、ギリシャが勝った。

ここからです。大敵ペルシアに勝ってギリシアの古代民主政治が始まる。紀元前5世紀です。その全盛期の政治家はペリクレスといいますけれども、ここから全盛期なんです。アテネが一番華やかな頃、しかし同時に腐敗していくのもここからです。ソクラテスが死刑になったのはこの民主政治が舞台です。ソクラテスが生まれたのが紀元前470年です。全盛期で生まれる。もともと民会はあるけど、これは戦士の総会だった。将軍を選ぶためです。バカを将軍に選んだら、戦争に負けて全滅するから真剣そのものです。

しかし働かなくていい社会です。奴隷制社会です。アテネでは人口の3分の1、人口の10倍のスパルタ程ではないけれども、人口の3分の1の奴隷がいる。市民も少しは働くけれども、きつい仕事はぜんぶ奴隷がしてくれる。その奴隷制度に基づく直接民主制です。これは今とはとても違います。少なくとも奴隷は自由でも平等でもない。それが社会の基盤にある。奴隷が働いてくれるから、市民には自由な時間ができる。市民が暇なんですね。暇だから勉強もするし、話し合いもする。政治的な情報も入る。槍の訓練もする。戦さがあればちゃんと戦う。これはソクラテスも同じです。別に哲学者だからといって戦争に行かなくていいわけではない。あの人の職業は無職と書いてある。それには奴隷制度が欠かせない。

しかし、こういった繁栄のなかで、アテネが中心になって軍事同盟を他のポリスと結ぶんですよ。軍事同盟というのは、日本とアメリカの関係を見てください。思いやり予算といって、名前だけ見ると福祉関係の予算かと思うけどそうではない。これはあとで試験にも出てきます。軍事予算です。日本が提供している思いやり予算というのはアメリカへの軍事予算です。すごい金額です。それと同じように、アテネは周りのポリスからお金を集めて、デロス同盟という、世界史の教科書には出てくるけれども、軍事同盟の基金を集める。敵が攻めてきたとき、この金を使うからといって、年に10万円ずつ持って来いというけど、しかしそれを勝手に着服する。その金で、自分たちのパルテノン神殿をつくったりする。すると周りのポリスは、なんだあいつは、自分で集めて自分のポケットに入れてと。それで反アテネの機運がギリシャで高まって、あのアテネをどうにかするは、あんたしか頼りはいないとスパルタに頼む。この反アテネの中心がスパルタです。あのスパルタ教育のスパルタです。それでアテネとスパルタが対立していく。だからこのときのアテネは金銭的に腐敗している。ここらへんは今ととても似ています。

もう一つは、政治が投票で決まることです。投票で決まる。いつか言ったように、日本はここ30年間、GDPもG7で最低でしょう。賃金上昇率も最低です。今年の正月ぐらいからやっと雑誌とかで言い始めた。前々からも少しは言っていたけれど、何か言ったらいけないかなという禁句みたいなところがあって、そんなに大きく言われなかった。しかし30年間最低です。今はこういう政治です。政治がうまくいってない。

政治家が悪いとすれば、ではバカな政治家を選んだのは誰なのか。バカな国民だろうという話になる。民主主義のルールは必ずそうやって自分にはね返ってくる。ご多分にもれず、アテネもこういう衆愚政治に陥る。この衆愚の意味は、「衆」は皆の衆の衆です。衆議院の衆でもある。それが愚かになる。皆の衆が愚かになる。そうなるとの愚かな政治家がでてくる。そして民衆にウソを言う。民衆はそのウソにダマされる。政治家はホントはきついことも言わないといけないけど、甘い言葉ばかりで、善人の振りをして民衆をだまして当選する。民衆もそれに気づかない。これも今のどこかの国と同じようなことです。こうやって歴史は繰り返すんです。そういう人たちのことを扇動政治家という。民衆を扇動するんです。原語ではデマゴーゴスという。デマゴーグというと扇動政治のことをいう。デマをいうなのデマとはどこから来るか。この「デマ」ゴーゴスのデマです。今でも生きてる言葉です。あいつはデマばっかり、デマ太郎といわれる政治家もいるけど、こういう人間がいっぱい出てくる。

