赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

②BRICS首脳会談――BRICSに群がる各国の思惑

2023-09-14 00:00:00 | 政治見解



②BRICS首脳会談――BRICSに群がる各国の思惑:230914情報


昨日からの続きです。国際政治学者の見解です。


首脳演説パスの習近平

8月22日に習近平さんが演説するはずでしたが、やりませんでした。首脳演説をパスしてしまいまして、そのとき会場にも姿を現さなかったということです。

これを報道していない日本のマスコミもありますが、これは非常に小さいけど重大な事件が背後にあるのではないかと考えさせられます。

その考察の一つとしてはチャイナ国内で何かとんでもない事件が起きていたのではないかという考えです。そのときに習近平は本国と連絡を取らざるを得なくて会場に姿を現すことができなかったという可能性があります。

これは、どういう種類の事件かと言われて、1番に思い浮かぶのが人民軍関係です。人民軍に関して今、大変な粛清を習近平はやっています。ロケット軍のトップの首を入れ替え、政治員の首も入れ替えました。そして現役国防大臣も今、調査中となっており彼も失脚するかもしれません。そのような状況にありますから、軍の粛清に反対して、軍の一部が反乱を起こしたという可能性もあると思います。

2番目には習近平の健康問題ということもあり得るでしょう。習近平が何らかの意味で体に変調を起こして、出てこられなくなってしまったということも考えられないわけではありません。しかし、これは国際的な注目を集める国際イベントです。BRICSの国だけではなく、その他の国でこれからBRICSに入りたい国も集まってきており、日本のテレビなどでも長い時間を割いて報道していました。

国際的な注目を集めるところで、普通に考えれば習近平さんとしては、BRICSのリーダー(中心)は何と言っても我が中華人民共和国であると、中国共産党の威信を世界に示す良いチャンスだったのですけども、そのチャンスを棒に振ってしまったわけです。

そして当然こういうところに出てこなくなれば、私のような世界中の国際政治ウォッチャーはチャイナで何かあったのではないかと勘繰ります。国際的に注目されるところに彼が出てきて、普通に期待通りの演説をすべきだったところできなかったとなると、いろいろ腹を探られるところもあり、自分の弱点を晒してしまうことになりかねません。習近平はPRしたかったはずですが、それを承知で実行できなかったということは、これはかなり大きな意味があるのではないでしょうか。これについては当然この後フォローして参ります。


BRICS拡大、それぞれの思惑


それから多くの国がBRICSに入りたいと言っているようです。今回はサウジアラビア、イランを含めて6カ国のBRICSに正式加盟を認めました、。それから入りたい国があと40カ国くらい名前を連ねているということですが、BRICSがこれから大事な国際的な一つの力の中心になっていくのかということで言うとそれはないでしょう。

なぜ40カ国も集まったのかというと、単純に言うとみんなお金の匂いがするから来ただけです。今、チャイナ経済の中が腐りきって悪くなり、チャイナバブルは崩壊しています。そして、チャイナの経済力はかつてのようにはないということは、多くの人がまだ認識していません。

中国恒大集団が破産申告をニューヨークでやったということで、チャイナのバブルもこれから崩壊するのかなと、のんびりしたことを言っている日本のテレビのコメンテーターが沢山います。

既にチャイナの不動産バブルは崩壊しているわけです。チャイナではコロナの問題もありましたし、水害もありましたので経済的には踏んだり蹴ったりと言えます。

現状としても弱り目に祟り目という感じです。もう外貨もありません。そういう状況で外国から借りている金を返すのも先延ばしにしてもらわないといけない状況になっているのです。

しかし、発展途上国の多くの国はそのような状況を知りません。チャイナと仲良くすれば、あるいは今まさに経済が伸びていると言われているBRICSの国と仲良くすれば、自分たちにも良いことがあるだろうと思って集まってくるのです。

特に第3世界グローバルサウスと言われる、第3世界発展途上国はどの国も独裁政権が多いと言えます。そういったところの指導者からすれば、まずはBRICSに入ってチャイナと仲良くすると言って、チャイナから自分の国に多くの投資が来るのではないか、それで国内の経済が良くなるだろうと考えるのでしょう。

