赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

Ⅰ.岸田首相、キーウ電撃訪問の意味 

2023-03-28 01:00:00 | 政治見解



Ⅰ.岸田首相、キーウ電撃訪問の意味 :230328情報

「岸田首相のウクライナ電撃訪問」のニュース速報は、TBSがWBC準決勝・日本対メキシコ戦を生中継している最中に流れました。しかもそのタイミングが、日本がサヨナラ勝ちする直前という緊迫した場面でした。

参院予算委員会では、お土産に地元広島の「必勝しゃもじ」を贈呈したことに関して、立憲民主党の石垣のりこ議員が「戦場に持っていくには、あまりにも不適切では」と糾弾しましたが、岸田首相は「ウクライナの人々が祖国や自由を守るために戦う努力に敬意を表したいし、わが国としてウクライナ支援をしっかり行っていきたい」と答弁しています。

さて、今回の岸田首相のウクライナ電撃訪問、どんな意味を持つのか、ソ連崩壊時からロシアに在住し、ロシア人の思考方法を学んできた外交評論家の解説をお伺いしました。



▼ウクライナ側にとって意味ある訪問

岸田さんは3月21日、ウクライナの首都キーウを電撃訪問、ゼレンスキーと会談しました。今回は、この訪問の意義について考えてみましょう。

ウクライナ側から見ると、正直日本は「あまり頼りにならない国」でした。なぜでしょうか?

一つは、地理的に遠い。ウクライナ戦争は欧州で起こっています。ウクライナをもっとも熱心に支持、支援しているのは、ポーランドやバルト三国など。つまり、「ウクライナの次にプーチンのターゲットにされそうな国々」です。

少し西側に進むと、迷いが入ってきます。フランス、ドイツ、イタリアなどは、「ウクライナが多少領土を譲っても停戦すべきだ」と考えている。

距離の遠いアメリカは、どうでしょうか? 確かに、アメリカは、ウクライナにとって最大の支援国です。しかし、共和党のトランプ派は、「ウクライナ支援を止めろ!」と一貫して主張しています。だから、バイデンが代わったらどうなるかわかりません。

日本は、正直にいえば、「ウクライナ戦争を自分事として感じている人」は、とても少ないでしょう。その理由は、「遠いから」です。一方、「近い」中国による台湾侵攻の可能性については、とても気になります。距離が影響をもっているのは、ウクライナにとっても同じこと。

日本がウクライナにとって、「あまり頼りにならない国」である二つ目の理由は、日本は平和憲法の国で、武器を供与することができない。そして、ウクライナが今もっと欲しいのが、まさに武器なのです。ゼレンスキーは欧米に、「戦車をくれ!」「戦闘機をくれ!」と要求しつづけています。しかし、日本は、武器を供与できない。

以上二つの理由で、日本はウクライナにとって「あまり頼りにならない国」でした。ただし、今年の岸田さんは、他の年の日本、他の年の岸田さんと違います。そう、日本が今年、「G7の議長国である」ということ。これは、重要です。

G7の他に、G20がありますね。G20の参加国は、フランス、米国、英国、ドイツ、日本、イタリア、カナダ、
欧州連合(EU)、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、メキシコ、韓国、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ。

ここには、ロシアがいる。さらに、ロシアに比較的近い中国、インド、ブラジル、南アフリカ(つまりBRICS諸国)がいる。政体もさまざま。民主主義の国もあれば、サウジアラビアのように絶対王政の国もある。中国のように、共産党の一党独裁国家もある。要するに、「ウクライナ支持」で一体化していないのがG20なのです。

一方、G7、つまり、日本、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、は民主主義、資本主義で価値観が一致しています。もちろん、細かく見れば、既述のように揺れている国もあるでしょう。それでも、一応「ウクライナ支持、支援」「反ロシア」で一体化している。

日本は今年、「ウクライナ支援の核」であるG7の議長国である。だから、ウクライナにとって、「今年の日本」「今年の岸田さん」は重要なのです。

岸田さんがキーウに来てくれた。当然ゼレンスキーは、歓迎しました。そして、SNSにこんな文章を投稿しました。「国際秩序の力強い守護者でウクライナの長年の友人である日本の岸田総理大臣をキーウに迎えたことをうれしく思う」

そして、ウクライナ政府は、こんな動画を公開しています。(@ロシア語のコメントは、荒れているようですが。)

岸田さんは、何をいったのでしょうか?

「何としてもG7広島サミットまでにウクライナを訪問し、ゼレンスキー大統領と直接話し、日本の揺るぎない連帯を伝えたいと強く願っていた」
「ロシアによるウクライナ侵略は 国際秩序の根幹を揺るがす暴挙だ。キーウとブチャを訪問し、惨劇を直接目の当たりにしてこのことを改めて強く感じている」
「今後も日本ならではの形で切れ目なくウクライナを支えていく。ウクライナの美しい大地に平和がもどるまで日本はウクライナとともに歩んでいく」

実に力強いメッセージを出しました。

日本はウクライナに武器を供与できない。しかし、G7議長国の日本の総理が、「ウクライナの美しい大地に平和がもどるまで日本はウクライナとともに歩んでいく」と宣言した。

岸田さんは5月のG7広島サミットで、「がんばって、ウクライナを支援しつづけていきましょう!」
と、議論をリードすることでしょう。


(つづく)



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