それでアテネとスパルタが戦う。これがペロポネソス戦争です。ペロポネソスというのはギリシャの地名です。紀元前430年から30年間ぐらい戦う。ソクラテスが生きていた時、兵隊に行って戦ったのは、これです。ソクラテスは殺されずに戻ってくるけれども、アテネはこの戦いに負けた。そこからアテネのポリス社会が没落していく。アテネがギリシアの東京だとすると、この東京が腐敗していくようなものです。こんなところにいられるかと言って、みんなアテネを捨てて、ギリシアの田舎の方、今の日本ではいえば東京から九州に、有能な人間が移動する。ここでは北方に逃げます。この北方の国が、それまでのギリシアのなかでは田舎だったけれども、急に強くなっていく。これがマケドニアです。マケドニアというのはギリシアの北方にある。(地図で)これはアテネでしょ。ギリシアでしょう。アテネでしょう。マケドニアはここです。もともとギリシアの一部です。アテネが東京だとすると、マケドニアは九州です。ここがどんどん強くなる。
そしてそこに若き大王が出てくる。これをアレキサンダーという。ギリシア語でアレクサンドロスという。東のイスラム圏になると、これは別の高校にいたとき誰かが知っていたけど、イスラム圏ではアレキサンダーを何というか、知ってますか。イスカンダルという。昔の「宇宙戦艦ヤマト」の歌に出てくるけど、これは君たちは知らないでしょうね。そういう漫画があったけど。そのアレキサンダーが、アテネなんかつぶしてやると、真っ先につぶすんです。これでアテネ崩壊です。


そして、ものにはついでだといって、征服を続ける。どっちに行くか。もし西の方に行けば、そこではローマが繁栄し始めてます。そうなればローマはつぶれてますけど、アレキサンダーそっち(西)に行かずに、逆に東に行った。東方遠征です。そしてここ(地図)まで来た。インドの入口まで。インダス川というのは「インドの川」の意味です。アルファベットで書くと分かりやすいけれども。
するとその遠征に危機を感じて、今まで国がなかったインドに、初の王朝マウリア朝というのができたりします。これが紀元前4世紀です。アレキサンダーが東方遠征に向かったのが前334年です。仏教のおシャカさまはすでに生まれてます。
その過程でギリシアでは民主政治が崩壊していく。あとはこのアレクサンドロス大王の東方遠征になっていくということです。

ソクラテスが生まれたのが前470年です。そして青年を惑わしたという罪で死刑になったのが前399年。アテネがペロポネソス戦争(前430年~)に負けたころです。この間の前427年に、弟子のプラトンが生まれています。ソクラテスのことを書いていくのは、弟子のプラトンです。プラトンは次に出てきます。そのプラトンのさらに弟子格に当たるのが、アリストテレスです。マケドニア出身です。頭が良くて、アレクサンドロス大王の教育係をした人、前384年にアリストテレスが生まれます。このアリストテレスは九州のようなマケドニアで生まれて、東京にあたるアテネに行きます。でも変なところだと思う。そこでソリが合わずにアテネを追放される。そしてマケドニアに戻る。その後、マケドニア王のアレクサンドロスがすぐアテネを潰していく。そういう流れになる。でもアテネは美化して語られています。
教科書にも衆愚政治のことも書かれていますが、あまり強調されません。でも民主政治には衆愚政治がつきものです。民主主義は外側からつぶされるんじゃない。民主政治が腐るのは内側からです。それは2000年も前からが分かっていることです。これは我々日本人にとっても人ごとではありません。
ここではまずこの3人を覚えてください。ソクラテス、プラトン、アリストテレス。
アレクサンダーは、さらにアケメネス朝ペルシアを征服して大帝国を建設していきまが、すぐに崩壊します。