あるいはチャイナから直接経済援助とかもらえるのではないか、チャイナには14億の市場があるのだからそこに自分たちの国で作った製品や採れる原材料を売ってお金儲けできるのではないか、チャイナ市場に参入させてもらえるのではないかと想像を膨らませるのです。

もしくはチャイナからお金が降って来るのではないか、それが投資という形であるか援助という形であるかはわかりませんが、裏の政治家を買収する資金であるのかもしれません。ともかく、お金持ちのチャイナと付き合っていれば、あるいは経済が伸びていると言われているインドと付き合っていると良いことがあるのではないかという軽い気持ちで、とりあえず行ってみようという程度のことです。

これはAIIB(アジアインフラ投資銀行)のメンバーとしてイギリスのような先進国を含む沢山の国が加入したのと同じことだと思います。当時のAIIBを作った頃のチャイナは景気が良かったから、ここと付き合ったら何か良いことがあるだろうという思惑で集まった国が多いということであり、そこで何か大きな新しいことが起きるとか、そういうことではありません。

ここで申し上げておきたいのは、グローバルサウスとBRICSという塊がある一方でG7があって、それらを対立的に捉えるニュース解説なども多いですが、これは世界経済の実態からいうと合致しないです。

先進国G7の集まりがあり、G7の企業自体がグローバルサウスの経済が良くなって発展していけば、そこでまたお金が儲かるという仕組みになっています。

グローバルサウスと言っても技術もしょうもないわけだから、今のチャイナは鎖国政策に戻ってしまいましたが、今のインドがやっているように国を開いて自由貿易にして、自分の国の資源を売るとか、どの国でもある一番安い資源というのは労働力です。

やはり貧しい国には低い賃金でも働く人たちがいるため、そこに投資をしてもらって少しでも物作りをやって、それでもって国を豊かにしたいと思っているのは間違いありません。先進国の中から物作りが中心に移ってしまうと、先進国の方で失業が出てしまって困るという問題もあるのです。

しかし多国籍・無国籍企業というのは儲かればいいという発想だから、賃金も安くて人口が多いところに新しい製造業の拠点を求め、そこの生活レベルが上がればそこにも物が売れるし、自分たちのサービスも提供できるだろうということで、そっちに行くという構造になっています。

本来、先進国にとっても政治的な軋轢がなければ、南の国の未開発の人口は今後グローバルな資本主義が発展していく一つの方向性でもあるのです。

別にこれはBRICSやG7が対立するということではありません。本来の目的である経済発展ということで言えば、win-winの関係で行けるところだと思います。

今のBRICSは特に反米同盟のように捉えて、そこがG7の塊と対立するように捉えている論評が多いですけど、経済的に考えるとそういうものでもないというのを理解してください。

前途したようにBRICS自身の思惑が一致していません。それが第2国連的になるとか、国際的に一つの凝集力のある国際機関的なものになるというのは全くの幻想であると思います。

一方でBRICSの国が言っているように、戦後のブレトン・ウッズ体制という金融体制における世界銀行があり、IMFがあり世界の基軸通貨がドルであるという体制が随分と古びてきて、制度疲労を起こしているというのも事実です。しかし、それに取って代わる何か新しいものがBRICSにあるわけではありません。

かつて第一次世界大戦までは世界の基軸通貨はイギリスのポンドでした。第一次大戦と第二次大戦の間の基軸通貨という形で言うと、戦国時代でポンドは没落をしていきましたが、そこでポンドに取って代わる新しい通貨というのが生まれてきていたわけではないです。

そして第二次大戦後からは、ポンドからドルに世界の基軸通貨が変わりました。現代を見てみますと、ポンドにドルが取って代わったように、ドルに取って代わる対抗馬になるような新しい通貨、新しい国家ないしは国家群が生まれているかというと生まれていません。

BRICSはあまりにもバラバラです。チャイナ経済も今やあまりにも弱すぎます。長期的に考えて習近平さんの頭の中では人民元がドルに取って代わると思っているのかもしれませんが、そのような力はありません。

ロシアのルーブルはもっと小さな通貨です。これからドルの基軸通貨の力が徐々に落ちていくだろうということは言えても、ドルを否定してそれに取って代わる新しい基軸通貨が生まれる可能性は当面の間ないと断言していいと思います。そのことを頭の中に入れておいてください。  


(了)



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