ひょうきちの疑問

新聞・テレビ報道はおかしい。
2020年のアメリカ大統領選以後はムチャクチャ

授業でいえない「公共」 35話 日本銀行の金融政策

2024-03-08 07:37:28 | 高校「公共」

2023.11.2

前回の授業では金本位制とか金融機関のことを話していました。これは現代社会だから、今は公共という名に変わりましたけど、もともとは現代社会ですから、評価が固まってないここ20~30年間で起こったことも出てきて、それは新聞レベルではあるけど、高校生レベルから見ると、昔から見るととても内容が難しくなってきている。イレギュラーな時代になって、基本的なことをやれなくなったからです。

そういう話の続きなんですが、9月から国会が始まった。政治面はまだやってないですけど。国会中継をテレビでやってないから、ネットで国会中継を見ていたら、こういうのが出てきたんです。やっぱり国会が始まらないと分からない。なぜ国会中継をしないんでしょうか。
今あってる国会、9月から始まった国会、これを臨時国会といいます。これは臨時なんですよ。では本物はいつあったのかというと、もう今11月でしょう。もう終わったんです。1月から6月までで。1月から6月までを、通常国会というけど、これが本物なんです。しかし今年はテレビ放送がなくて、見れなかったでしょ。なかったんですよ。でも例年はあるんですよ。でも今年はなかった。NHKは放送しなかったんです。

最近の日本は不思議な国で、相撲中継はやっても国会中継はしない。それで「みなさまのNHK」といっている。その国会中継がなかったんです。それが異例だった。なぜ国会中継がないのか。報道されないことに気づくというのは結構難しいことです。我々は仕事があるからなかなか全部は見れないけど、時々NHKを見たら国の政治がどうなっているかが分かっていた。しかし今年はテレビで放送しなかった。だから見れなかった。その間にも、マイナンバーとか大揺れに揺れて、河野太郎がマンナンバー大臣で、マイナンバーを作ったら2万円やるというキャンペーンみたいなことまでやっていた。その2万円は我々の税金です。しかしどうも雲行きは怪しくなってきた。大もめなんです。でも放送されなかった。この本当の国会、通常国会が今年は放送がなかった、これが今年の一番の問題ですよ。通常国会は常会とも言って、二つの言い方があるけれど、今あっているのはそれとは別の臨時国会です。本物は放送しなくて、臨時国会を放送し始めたというのは、おかしいことです。しかも時々しか放送しない。

このプリントは昨日の国会資料ですが、私もずっと見てるわけじゃないけれども、あることをネットで検索していたら、こういう国会質疑があった。それはYouTubeでも見れます。これは分かりやすい。それが今配ったプリントです。こういうのが昨日、国会で取り上げられていました。

【非正規雇用】
1番目のグラフです。これはモノの本には書いてあることですが、しかし新聞テレビでこういうことを取り上げたのを、私は初めて見たんです。モノの本には書いてあるけど、しかし新聞やテレビがキチンと報道しない。だから普通の人は知らない。私は仕事だから知っているといっても別に自慢にはならないけど、こんな分かりやすいことをなぜ報道しないのかとズッと疑問に思っていた。新聞で言わないから、ある国会議員がついに国会で取り上げて、放送された。
これは非正規雇用の問題です。この雇用問題は労働問題のところでやるはずですけど、まだ政治分野もやってないから、このあたりは飛ばそうかなと思っていましたが、いい機会だからここでやります。
20年前から何が変わったかというと、非正規雇用というのが当たり前のように世間に広まった。でもこれはもともと禁止だったんです。それはアルバイトとかパート労働は昔からあったけど、ここでの中心は派遣労働です。派遣労働とは、雇い主と働いている会社が別ということです。こういうイレギュラーな契約は、従来はしたらいけなかった。それができるようになった。
これは教科書にも書いてあるけど、今までは一般的に終身雇用だった。今でもそうです。一度大学を出て働いたら定年まで勤める。しかしこれが批判的に教科書には書かれている。そして年功序列は古くて、これからは能力主義だ、みたいなことが書いてある。そういう雇用形態に変わってきた。そうやって非正規雇用が増えてきた。


非正規雇用の反対は何か。君たちは働いたことがないからピンとこないかも知れないけど、いわゆるサラリーマンは普通は正規雇用だったんです。1か月の給料というのがちゃんと決まっていて、有給休暇もある。健康保険や年金の負担も企業が援助する。
逆に一番不安定なのは時給労働です。いま新聞では最低賃金のことばかり言ってるけど、この最低賃金というのは時給労働です。時給労働がダメだとは言うつもりはないけど、このクラスの人は時給労働する人は少ないでしょう。多くの人は正規雇用になる。本当は最低賃金よりも、その基本給が大事なんです。ベアと我々は言うけど、ベアをいくらにするか。毎年5月に春闘があるけど、そこで給料が上がるかどうかなんです。その給料が30年間ほとんど上がってない。それどころか非正規雇用のこのグラフを見ると、これは1990年からの30年間のグラフですが、非正規雇用がどんどん増えている。それに対して実質賃金はダダ下がりです。このグラフはハッキリとそれを示しています。


しかし一方では、これからは終身雇用ではなくて能力主義だという考えが、この30年間に出てきた。教科書にもムニャムニャと、そんなことも書いてあるけど、30年間で一応結論みたいなものが見えてきた。私も20年前は、こういうことを教科書通り言っていた。これからの働き方はこうなると。教科書に書いてあることを。しかしその結果、30年たって日本のGDPは上がらない。給料も上がらない。雇用は不安定になって、実質賃金はどうかというと、逆に下がっている。上がったのは税金だけです。そのころは消費税は5%だった。