【プラトン】
ソクラテスを受け継いだ哲学者がプラトンです。前427年生まれです。ペロポネソス戦争の頃です。この世界は神様の力が非常に弱いんですね。王様が殺されたりすると、王様が拝んでいた神様も一緒に殺される。それがこの地域の特徴です。そういうことが繰り返されると、神々が零落していくんです。それで神様への信仰よりも、現実的な人間の考えを大事にするようになる。そこで理性が発達する。自分の理性で考える。自分の理性でとらえるのが本当の世界だという。そしてこれをイデアという。日本人から見ると、難しい言葉のように思いますけれども、普通のギリシアのおじちゃん、おばちゃんたちが使っていた言葉です。イデアはアルファベットで書くと、Ideaでしょう。英語読みしたら何ですか。アイデアでしょう。これはアイデアのことです。
このイデアの最初の2文字のIDというのがIDカードなると今の自己証明書になる。アイデンティティのIDもそれです。アイデンティティのアイディアです。つまり、アイデアがない人間は、自分で自分を考えない人間は、アイデンティティを確立できない。人間は、人のことを考える前に、まず自分のことを見つめないといけない。考えきれないと、人間はウソをつくでしょう。そのウソの付き方は防衛機制といって、すでに言いました。19世紀の心理学者のフロイトが言ったことです。いろいろな防衛機制がある。合理化とか逃避とか。


人はなぜウソをつくのか。人がなぜ人にウソをつくか。そうじゃなかったでしょう。人はまず自分に対してウソをつく。自分の心に対してウソをつくんです。そしてそれに気づかない。だから人にもウソをつく。気づかないまま、防衛機制とか白昼夢とか、ごまかしながら、どうにか自分の心のバランスが崩れないようにしていく。半分いい面があるけど、それをやりすぎると、あいつはウソつきだとなる。あいつの言うことは耳半分で聞いておけと。いやこれは人のことではなくて、みんなやるんですよ。自分のこととして聞いてください。ああオレがやってるのはコレだなとか。こんな自分を見つけるのは非常に嫌なことです。自分で自分の心を知るというのは。オレはこんな奴なのかと思うのは。


今いってるのはイデアのことです。このイデアを求める心、そこにたどり着きたいと思う心、これがなんとエロスなんです。今エロスというと、エロ・グロ・ナンセンス、それとは全然違う。今のエロスというと、変態みたいな、いやらしいことでしょう。もともとはそうじゃないです。エロスというのは。

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この絵が、年取ったプラトンです。右の若い方がアリストテレスです。象徴的です。どこを見るか。まず二人の手です。プラトンは上と言った。アリストテレスは下と言った。イメージはこれです。イデアは上にある。心にある。アリストテレスはこれと違って下です。今でいう自然科学的・理系的な発想をしていく。プラトンは文系的というか、よくプラトニック・ラブというでしょう。非常に美しい男女の恋愛を、プラトニック・ラブと。プラトニックとは、どういう意味ですか。プラトン的なと言う意味です。プラトニック・ラブというのは、このプラトンから来ます。

政治についても言っています。彼は民主主義の時代に生まれたけど、自分のお師匠さんのソクラテスは、この人が若い時に、青年をたぶらかした罪、惑わした罪で死刑になった。弟子から逃げませんかと言われても、人が死ねというんだったら死んでやるよと言って、毒杯を仰いで死んでいった。そういう話を書きとめたのがプラトンです。

