桔梗おぢのブラブラJournal

突然やる気を起こしたり、なくしたり。桔梗の花をこよなく愛する「おぢ」の見たまま、聞いたまま、感じたままの徒然草です。

頓挫した無患子計画

2010年03月22日 23時10分46秒 | つぶやき

 無患子(ムクロジ)という樹があります。
 中部地方以西の山野に自生する落葉高木で、六月に円錐状をした淡緑色の花を咲かせ、秋には黄葉、十一月ごろになると実を結びます。

 ……と、書き始めましたが、関西在住の友に教えられるまで、私は無患子という名の樹があることは知りませんでした。

 奈良の春日大社参道には有名な古木があるそうです。高さ15・5メートル、幹の周り4・58メートル。
 春日大社のホームページにも紹介されています。春日山原生林にはたくさん自生しているそうですから、とくに珍しい樹というのではないようです。
 それなのに見たことがない、ということは? ……関東にはない樹なのかもしれない。
 そう思って、手許にある樹木図鑑をひもといてみると、「中部地方以西の山地に自生」とありました。
 道理で、ね……と納得しながら、正月、あいにく休園中で入れなかった国立科学博物館の「筑波実験植物園」に無患子の樹があったのを思い出しました。植物園にあるぐらいだから、やはり関東では見ることのできない樹だったのでしょう。

 ところが数日前、ひょんなことから無患子が関東地方にもある。それも我が庵から歩いて行けるところにあるらしいと知ったのです。
 そこは下総三十三観音の二十六番札所・観音寺というお寺です。松戸市の隣・流山市にあって、我が庵からはおよそ3キロ、四十分ほど歩けば行ける距離です。土曜日がやってくるのを待って、是非とも行こうと愉しみができました。



 無患子を教えてくれた友に、見たことがないし、関東にはないのかもしれないと伝えると、先の春日大社でひっぺがしたのか、落ちているのを拾ったのか、樹皮の断片を送ってくれました。わずか3センチ四方の小ささです。
 使い道もないので机の上に放り出してありましたが、急に見に行くことになったので、手許のペントレーに置くことにしました。
 植物図鑑で全体の姿をしっかりと頭に刻みつけたつもりですが、落葉樹で、春の芽吹きは取り分け遅い部類の樹だそうですから、いまの時期は葉がありません。この断片だけで見分けるのは非常に心許ないけれども、頼りになるのはこれしかない。

 万が一見つけられなければ、日を改めて埼玉県の北上尾というところまで行ってみるつもりです。
 龍山院というお寺の本堂前に、樹齢三百年といわれる無患子があると上尾市のホームページに紹介されていたのです。市指定の天然記念物になっていて、その旨の案内板もあるようですから、よもや見つけられぬということはありますまい。
 こうなったら、是が非でも見に行かずにはいられない。



 上尾市のホームページから拝借した画像です。左の巨木が無患子。


 ところが、ちょっとしたミステイクから土曜日は出勤が待っていて、無患子を見に行く計画は頓挫してしまったのでした。



 計画が頓挫するとは知らぬ金曜日。昼食を買いがてら周辺を散策。
 一輪だけですが、まさに開花せんとしている辛夷(コブシ)を見つけました。
 昼間はわりと暖かかったのに、夕方から冷え込んだので、完全な開花は持ち越しだったようです。



 染井吉野の蕾もこんなにふくらんでいました。

 さて、金曜日の夕方、得意先から、前日発送した商品に不備がある、との連絡が入りました。
 土曜着で送り返すということだったので、出勤しなければならないことになりましたが、これで無患子を見に行けなくなったわけではない。指摘された不備の部分はほんの数十分もあれば手直しすることができるからです。
 私の勤め先で使っているKYの宅配便なら、毎朝十時ごろまでに配達があり、午後五時に集荷があります。出勤しなければならなくなったけれども、遅くともお昼には解放されるだろうと踏んだわけです。

 ところが当日……。昼近くなっても配達がない。
 KYに問い合わせをしようと思って、得意先に連絡。送り状の控えをファックスしてもらうと、KYではなく、S急便でした。
 すぐ電話をしましたが、S急便では土曜から月曜にかけて三連休だろうと勝手に判断(なぜ勝手に判断するのか)して、車には積んでいないという返辞です。
 午前の便はすでに町を走り回っているので、積めるのは午後の便。届けられるのは早くても夕方五時以降だろうというので、ここにおいて無患子計画は破綻と決定しました。

 前々から春分の日と翌日の振り替え休日は出勤ということになっていたのです。世の中三連休の中で、たった一日だけあった土曜日の休みが消えて、無患子計画は敢えなく頓挫。次の日曜日まで日延べ、ということになりました。

 結局、S急便がきたのは五時半過ぎでした。手直しをして、再度送り返すために、近くにあるKY便の集荷所まで持って行ったころには、すでに真っ暗でした。そこで土曜出勤は幕。
 いつもの通勤路は通らず、大野城跡の中心部を切り拓いた道を通って帰ります。

 前もKYの帰りに寄った浄光寺。
 門は開け放たれていましたが、こんな時間に参拝するような酔狂な人間はおりません。
 折から猛烈な低気圧が発達中、というときだったので、ときおり身体ごと吹き飛ばされそうな突風が舞います。本堂の後ろにある木立がドウドウと葉を鳴らし、ちょっと薄気味悪い。

 お釈迦様は、百八つの無患子の実を糸で繋いで数珠をつくり、いつも身体から離さず念仏を唱えれば、災いを取り除き、正しきに向かう、といわれたそうです。
 流山の無患子が実をつけていたとしても、何もかも吹き飛ばしてしまうような低気圧が通過したあとですから、地面に叩き落とすだけでは済まさず、遙か彼方へ飛ばしてしまったかもしれません。
 百八個も集めて数珠をつくるのは無理だとしても、せめて一つか二つの実を得られたら、植木鉢に植えてみようと思います。


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