景気が悪い時は、普通は税金は下げるんです。景気が悪い時はそうです。例えば、このクラスが一つの経済圏だとすると、君たちのお小遣いが1日100円から50円に減らされたとして、その時に私が税金みたいにクラス費を100円取っていたとして、景気が悪い時は、私はクラス費を100円を200円に上げたりはしないんです。逆に100円を50円に減らすんです。しかしそういう時に、逆に日本の税金は上がったんです。これは知ってるでしょう。
君たちは消費税が5%の時に生まれているけど、それが8%になった。そして4年前にさらに10%に上がった。安倍晋三さんは、約10年近く総理大臣をして、2回も消費税を上げた。アベノミクスといいながら、景気を回復するぞと言ったけど、実際には消費税を上げた。
その結果、バブル崩壊から30年経ってどうか。このグラフは非常に分かりやすいです。マスコミではあまり言わないけど。これは国会資料です。昨日の参議院予算委員会の国会中継の資料です。11月1日、昨日です。国会に出た資料がもし間違っていると、国会議員は責任問題になるから、ヘタなデータは出せない。

【消費税と法人税】
次の2番目のグラフです。ここ30年間、日本の景気はずっと悪い、ということは言いました。それで国民の生活が苦しくなっているんです。では日本の大企業はどうかというと、逆に利益は増えている。普通の考え方は、企業の利益が増えれば、そこで働いてる人の給料も増えていくんです。でもそうなってない。企業利益は増えているけれども、逆に我々の給料は少なくなっている。それがタマタマかというと、しっかりと政府の政策に沿っている、ということを国会議員が言った。

これはどういうことか。我々にも税金があるように、企業にも税金があります。その企業の税金が減っている。企業の税率は法人税です。これは、ピーク時で43%ですが、今は23%です。半分近くに法人税率が下がっている。それとは逆に、個人からの税金はどうか。これが1989年からの消費税です。これが約30年間の推移です。最初は1989年、もともと消費税はなかったんです。それまでは。私が君たちの頃までは、消費者から税金を取るなんてなかった。税金は給料から取るものだった。君たちはまだ収入がないでしょう。収入がない者から税金をとるという発想は、もともと日本にはなかったんです。お父さんたちは働いてるから、10万円の給料もらえば税金をとられるというのは分かるけど。高校生の君たちのなかに、オレは税金を払ってない、という人がマタにいるけど、そうなんですか。君たち税金を払ってますよね。何か買うたびに消費税を払ってます。

それが1989年にでてきた。最初は3%でした。しかしこれはだいたい気づかれていた。最初は3%にして、絶対上げませんと言いながら、30年後にはヨーロッパ並みに20%近くなるぞと。そういう政治的手法です。政治は結構ズルいんです。3%ぐらいならいいかなと思っていると、あとでどんどん上げていく。そういう話が最初からあって、その8年後の1997年に5%に上がった。この間、日本の経済は不況にあえいでいたけど、それでも上げた。
そして2013年から安倍さんがアベノミクスというのをやり始めて、あのアベノミクスから10年たって、今はどうか。安倍さんは暗殺されたけど、経済が上がっているか。上がってないです。アベノミクスとは、首相の安倍さんをもじってアベノミクスと言ったんです。アベノミクスが何かというのは、これも難しいけど、教科書で言わないといけないようになっているから後で言います。しかしその間に消費税を5%をさらに8%に上げた。それが2014年です。それからたった5年後の2019年にさらに10%にした。つまり消費税率を5%から10%に倍に引き上げたのは安倍晋三さんです。


逆に企業の法人税率は減っている。国民の消費税率は上がる一方、という形になっている。グラフを見ると、ほぼその消費税引き上げのタイミングにあわせて、法人税を下げたんですね。消費税を上げる。その代わりに法人税を下げる、ということが見て取れる。政府は否定しているけど、だいたいこのタイミングです。つまり、法人税を下げて国家の税収が減る代わりに、国民からの消費税を上げたということ。これは時期的にほぼカブるんです。これが昨日の国会質問でした。こういうふうに分かりやすいことを、分かりやすく言うことが政治を理解するうえで大事なんです。それが分かるのが国会中継だったんですけど、今年はそれがありません。今は簡単なことを難しく言う政治家が多いのが現実です。人は何かを隠したいときにそういう言い方をします。私もしゃべる仕事をしてますから、それはよく分かります。

【企業の内部留保】
3つめのグラフは、日本企業の内部留保についてです。内部留保というのは、個人でいうと貯金です。企業の内部留保が過去10年で139兆円が522兆円に、倍以上に膨らんでいる。大企業は儲かっているということです。利益がグーっと上がっている。
そして実際に、企業が銀行に預けている預金、取引銀行に預金してる額も、過去10年で135兆円から295兆円へと倍以上に増えている。最近ここ10年ばかりのうちに急に上がっている。そういう資料が出たところです。
時間がなくて、授業では消費税のこともあまり言えないかもしれないから、一つには消費税のこと、それから非正規雇用についての考え方、これをここで言いました。


何十年も前、私が君たちぐらいの時から、雑誌にトラバーユとか、君たちは知らないと思うけど、そういう雑誌が出て、どういう雑誌だったかというと、終身雇用というのは古臭いぞ、転職がいいぞと、そういうことを勧める転職雑誌みたいなものが非常に流行ったんです。1980年代から1990年代にかけて。これに乗って定職につかなかった人を何人か知っているけど、やはり生活が苦しいです。だから流行っていることが本物かどうか、よく見ておかないといけない。それは1年ごとに仕事を変えたりして、仕事自体は飽きもしなくて、おもしろいかもしれないけど。