だからプラトンはあまり民主主義がいいとはいってない。いい政治は民主政治ではない。哲人政治だといった。哲学者のような、よく考える人がやる政治がいいと言った。しかもその哲人には、人間としてのがないといけないという。師匠のソクラテスは、これをアレテーと言った。日本もそうで、最高の日本人の褒め言葉は、あの人は人徳があるとか、人徳があるから人が集まってくるとか、そんな言い方をする。これは最高の褒め言葉です。
人徳がある人というのは、そういうことを含めてよく物事が分かって、徳があって、そういう人を哲人として、彼はこういう人による政治が最高なんだと言った。ということは、民主主義を少なくとも褒めてないです。
ただ、この哲人をどうやって選ぶか、これは謎です。これが分からない。ただ中国人も同じようなことを言う。中国人も、王たるものは、ただ知識があるとか、頭がいいとか、お金を持っているとか、それだけじゃなくて、この徳が必要なんだという。そういう点では昔は共通していたんです。


ヨーロッパは一言でいうとこういう徳のある政治に失敗したんです。ロクな王が出てこない。しかも奴隷を認める社会です。それで民衆の信用を失う。だから人による支配はやめたという。これは何ですか。今の社会はこれでしょう。法治主義でしょう。すべて法律で決まってる。憲法で決まっている。これがいいんだと言う。
ヨーロッパは、徳知主義という、徳のある人間による政治をやめた、というより諦めたんです。江戸時代の日本はそうじゃなかった。「大岡裁き」とか言うでしょう。知ってるかな。人を見て裁く。おまえは貧しいなかで一生懸命働いていた。確かにりんご1個盗んだことは悪いことだが、それは病気の母親に食わせるためだったから、罪は問わないとか。そういうのが日本人好みなんですけれども。法でしばったら、リンゴ1個につき懲役10年とか、決まった通りしないといけない。善人とか、悪人とか関係ない。そういう社会に変わっていく。


【アリストテレス】
次にアリストテレスです。マケドニア生まれで、王子のアレキサンダーを教える。アレクサンドロスでもいいです。この人は、質量的なものが大事なんだと言った。物質的なもの、これが大事なんだと言って、非常に自然科学的な発想をしていく人です。
このアリストテレスは、政治的には何と言ったかというと「人間はポリス的動物である」と言った。この言葉は有名です。ポリスというのは都市国家です。国家なんです。これは前の教科書もそうだったけど、社会的動物であると変わった。でも50年前、我々はこう習った。「人間は国家的動物である」と習ったんです。最近、この国家という言葉を使いたがってない。国家ではなくて、社会という。しかしポリスは都市国家という。ポリスは社会じゃなくて国家の一種なんだと私は習ったし、今でもそう思ってます。しかし教科書にこう書いてあるあるから、社会的動物であるということです。
ここでギリシャは終わります。






【ユダヤ教】
次にユダヤ教に行きます。ここは宗教です。世界の人口は70億人です。キリスト教徒は何億人ぐらいか。ちなみに仏教徒は5億人です。日本人も含めて。神道は日本人だけです。1億人です。仏教徒は5億人。東南アジアのタイとか含めて。それに対してキリスト教徒は24億人もいる。
日本は前に言ったように八百万神で多神教です。でもキリスト教は一神教です。神様は一つしかない。それ以外の神はぜんぶ邪教です。邪教を信じる人間は魔女裁判で縛り首です。ヨーロッパの歴史では、こんな裁判がいっぱい起こる。フランスのジャンヌ・ダルクだって、英雄として祭り上げられたかと思うと、最後には邪教を信じる魔女だといって吊されていった。ガリレオ・ガリレイだって、それでも地球は回るといって、太陽が回っているんじゃない、地球が回っている、と言っただけで裁判にかけられた。キリスト教の価値観にあわないものは邪教にされる。つまり他の信仰を許さない。これが一神教です。この一神教にキリスト教の他にもう一つあって、それがイスラム教です。これは次に言います。イスラム教徒は20億人です。この二つの一神教で軽く世界の人口の半分を超えている。だから教科書に取り上げてある。

日本人の考え方と、どっちがいいとか言っているんじゃないですよ。これはとても違うんです。これをすぐに理解するのはちょっと難しいという。でも教科書に書いてあるのはこれだけです。でもキリスト教はそれ単体で突然生まれたんじゃない。その前段がある。母体がある。その前の宗教をユダヤ教といいます。

