何と言っても今回のお目当ては、世界が注目する若手ヴァイオリニスト服部百音である。
作曲家の父とヴァイオリニストの母を持ち、幼いうちから英才教育を受け、みるみるうちに才能を開花させて、名匠ザハール・ブロンにいち早く才能を認められ、ザハール・ブロン・アカデミーに通い指導を受けている。
スパルタ教育ともいえる厳しい母の指導に耐え抜く芯の強さと、祖父・服部克久、曾祖父・服部良一という血筋を継ぎ、持って余りある才能をザハール・ブロンに師事して磨き上げ、若くして世界各地のコンクールを制覇した19歳は、どの高みまで進化し続けるのか可能性は無限である。
演目はモーツアルトのヴァイオリン協奏曲 第5番 イ長調 K.219 「トルコ風」。
第三楽章の後半、急にテンポが上がるトルコ風という表題の由来となった個所、オケの低弦が打楽器のように刻むリズムと、彼女が紡ぎ出す弦の響きとが化学反応を起こしたかのように、小気味よい陶酔感に誘われてしまいました。
安っぽい芸能界にありがちな親の七光りなどとは全く異次元の芸術の極みを纏った、10代の演奏とは思えない完成度の高さでした。