終身雇用というのは、1人の時には10万円でも生きていけるけど、結婚して子供ができたらそれだけでは足りなくなる。その分だんだん年功といって給料が上がっていくんです。スライド式に。
それに対して時給制度は、20歳で働いても時給1000円だったら、60歳で働いても時給1000円、これが平等だという考え方です。それは独り身で独身を貫くんだったら、それでもいいかもしれないけど、そういう働き方を望んでいる人は少ないです。もっと待遇のいい働き方を望む人が多い。しかしそれが実現できないところが今の現実の問題になっているんです。今の日本の経済は厳しい。あまり詳しく触れられるかどうか分からないけど、一番国民に関係するのは消費税のことですね。もう一つは派遣労働です。




【日本銀行の金融政策】

それでは教科書に戻ります。前回は金利のことを言ってました。銀行預金は金利がつく、利息が付く。景気が良い時にはどうなるか、景気が悪い時にはどうなるかと。もともとはこれが日本銀行の金融政策の基本だったんです。なぜそれが通用しなくなったか。30年も不況が続くなんて国は日本だけです。景気が悪いといってどんどん金利を下げていくと、ついにほぼゼロまで来たんですね。もうこれ以上は下げられないところまで来た。だから、もうこの手は使えない。この低金利が20年以上続いている。

だから、この金融政策は分かりにくい。教科書事項だけど。政府がやっている財政政策のほうが、国民の税金を集めてそれを使ってるから、分かりやすいんです。しかしこの金融政策は何も無いところからお金が発生したり、市場という目に見えないところで、何やかやと売りったり買ったりして、どこでやっているのか分からないから、本当に分かりにくいです。しかしこの金融政策のほうが政府の財政政策よりも影響力が大きい。その金融政策は日本銀行がやってる。この日本銀行というのは別に国家機関ではなくて、やっている人も公務員じゃなくて、ほぼ民間機関です。日本銀行の株式も君たちだって買える。誰だって買えます。

この銀行の親玉の日本銀行というのは、銀行の銀行です。日本銀行に我々は預金できません。日本銀行は福岡には支店があるけど、我々は日本銀行にめったに行かない。行くのは誰か。民間銀行の人です。銀行がお金を預けたり借りたりするだけで、我々とは関係ないけれど、銀行の人がお金を預けたり、貸してくださいと頼むところが日本銀行です。だから、どっちが命令権をもっているか。強いのはダントツに日本銀行です。普通の銀行にとっては、日本銀行さまさまです。日本銀行さまがこう言ったら、そうしないといけない、という感じです。それでどういった事をするかというのが次です。

日本銀行は何をしなければならないか。日銀がやっていることを金融政策といいます。では何のためにこれをするか。まず物価の安定です。最終的には経済の安定ですけど、そのためにまず物価を安定させる。物価が高くなりすぎないように、安くなりすぎないように。そして経済を安定させて、君たちを安定して就職させる。これを雇用の安定といいます。経済が安定していれば努力して良い企業に就職できるけれど、経済が悪くなるといくら努力しても個人の力では就職できないということになる。14年前のリーマンショックとか、その前の1990年のバブル崩壊の時とかはそうでした。

日本銀行の金融政策のポイントは一点です。通貨の量を増やすか、減らすかです。日本銀行が港を作ったり、高速道路を作ったり、そんなことはしない。ただ通貨の量を増やすか、減らすかです。それだけだったらパソコンをポンと押すだけで、1億円、1兆円、いくらでもすぐ入るんです。それだけで効果は絶大です。その通貨の量をマネーストックという。日本語でいうと通貨供給量という。数字を入力して、パソコンのリターンキーを押すだけですが、それを間違うとバブルになったり恐慌になったりして大変なことになります。

基本はどうするか。不景気の時には、お金が足りなくて困ってる人が多いから、通貨供給量をどうするか。増やすか、減らすか。増やします。つまり通貨増大策をとる。今は景気が悪いから、政府が給付金として国民に10万円配ったりしたでしょ。あれは本当は禁じ手というか、そんなことしたらいけないことです。ちゃんとした金融ルールは貸して返すことです。さらに金利を上乗せして、どのくらい返さないといけないか、そういうルールでやらないといけない。政府が直接国民に支給するなんてことをやりだしたら、初めから税金を取らないことが一番簡単です。だからタダで給付金を配るということは、経済政策としては禁じ手なんです。めったにやらないことです。それを政府がやってるということは、それほど景気がうまくいってないということです。

逆に景気が良い時、好況の時には、お金を持ってる人が多くて、お金が余ってるから、お金の量は増やすか、減らすか。これは減らすんです。つまり通貨抑制策をとる。これを日銀の用語でいうと、お金を増やすことを金融緩和策という。逆にお金の量を減らすことを金融引締め策といいます。こういう言い方をします。


【金利操作】
今は異常事態です。そういう不景気が30年間も続いています。本当は、この金融政策の方法は、30年前のバブルが起こる頃までは、今の教科書の最後に書いてある金利操作がメインだったんです。本当はこうでないといけない。だから最初にこれを説明します。しかし今は死んでいる方法です。それが金利操作です。金利とは利息です。今は死んでますが、本来はこれだったんです。
我々の目には見えないけど、日本銀行と民間銀行の間で、お金を貸したり、預かったりしています。何十兆円というお金をやりとりしてます。お金を預けたら、やっぱりタダじゃないから金利がつきます。その金利をいくらにするか、逆にお金を貸したらその金利をいくらにするか、これはすべて日本銀行が何%にするか決めていきます。そしてそのレートを公定歩合と言っていました。そしてそれに伴って一般銀行が貸し出す金利も連動して決まっていたんです。でも今はこの金利操作は死んでるから、ほとんど効いていません。