このユダヤ教というのがまた複雑で、これはユダヤ人の宗教です。ユダヤ人は国家を持たずに2000年間、世界をさまよってきた民族なんですが、今から80年前に初めて2000年ぶりに国をつくったという民族です。でもこの話、これだけでは分からないでしょう。これには3000年の歴史があって、これを3分で言うことは私にはできない。
80年前に国が2000年ぶりにできた。これがどこですか。中東のどこですか。イスラエルですね。世界でいまも一番、爆弾が落ちているところです。民族紛争があって、壁でさえぎられて、紛争の絶えないところです。今も世界のヘソです。そのイスラエルです。そこで発生したしたのがユダヤ教です。それを母体としてさらにキリスト教が生まれます。

この信仰は独特で、世界初の一神教と言っていいでしょう。ここで一神教が発生する。世の中に神様は一つしかないと。この神をヤハウェという。これは読み方が分からないけど、いろいろ書いてあって、ヤハウェとか、ヤーヴェとも書いてある。ヘブライ語、つまりユダヤ教の言語というのは、文字に母音がないんですね。YHWH、子音だけでこう書いてある。何と読むか、母音がないから分からない。たぶんヤハウェだろうということです。世の中の神はこれだけです。いや他の神様、八幡さまとか天神様とか、いっぱいあるじゃないかと日本人は思う。でもこれらはすべて邪教になります。
こんな奴は生かしておけない、人間じゃない、だから殺せるんです。邪教を信じるのは人間じゃないから、犬や猫と同じように殺していく。犬と猫を殺しても罪にはならない。だから邪教を信じる人間はそれと同じだから殺していく。インディアン、アメリカのインディアンなんかもそうです。アメリカの黒人はアメリカの原住民じゃないですよ。アメリカにもともといた人たちはインディアンで、私たちと同じ黄色人種です。彼らはどんどん殺されていく。コロンブス以後は、そういう歴史がある。

ユダヤ人は流浪の果てに、それに耐えながら、こんな厳しい思いをしながら、絶対自分たちを救いに来てくれるくれる神が出てくる、という信仰を持ちます。これを救世主という。これをユダヤ語でメシアといいます。ついでに言っておくと、ユダヤ語ではメシアなんですけれども、ギリシア語ではこれをキリストというんです。こうなると次のキリスト教の話になります。こうやってずっとキリスト教と関係してくるんです。

神の教えと言うのは、我々日本人は神様というのはあの世を支配するものだと思ってますけれども、一神教はあの世を支配する神様だったら、この世も支配するんです。この世のルールはぜんぶ神様が決めていきます。これはイスラム教もそうです。それが経典の「クルアーン」に書いてある。だから1日5回拝めと書いてあったら、イスラム教徒はちゃんと1日5回拝む。いやウチに帰ってから拝めといっても、イヤ何時に拝め、とちゃんと書いてあるからそうするんです。そういう決まりを律法という。

このユダヤ教が最初にできたのは、話せば長くなるけど、彼らがエジプトに住んでいたときに、奴隷だったから嫌になって脱走する。それ率いたリーダーをモーセといいます。この人が脱走の途中で突然、神の言葉を聞いて、10の決まりを聞いたんです。この10の戒めをモーセの「十戒」といいます。
この第一番目に、オレ以外の神を拝むな、と書いてある。言葉は違うけど、正確には資料集を見てください。これが第一番目にくる。次に神様の像を彫るなという。いやキリスト教はキリストの像を彫って拝んでいるじゃないか。そうなんです。キリスト教はこれを破ってます。だからユダヤ教とキリスト教は非常に仲が悪い。なぜ偶像崇拝がダメか。神聖なものは恐れ多くて、とても人間が形にできるようなものではない、それは恐れ多いことなんだ、という信仰があるからです。しかしキリスト教はこれを拝みます。そこらへんがキリスト教はなかなか一筋縄ではいかない。

