一族の盛衰を独特の筆致で描く同氏の小説とは一味違った男の物語です。女性で登場するのは、主人公の奥さんだけというまさに男世界の話です。
物語~捕鯨船団の母船で一等機関士をつとめる主人公の源蔵は、時化の続く南氷洋上で、罹病した機関長に代わってキャッチャーボートに乗り移る。漁は順調で猟期終了まであと1週間という時期になったのだが・・・
南氷洋における日本の調査捕鯨が不当に問題視される昨今、全盛時代の捕鯨船団とその作業の実態を知るには格好の物語です。
ただ、それだけのことで、何故、彼が小説の題材に選んだのかがよくわからないままでした。そのためか、筆者の熱気といったものが十分伝わって来ないまま読了に至りました。