なぜ効かなくなったのか。本当は、私が近くの民間銀行に100万円預けたら、1年で5%~6%の金利がつくのです。しかし景気が悪いと、金利は上がるか下がるか。景気が悪いときには、お金を増やしたいから、お金を借りやすくする。だから金利は下げていくんです。それで、バブルが崩壊した後の1990年以降、金利はどんどん下がっていった。4%、3%、2%ぐらいで、あれっと思った。これは大変だと。そして1%になったときには、これは異常だと思った。それでも止まらずに、いま何%か。1%以下です。1%以下でも景気が良くなれば、また元に戻す予定だったけれど、景気は上がらない。今も1%以下のままです。だから私が100万円預けた銀行預金の利息は今年はたった30円でした。100万円預けて1年間での利息が30円だった。本当だったら、5万円ぐらい付いているはずです。1%以下だからもうこれ以上は下げられない。かといって景気が上向かないから、金利を上げることもできない。つまり金利調整ができない。だから金利操作は死んでます。もう10年間以上そうです。今は金利操作という従来の1番メインな政策が効かない状態です。

経済が正常だったら、景気が悪い時には金利を引き下げて、お金を借りやすくして、通貨量を増やす政策をとるはずです。逆に景気が良い時にはお金が余ってるから、金利を引き上げて、お金を借りにくくする。預金金利を上げて預金する量を増やし、世の中に出回る通貨量を減少させる。戦後50年間はこの公定歩合操作でやってきました。しかし1990年にバブルが崩壊して、これはもう効きません。この1番メインの政策ができなくなった。


【公開市場操作】
【国債】
ではどうするか。次の手をどうするかというと、ここから国債のことを言わないといけないんです。公開市場操作のことを説明することは3分でできるけど、しかし分からないんです。なぜ分からないかというと、国債があるんです。国債とは国の借金のことです。国債とは、国の債務のことです。つまり借金です。これがだんだん増えていると言います。公債残高の増加です。公債と国債は兄弟みたいなものです。ほぼ同じです。実は県だって借金してます。市だって借金してます。公共機関で借金しているのは国だけではなくて、それを全部ひっくるめるともっと大きくなる。それが公債です。

国だけの借金は国債です。これが90%を占めている。それで県や国が、将来に有益だから、その便利になるからといって、道をつくるとき、ちょっとがお金が足らないからといって、そのためだけに借金する。これはまだしも良い方です。借金のありようとしては。これを建設国債という。建設公債ともいう。国の借金の中でも良いほうの借金です。

しかしAさんから100万円借りると、やがて返さないといけない。でもお金がない。するとまた別のBからお金を借りて、そのBさんから借りたお金で、Aさんに返済する。
国がやっているのはこれです。赤字を補填するために、また別の人から借金する。これを特別公債という。赤字国債ともいいます。借金の返済用にまた借金する。これは非常に不健全です。



【日銀の直接引き受けの禁止】
ただ伝家の宝刀がある。国は何もないところから、お金をつくれる機関を近くにもっている。1万円札の正式名称は何だったか。日本銀行券です。でもあれは1万円刷るのに10円ぐらいしかかからない。9990円はまるまる儲けです。
では政府はこの日本銀行に借金すればいいじゃないか。しかし、これやったら何でもありになるから、国が直接に日銀から借金したらこれはダメです。このことを「日銀の直接引き受けの禁止」といいますが、これはダメです。禁止されています。

すると不思議なことなんですが、例えば国が近くの民間銀行からお金を借りたらどうか。これはオーケーです。するとその民間銀行にはお金がなくなる。すると民間銀行は日本銀行からお金を借りる。結局、日本銀行からお金を借りているのと何も変わらない。こういうことをやっている。


【公開市場操作】
本当は2番手の政策だったのが、今ではトップの政策になっています。言葉は難しいけれども、これを公開市場操作といいます。これをいうときの注意は、政府はお金をつくれないけど、しかし日本銀行はお金をつくれるんです。印刷すればいいからです。金本位制じゃないから、金銀はなくても、紙とインクさえあれば、いくらでも1万円札は刷れます。その権限は政府ではなくて日本銀行にある。



すると今はどうなってるか。市場というのがこの図のイメージです。ここの小さい黄色の四角のなかに我々がいます。君たちのお父さんお母さんたちも、この中で働いている。いま日本政府はお金が余っているか、足らないか。お金が足らずに財政赤字になって借金してます。国が借金するときに発行するのが国債です。

日本銀行はお金をいくらでも印刷できるから持っているはずです。だから、日本銀行にこの国債を直接売れば一番簡単ですが、さっきも言いましたが、こんなことをしたらもう歯止めがかからなくなるから、これは禁止されてます。日本銀行が直接国債を買ったらいけないと、禁止されている。

しかしまた矛盾したことをいいます。でもそれは守られてないです。国は、日本銀行に国債を直接売ったらダメだから、国はまず一般の民間銀行に国債を売る。すると国債を買った民間銀行がその代金として、日本政府にお金を払う。こういう構造です。でもこれが日本銀行の公開市場操作じゃないです。

そうすると民間銀行にお金がなくなる。でも景気が悪いからお金を貸したい。日本銀行はどうするかというと、この民間銀行が持っている国債を買うんです。100万円の国債だったら、その代金100万円を民間銀行に渡す。そうやって日本銀行が民間銀行から国債を買うと、国債はどうなるか。

