赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

要衝の地、台湾をめぐる中国と日米 コラム(72)

2015-11-11 00:00:00 | 政治見解



コラム(72):要衝の地、台湾をめぐる中国と日米

(『中国の対日工作』のつづき)

中台首脳会談の意味

11月7日に中国国家主席の習近平氏と台湾総統の馬英九氏【※1】がシンガポールで会談が行われました。

習氏はシンガポールのリー・シェンロン首相との会談が主目的でしたが、急遽、台湾側との会談を予定に入れました。

習近平氏と馬英九氏にとり、中国寄りのシンガポールは話し合いをする絶好の場所でした。

【※1】馬英九氏は香港の九龍で出生した外省人。学生時代に「釣魚島還回」を主張する活動を続け、日本による台湾統治にも厳しい評価を下す。最近も、日本の全食品を対象に『産地証明添付』を義務付ける規制強化策を実施。総統の任期は2016年5月まで。

急遽、会談が決まった背景には、次期台湾総統の有力候補である蔡英文氏【※2】の来日がありました。

脱・中国依存を標榜する蔡氏に対し、中台統一を目指す馬英九氏が、統一への世論形成のため習氏との会談を要請しました。

会談で馬氏は「中台統一の実現」「統一後の立場の確保」などを要請し、一方、習氏は「馬総統支援のために軍事的圧力や、要請があれば軍事侵攻も視野に置く」などと答えています。

習氏にとっては、台湾とシンガポールと組んで「中国トライアングル」を形成することで、フィリピンやベトナムなどを封じ込め、SEAN諸国に楔を打ち込むことができると考えています。

【※2】蔡英文は、中華民国(台湾)の政治家。元中華民国行政院副院長、現・民主進歩党主席。国民党政権下の李登輝総統のブレーン。政治的立場は穏健独立派とみられているが、急速な対中接近を図る馬英九政権を強く牽制している。


台湾の本音

台湾では馬総統率いる中国国民党の人気に翳りがでています。次期総統候補についての世論調査では、民進党の蔡英文氏(台湾独立派)が48.6%の支持を集め、与党・国民党の朱立倫氏(中国統一派)の支持率は21.4%でした。積極的に中国統一反対を叫ぶ若者だけではなく、台湾の多くの国民は中国統一化に反対しています。



蔡英文氏来日。意味

10月のはじめ、次期台湾総統の有力候補、蔡英文氏が来日し、非公式ではありますが安倍総理や政府高官との懇談を持ちました。

蔡氏の来日は、安全保障問題での日本との連携や、台湾のTPP参加への協力要請などが主な目的でした。

一方、日本にとっては、日米が共同して台湾を守ることで中国を牽制し、南シナ海情勢を安定させるという大きなメリットがあります。


今回の中台首脳会談や、蔡英文氏の来日は、来年に控えた台湾総統選挙が日米中にとって重要な分岐点になることをうかがわせます。

台湾が自由と民主主義、人権尊重という価値観を持ち続けることができることを願っています。

つづく


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