ユダヤ教には聖典があります。日本の神道には教えがありません。パンパンと手を叩いて、ただ純真に拝みなさい、です。しかしユダヤ教にはちゃんと本があります。これを旧約聖書といいます。1冊かと思って買ったら20巻もあった。とても読めない。ちょっと読んでみるかと思って1巻を開けたら10分で眠ってしまった。スヤスヤと深い眠りに陥ります。とても気軽には読めないです。しかし解説書で読むと、最初に出てくるのが「アダムとイブ」の話です。これは知っているでしょう。食ったらいけないリンゴの実をイブが食ったから、楽園を追放されたと。


そこまではいいけど、そこで神はいうんです。おまえたちの子孫をずっと呪ってやると。ウワー、やめてよ、という話です。ユダヤ教では人間の祖先は、このアダムとイブなんです。私たち人間の祖先は、楽園を追放された罪人なんです。そしてその子孫は未来永劫に呪われるんです。すごい話です。だから原罪、人間にはもともと罪がある、ウワー、やめてよ、という話です。私のご先祖さんがこういう神様だったら、とても拝めようにないけど、聖書にはそう書いてある。そういう人間観や世界観がユダヤ教の根底にはあります。

では人間としての正しさとはどこにあるかというと、アダムとイブは神様ではないですよ、ヤハウェという、人が見たこともないような神様がいて、その神様が我々人間の決まりを作ったんです。どうやって作ったんですかと、聞かないでください。私には分からないから。そういうことは、モーセに聞いてください。彼が神の声を聞いたと言うんだから。ホントですかと言わないでください。私には分からないです。彼らはそう信じてきたという話を言ってるだけです。そしてこういう人たちが24億人もいるということを言ってるだけです。そういう信仰のない私には分かりません。そして神が作ったこの律法を決まりをきちりと守れという。
守らない人間は地獄に落ちると。彼らを救わなくていいのかというと、当然だろうという。救われるのは信仰を守ったオレたちだけだと。ユダヤ人だけだと。これが宗教上の約束になっている。これを選民思想といいます。だからこの世で救われるのはユダヤ人だけです。これが選民思想です。ユダヤ人以外にも全世界に人がいるけど、それは知らない。
これは何の話しかというと「ノアの方舟」の話があるでしょう。善良なノアがいて、大水が起こるから、彼にだけ事前に教えて、そこにお猿さんとか猫さんとか集まって、助かった話ですけれども、子供に聞かせるような易しい話になっているけど、ではその方舟に乗らなかった他の人はどうなったのか。その人たちは死んだんでしょ。ぜんぶ死んだんです。だから人類は全部このノアの子孫だとなっている。これが選民思想です。

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こういう話の舞台になる場所ですけど、ローマではないです。イスラエルです。さっきアテネを言ったけど、アテネはギリシアでしょう。このあとキリストさんが生まれて、キリストさんはどこの国の人かと聞くと、イギリス人と答える人が何人かいる。少し勉強した人で、古代ローマの人だという。ちがう、ちがう。イエス・キリストさんは、ここイスラエルで生まれた人です。だからヨーロッパ人ではないです。今の舞台のイスラエルはここです。これを拡大したのが下の図です。戦後の地図です。舞台はここです。ヨーロッパではない。ユダヤ人の活動もこのイスラエルです。キリストさんもここイスラエルです。このキリスト教がグルグル回って波及してローマに至る。そういう流れになる。

さっき言ったけれども、このユダヤ人が2000年間、国を持たずに、、、、この国を持たないということがまた日本人には分からないですよね。例えば、君たちに子供ができて、そのときに日本が滅んで、その子孫が日本という国がないまま、世界を流浪して2000年後、オレたちは日本人だと思うと思いますか。普通は思わないでしょう。こんなことができたのはユダヤ人だけです。そして約2000年ぶりに、戦後の1948年にユダヤ人がイスラエルを建国した。
では2000年の間に、ここには誰も住んでなかったのかというと、ちゃんとアラブ人が住んでいるんです。おまえたちは、どけ、という。だから彼らアラブ人は難民になる。だから戦争が起こる。これがアラブとイスラエルの対立です。しょっちゅう爆弾が落ちている。今も世界のヘソです。