①政府が国債を発行し、
②それが民間銀行に行って、
③次に日本銀行に行くんです。この③です。

ではその日本銀行のお金はどこから来たか。印刷しただけです。そうなると結局、日本政府が発行した国債を、日本銀行が直接買ってることと変わらないわけです。
国 → 民間銀行 → 日本銀行という形になっただけで、日本銀行が国債を買っていることに変わりはないです。でもこれは、直接引き受けじゃないから、間接的に民間銀行から買ったから、法律的にオーケーという解釈なんです。いま政府はこれでもってる。しかし、やってることは本来は禁止されてる「日銀の直接引き受け」と同じことです。

もっというと、国債だけではないです。企業は株式市場で株式を発行する。企業も株が高くなったほうがいい。でも国民は、お金を持たないからこの株を買えない。どこが買ってるか。この日本銀行が民間企業の株式を買っているんです。いま株高で、アベノミクスが始まってから10年で、4倍になった。4万円ぐらいになった。なぜ景気が悪いのに、株ばかり上がっているのか。日本銀行が買っているからです。

つまり日銀は、市中の国債や株をどんどん買っている。これが公開市場操作です。今ではこのことを量的金融緩和と言っています。

株を持ってる人は大金持ちです。日本最大の大金持ち、つまり株を持っているのは誰か。現状では日本銀行です。日銀が株主になる。なにか変なことです。民間企業の株主というのは経営権をもつんです。だから理屈上は、民間企業の経営権を日本銀行がもつことになる。

これをやっていた日銀総裁が黒田東彦さんです。安倍晋三首相の時に、アベノミクスが始まりました。アベノミクスとか訳の分からない名前ですが、その中身はこれです。日銀が買っているんです。黒田日銀総裁と手を組んで。とにかく株を買え買え、株価を上げろ上げろと。日銀は無尽蔵にこれをやっています。そしてそれを異次元の金融緩和と呼んでいます。アベノミクスというのは、テレビなどで聞いたことはあると思うけれども、教科書からいうと、これを徹底したものです。それを異次元の金融緩和だとか、言ってる。これは健全なことではありません。異次元の金融緩和ではなく、異常な金融緩和です。

ではそのお金、日本銀行のお金はどこにあるか、と聞きたくなるけど、それは最初に言ったように、日本銀行はお金を刷れます。1万円札を作るのは政府じゃない。日本銀行です。いくらでも刷れます。理屈上は。こういう権限を持っているのが中央銀行です。

もともとは政府がお金を発行していましたが、政府は発行しなくなって、中央銀行が発行するようになった。こんなことを始めた最初の国は、やっぱりイギリスです。世界初の中央銀行というのは、1694年、日本ではまだ江戸時代ですが、イギリスのイングランド銀行がやりはじめた。それが全世界的に広まったということです。日本銀行がやってる2つ目を言いました。順番は逆ですが。次は3番目、もう一つやってる。これは簡単に行きたいと思います。


【預金準備率操作】
日本銀行がやってる金融政策の3番目は、預金準備率操作といいます。この預金は我々の預金じゃないです。一般の民間銀行が日本銀行にいくらか預金しているんです。それは半ば強制です。おまえ100万円預金しろと言われたら、親分だから、日本銀行は命令的に言います。今年は100万円預金してもらおう、来年は200万円預金してもらおう、この額を日本銀行が指定できる。日銀に市中銀行が預ける、預金準備率というのは預金の量です。これを上げ下げする。通貨量をそれで増やしたり、減らしたりする。世の中の通貨の量を。

景気が悪い不況期には、この準備率を引き下げて、民間銀行の手持ちのお金を増やして貸しやすくする。好況期には逆です。
考え方を1つ間違うと、全部ダメになるから。お金を増やすのはどっちか。不景気の時にはお金を増やす。逆に景気がいい時には逆にお金は減らす。好況期には、これを引き上げる。預金準備率を、民間銀行が日本銀行に預ける預金の量を引き上げて、通貨量を減らす。


社会科は文系科目だといっても、ここだけは算数の知識が要る。算数といっても、高校の数学じゃない。小学校の算数です。経済には、数学は要らなくても算数は要ります。これで日本の景気への影響は、政府のやる財政政策よりも、こっちのほうが大きい。効果は大きい。日本銀行は非常に強い力を持ってます。

こういう力をもつ中央銀行ですが、国ごとに中央銀行がありますけれども、日本銀行はそんな世界の5本の指に入るほど強くない。


【資金流出】
日本というのは変な国で、国はものすごい借金を抱えてます。そんな莫大な借金を抱えながら、対外債権というけど、これは経済用語だから分かりやすく言うと、外国に貸してるお金です。これが世界一なんです。これがおかしいと思わない人は、逆におかしい。日本は借金して人に貸してる最大の国です。一言でいうとそうです。まあ理由はいろいろで、政治家はいろんな理由を考えるから、何が正しいか分からなくなるけど、一言でいうと、日本は借金しているのに、そのお金を外国に貸している。この借金は誰からしているか。これは国民からしている。
その額は1000兆円です。日本の国家予算はその10分の1の約100兆円です。これが日本の年収です。給料でいえば、家でいうとお父さんの稼ぎが100兆円です。その10年分の借金をしてる。普通の家だったらパーでしょう。100万円の給料で、1000万円の借金を抱えている。それでいて外国に貸している。


