1本のわらしべ

骨肉腫と闘う子供とその家族とともに

痛い!

2013-11-21 08:08:46 | Weblog

「痛い!」

あかねの体は、満身創痍、傷だらけだった。

うっかり、体に手があたろうものなら、ギロリと大きな目でにらんでくる。

「ごめん、ごめん」

看護士さんにも、よく怒っていた。

看護士さんの中にも、ドジな人がいて、緊張すると普段やらない失敗をやらかす。

あたっちゃいけないと思うと、ついあたってしまう。

私も似たようなタイプなので、その若い看護士さんが他人とは思えなかった。

今頃、どうしているだろう。ベテランの看護婦さんになっているかしら。

一年以上、お風呂にも入っていないし、体を抱きしめるどころか、触ることも出来なかった。

亡くなって、家に帰ってきたとき、私は彼女の体をさわりまくった。

皮膚はカサカサのはずなのに、体液が体中の細胞に充満してパンパンで皮膚はツルツル。

骨と皮だけになっていた足も、腫れ上がって丁度いい太さになっていた。

髪も少し短いけれど、ベリーショートと言えなくもない。

皆とお別れするときは、「元気な時の姿で」との意志が働いているみたいだった。

式の前に、口元が寂しいと、ご自分のルージュを娘に塗ってくれた友人。いま、そのルージュは仏壇に。

 

浴槽につかるとき、お湯の中から痛々しい手が出てくる。

その手をつかんでさすってやる。

妄想が始まる...

 

コメント
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