このユダヤ人の歴史を言います。


【ユダヤ人の歴史】
そういう長い話になるんですけど、そのことを補足します。ユダヤ人はヘブライ人ともいいます。この人たちはもともと遊牧民です。ラクダに乗っている人たちです。迫害されて社会の底辺にいた人たちで、一時エジプトに行っていた。この地域は島国の日本と違って、言葉が違う顔つきが違う異民族が、東西南北、あっこっちからくるんです。すると、おまえたち、どけ、となる。それで戦う。勝てばいいけど、負けたら殺される。または逃げる。そうでなかったら奴隷になる。それで奴隷のように扱われて、エジプトに行っているんです。エジプトの東がメソポタミアといって、古代文明の発生地です。非常に近いです。ここがメソポタミアで、今のイラクです。エルサレムはその西のここです。九州と大阪ぐらいの距離があります。今このエルサレムにいて、さらにエジプトに行った。

こういったところでは民族が興亡して、都市国家がつぶれていく。滅ぼされていく。王がつぶれていく。そうするとそれといっしょに神様も殺されていくんです。国もろとも神が滅びます。そういう神殺しがけっこう多くて、トーナメントで優勝したチームの神様だけが生き残るような構造があるんです。そういう構造が一神教が生まれる母体です。戦いの多いところは王が殺されると、国が滅んで、さらに神の殺害も起こっていく。そういう地域で、彼らユダヤ人がエジプトで見たものは何か、ということになります。
では終わります。



2 コメント

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マルテンサイト千年ものづくり (グローバルサムライ鉄の道)
2024-08-13 18:57:39
最近はChatGPTや生成AI等で人工知能の普及がアルゴリズム革命の衝撃といってブームとなっていますよね。ニュートンやアインシュタイン物理学のような理論駆動型を打ち壊して、データ駆動型の世界を切り開いているという。当然ながらこのアルゴリズム人間の思考を模擬するのだがら、当然哲学にも影響を与えるし、中国の文化大革命のようなイデオロギーにも影響を及ぼす。さらにはこの人工知能にはブラックボックス問題という数学的に分解してもなぜそうなったのか分からないという問題が存在している。そんな中、単純な問題であれば分解できるとした「材料物理数学再武装」というものが以前より脚光を浴びてきた。これは非線形関数の造形方法とはどういうことかという問題を大局的にとらえ、たとえば経済学で主張されている国富論の神の見えざる手というものが2つの関数の結合を行う行為で、関数接合論と呼ばれ、それの高次的状態がニューラルネットワークをはじめとするAI研究の最前線につながっているとするものだ。この関数接合論は経営学ではKPI競合モデルとも呼ばれ、様々な分野へその思想が波及してきている。この新たな科学哲学の胎動は「哲学」だけあってあらゆるものの根本を揺さぶり始めている。こういうのは従来の科学技術の一神教的観点でなく日本らしさとも呼べるような多神教的発想と考えられる。
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ハイブリッド哲学 (フリクションコンポーネント)
2024-08-13 19:04:01
「材料物理数学再武装」といえばプロテリアル(旧日立金属)製高性能特殊鋼SLD-MAGICの発明者で社会実装にも成功されたの方の大学の講義資料の名称ですね。番外編の経済学の国富論における、価格決定メカニズムの話面白かった。学校卒業して以来ようやく微積分のありがたさに気づくことができたのはこのあたりの情報収集によるものだ。ようはトレードオフ関係にある比例と反比例の曲線を関数接合論で繋げて、微分してゼロなところが最高峰なので全体最適だとする話だった。同氏はマテリアルズ・インフォマティクスにも造詣が深く、AIテクノロジーに対する数学的な基礎を学ぶ上で貴重な情報だと思います。
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