では最大に日本が貸しているところはどこか。アメリカです。国民からお金を借りて、外国にお金を貸す。ではこの日本の国民は、さぞかし金持ちなんでしょうね。それだったら理屈は合う。しかし生活が苦しくて、みんなあえいでいる。この日本の国が借りている1000兆円の借金のことを国債といいます。これは国の借金であって、国民の借金ではありません。国民は逆に貸している方です。

この国の借金のカラクリは、普通は国民に、誰かが、AさんがBさんにお金貸してというときには、100万円貸してというときには、いいよ、貸そうというときに、大人はそのあとに100万円の借用証書を取るんです。あんたから100万円借りました。1年後には利子付けて、10%の利子つけて返しますからという証書を一枚貸し手に渡すんです。1年後、貸した金は必ずもどってくるとは限らないから。ごめん、オレは返せなかったとしたら、どうなるか、裁判です。証書があれば、負けて、家も抵当、自己破産をする。

しかし、国はやっぱり強くて、借金というのは、この借りた国が100万円の借金に10%の金利つけるから、お前たちから借りてやるぞ、といって、小分けした証書を、いっぱい発行するんです。これが国債です。個の国債を発行して、10%の金利つけるなら、国民も買おうかなと、買うという。国債を。国民は国債を買うという感覚です。お金の流れは同じですけど、この場合は、借りる側の国が強い。国がこの国債を売ってやるぞというと、買いますという国民がいっぱいいる。この国債が全部、国民の側にある。それが1000兆円です。


【買いオペレーション】
そういう前提で、日本銀行が景気対策としてどういうことをするかというと、私が政府だとして、君たちが2年5組の経済市場ということにすると、君たちは私にお金を貸してるんですよ。だからその証券をもってる。これが国債です。昔はちゃんと現物があったけど、今は電子化されて、すべてネットの中です。その売り買いはパソコンで行います。
君たちは国にお金を貸したけど、今の現状は君たちにもお金がないでしょ。今はその状態です。今は不況です。


そういう時には、君たちが持ってる国債を、日本銀行が買うんです。買うということは、君たちが持っている100万円の国債を日本銀行が買うんだから、君たちは国債を日本銀行に渡して、日本銀行は君たちに100万円を渡すんです。2年5組に渡すんですよ。そしたらこの2年5組経済圏に、お金がなかった経済圏に、100万円が増えたことになる。こういうことを国家規模でやる。これを買いオペレーションといいます。または資金供給オペレーションといいます。

こんなことは難しくて20年前には詳しくは言ってなかった。金利操作を中心に言っていました。しかし金利がほぼゼロになって、今はどうしょうもなくなっているから、ここでは例外的なことをするしかない。それでますます難しくなったんですよ。本当は大学の経済学部でやってもいいようなことを高校で教えている。確かにこれは難しいし、カラクリが複雑です。しかし今や新聞読むときも、こういうことを説明なしで書いてある。だから、私も新聞は10分ではサラッと読めない。経済記事の1面を読むときには10分では読めない。どういうことかなと、いろいろ考えながら読んでいる。
基本の基本は、国債は国の借金だということ、日本政府はその国債を大量に発行しているということ、そしてそれを日本銀行が捜査しているということです。

ここからは、君たちは市中銀行になってください。九州だったら、福岡銀行とか、鹿児島銀行とか、宮崎銀行とか、いろいろあるでしょう。そういう地方銀行から、君たちも国債を買うことができるけれども、政府からまずはシンジケート団といって、政府は市中銀行に国債を売るんですよ。市中銀行が国債を買うと、市中銀行は日本銀行にお金を払うから手持ちのお金が減る。

銀行間でもお金がないと、銀行同士、A銀行とB銀行がお金の貸し借りを実はしてます。めったに目につかないけれども。そのことを、お互い信用してるから、何の担保も取らずに、1億ぐらいポンと貸すんです。これを無担保コールレートという。コールというのは短期ですね。短期金融市場金利といいます。


【売りオペレーション】
次のページです。ここらへんはちょっと骨が折れる。景気が良い時、つまり君たちもお金を潤沢に持ってる時は、市中銀行もお金を潤沢に持ってる、まぁお金が余ってる時です。余ってるときには日本銀行は手持ちの国債を売るんです。国債を売るぞ、欲しい人いるか、これは10%の金利だからいいぞと言うと、市中銀行が手を上げる。そして売ってやる。断れない部分もある。
100万円の国債を日本銀行が売ったら、買った市中銀行は、日本銀行に100万円を渡さないといけない。その分、この2年5組の経済圏からお金が減ったことになる。こうやってお金を減らす。これを資金吸収オペレーションという。略して売りオペレーションともいう。どっちでもいいです。こういったことを日本銀行がやるんです。

前のページで先に言った買いオペレーションは景気が悪い時で、お金が足りない時です。日本銀行がするんですよね。
逆に景気の加熱期、好況の時には売りオペレーションです。


【非伝統的金融政策】
【量的緩和政策】
今のお金は紙だから、刷ろうと思えばいくらでも刷れるでしょう。金本位制じゃないから。この前提で20~30年前に、アメリカのシカゴ大学のミルトン・フリードマンという人が経済学を考え直したんですよ。経済の好景気とか不況というのは、お金の量によってどうにでもできるという経済学説を作った。だからお金の量を調整することによって経済は回復できるんだと、ということを言った。しかし、結果的に30年たって、どうもうまく行ってない。これはアメリカから来た考え方です。これを新自由主義という。経済的にはマネタリズムともいう。マネタリズムのマネはマネーです。マネー中心主義ですね。

ここ30年間の日本は景気が悪いです。でも日本銀行はお金を無尽蔵に刷れるでしょう。さっき1万円札は政府紙幣じゃないと言った。日本銀行券です。原価は印刷代10円です。その1万円札を原理的には勝手に刷れる。だからお金が足りないと市中銀行が言えば、日本銀行がその市中銀行が持ってる国債を買い入れて資金を供給する。資金を供給している。資金を供給するというのは、市中銀行の国債を日本銀行が買い入れて、日本銀行が市中銀行にお金を渡すということです。


でも、その市中銀行の口座はその市中銀行には実はないんです。日本銀行は、銀行の銀行でしょう。我々は日本銀行にお金を預けられない。日本銀行に口座を持ってるのは市中銀行なんです。
すると私の給料が地元銀行の口座に入るように、地元銀行が手持ちの国債を売ったこの代金は、日本銀行のなかのこの市中銀行の口座に入るんです。これは普通預金ではなくて当座預金という。教科書に当座預金と書いてあるけど、それはあまり気にしなくていいです。こうやって日本銀行が市中銀行に資金を供給すると、日本銀行にある市中銀行の口座の残高がどんどん増えていく。それをもっと増やしていこう、となるんです。この政策の延長線上にあるのがアベノミクスです。とにかくお金を供給していこうと。つまりは資金供給です。


図の中の、逆のお金を減らす側は時間がないから言いません。ここはカットします。30年間、景気が良かったことはないし、今言ったことの逆をやるだけです。売りと買いを。国債をこっちは買った。今度は国債を売るほうです。逆です。


【ゼロ金利政策】
これを公開市場操作といって、今までなかった方法を30年間取り続けているのが今の日本です。だから私たちが50年前に習った現代社会は、そんなことまで習ってない。金利操作が中心でした。私は1970年代の高校生ですけど、このあと社会人になってから詳しく知って、なにか難しいことをやりだしたなーと思って新聞を読みだしたんです。一体何してるんだろうか、最初はなかなか分からなかった。

バブル崩壊後の1990年代というのは、景気が悪いから金利は上げられない。だから、どんどん金利は下がっていった。金利を下げると、お金は借りやすくなるから。そういう政策をとった。通常は金利は5~6%あるんですよ。市中銀行の金利は。
私がビックリしたのは、それが4%ぐらいに下がってもそんなに驚かなかった。その後の3%、まああり得るかな。2%を切ったときには、これはやはり異常だなと思った。それでも止まらなかった。1%を切ったんです。これは完璧に異常です。それが限りなくゼロに近づいた。ここらへんまで来ると私はしびれた。一体どうなることかと。それが1990年代から起こった。

一方ではさっき言ったことで、ここは寝ていて分かるようなことではない。パズルのようなカラクリがあります。日本政府と日本銀行という2つの主体があるから、とても複雑です。
こうやって資金供給をする。日本銀行のなかの民間のA銀行の口座に。それをどんどん増やして行こうというのがこの目的なんですが、これを量的緩和政策という。
日本銀行のなかの民間のA銀行の口座、それは普通預金ではなくて当座預金という。当座預金とは何かと聞かないでください。とにかくその預金量をどんどん増やしていこうとする。まずこの名前です。量的緩和です。量はお金の量です。緩和とは緩めることです。お金を増やすことを緩和というんです。逆にお金を少なくすることを引き締めという。経済用語でそう言います。


日本銀行の当座預金、これは民間のA銀行名義ですよ。この残高が一定以下にならないようにする。「一定以下にならないように」と、変な否定語で書いてあるけれども、この残高を増やそうとしたんです。分かりやすくいうと。A銀行の口座にお金が増えたら、A銀行はそれを貸さないといけない。銀行はお金を貸して儲けてるんだから。その預金量が増えたら、A銀行はそれを貸し出そうとするし、世の中の君たちはお金がなくて困っているからそれで助かる。これで景気がよくなる、という計算だった。しかし、まったく良くならなかった。

なぜか。借りたものは返さないといけないから、それならもう商売を縮小した方がましだとなった。または商売をたたんだ方がましだと。リスクをとって1000万借金しても、もし事業が失敗したら夜逃げしないといけない。そんなことするよりも商売をたたんだほうがましだとなる。地方のアーケード商店街とか、ここ10年でバタバタとシャッター通りになった。息子には、おまえ商売を継がなくていいぞと。それでだんだん景気が悪くなっていく。
もともとの狙いは、こういうふうにお金の量を増やしていけば、お金が世の中に回って景気が上向くはずだった。物価も、ジワーッと良いぐらいに上がるはずだった。


【インフレターゲット政策】
その物価上昇率がどれくらいが一番いいかというのは、インフレ率2%、これに狙いを定めたんです。狙いをターゲットという。物価上昇率の狙いだから、インフレターゲットという。略してインタゲと言ったりする。これが安倍さんから始まった。2%をめざして10年間やったのが、今年やめた黒田東彦日本銀行総裁です。でもそうならなかった。
これも10年近くやってほぼ結論が出ました。日本銀行の総裁を10年間も務めたのは黒田さん以外にいない。普通は4~5年が任期です。その倍の時間をかけて、結果を出せなかったというのが正直なところです。インフレ率は数字的にも上がってないです。うまくいかなかった。狙いは金融緩和を推し進めて、お金の量を増やせば景気が上がるというものだったけど。


【量的質的緩和政策】
それを量的金融緩和というけど、今度は教科書に太文字で書いてあるけど、量的に質的が加わった。これはカットします。ただマネタリーベース、これを増やすということです。ではマネタリーベースとは何かというと、太文字で書いてあるけどサラッと書いてある。日本銀行のなかの市中銀行の当座預金、その残高を増やそうとした。これにただ1万円札、つまり現金が加わっただけ。これを経済用語でマネタリーベースといいます。


【マイナス金利政策】
しかし、ぜんぜん市中銀行の貸出は増えなかった。増えなかったから、どうしたか。
例えば、日本銀行のなかの市中銀行の口座に、例年100万円あったとします。金融緩和で日本銀行が、市中銀行の口座に、こうやって金融緩和でどんどん預金量を増やす。そしたらこれが預金が、企業に貸し出されるはずだったんだけれども、そうならなかった。だからどうしたかというと、100万円以上を超える日本銀行の口座預金にはマイナス金利をつける、と言ったんです。
意味わかるかな。100万円の預金があって、これを貸し出しできなかったら、マイナス5%の金利だったら1年間で約95万円になる。マイナス5%の金利というのは、100万円預けて95万円しか戻ってこないということです。こういうのがマイナス金利です。こんなことは史上初ですね。世界でこれをやったのは日本だけです。日本はマイナス金利を実施をした。念のために言っておくと、
これは君達の預金を市中銀行に預けていたら、100万円の預金が95万円に減るということではない。市中銀行が日本銀行に預けていたお金が減るということです。
何のためか。日本銀行が市中銀行に、もっとお金を貸せというんです。減りたくなかったら貸せということです。これはもう脅しですね。しかし市中銀行は、我々もイヤ貸そうとしているけど、誰も借りないんですよという。私は一生懸命、借りてくれ、借りてくれと言っているけど、実際、市中銀行は、個人向けには住宅ローンだけだったのが、今は車のローンでも組める。借りてくれ、借りてくれです。でも誰も借りないです。国民も収入が少ない。だから銀行は貸そうとしているけど、みんな借りない。そんな時に銀行にマイナス金利というペナルティーを課して、無理にでも貸そ付けようとしても、うまくいくはずがない。


本当は、強制的にでも貸付を増やしたい。でもそんなことはできない。銀行に半強制的に、お前たちがお金を貸せという。この商品を売って来い、売ってくるまで帰ってくるな、みたいな感じです。銀行も迷惑な話だと思う。こういうことをして、結局うまくいってない、というのが今の現状です。

次のグラフでは、日本の銀行の金利は、ここ20年間、2000年から去年の2022年まで、日本の金利はほぼゼロに張り付いている。でも、どこの国もそうだから仕方がないとは言えない。アメリカは緑ですよ、イギリスは紫です。やっぱりアメリカもイギリスも平均的な金利は5~6%ぐらいはある。日本だけでしょう、こんなゼロに近い金利は。日本はこういう状態で今まで来てます。こういうのだって、物の本には書いてある。書いてあるけど、新聞テレビは、なかなかこれを言わない。

これだけ低金利だったら、次に何が起こるか。今まで10年間、1ドルは約110円だった。今は150円になっているでしょう。アメリカと日本で、アメリカの金利が5%、日本の金利は1%として、君たちはどっちにお金を預けるか。
30年前は、日本人は日本にしか預金できなかった。でも金融自由化があって、今は日本の市中銀行にドル預金ができる。君たちはどっちに預けるか。日本では100万円預けて、1年後に101万円にしかならないけど、アメリカでは100万円預けたら、1年後に105万円になる。

では日本人がアメリカのドル預金をするということは、どういうことか。日本円を売ってドルを買うことです。お金の流れは、円からドルに向かうんです。円は捨てられたみたいな形になる。するとどうなるか。上がるのはどちらか。ドルが上がるんです。それで1ドルが110円から150円に上がった。円は逆です。これを見て円が上がったという人がいるけど、上がったのはドルです。経済は算数は難しくないけれど、理屈がとても複雑です。頭のなかをよく整理しておいてください。これはドルが上がったんであって、円は下がったんです。こうやって日本の金利が低いと円安になります。そうなると日本の価値はどんどん下がります。


なぜいま中国人があんなに日本に来ているか。日本の円が安いからです。つまり日本の物価が安いからです。中国で買うよりも、日本で買ったほうが安いからです。こういうことに連鎖していく。100万円の金利が1万円しかつかないだけではない。円自体の価値全体が低下していく。今こうやって円安が進行中です。

去年から戦争が起こって、ますます円安が進行してます。10数年前は1ドルは70円台だった。今の倍です。それほど高い時期もあった。それから見ると円の資産は2分の1になってる。日本の資産は。これはすごいことです。


【ポリシーミックス】
いま言ったのはお金の話です。これは日本銀行が中心になっている。この政策のことを金融政策といいます。しかしお金を持ってるのは、我々のお金を吸い上げて税金で取っているのは日本政府です。日本政府は日本政府でまた別のことをやっています。これは別の政策です。これを財政政策という。これはまだ言ってません。これから言います。ただ大事なのは、もともとは財政政策が中心だった。しかし今言ったように、新自由主義の流行でお金の量でうんぬんかんぬん、景気が良くなるんだという学説が流行ると、今は金融政策が中心になった。この金融政策が中心です。しかしこれは車の両輪です。クルマのタイヤが、大きいタイヤと、小さいタイヤでは、前に進まないでしょう。同じところをグルグル回って前に進まない。バランスが取れるかどうかが大事です。

それが伝統的なもので、これをポリシーミックスという。ポリシーは政策。ミックスは混合です。ポリシーミックスと言います。いまその金融政策まで行きました。財政政策についてはあとで言います。

それで、次回は金融政策をもうちょっと行きます。今は肥大化したこの金融政策ですけど、日本が景気が悪くなるに従って、また新たな金融の自由化の動きというのが加わっていきます。
終わります。


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