時々新聞社

慌ただしい日々の合い間を縫って、感じたことを時々報告したいと思います

夫殺害の妻に懲役15年の判決

2008年04月29日 | 社会問題
夫を殺害して、遺体を切断して遺棄した容疑者の妻に対して、東京地裁が懲役15年の判決を下した。
検察、弁護人の双方の鑑定医による「心神喪失」状態にあったとの鑑定結果に反する判決となり、その是非なども含めて議論になっているが、編集長は今回の判決を妥当なものと受け止めている。
裁判官も述べているように、警察での取調べに対して、犯行当時の状況をかなり覚えており、犯行後に夫が生きているように偽装工作を行ったり、遺体を切断して隠蔽しようとしており、「心神喪失」の状態にまでは至っていなかったのではないかと思っている。
夫による暴力や離婚協議の行き詰まりなどによる心身の疲れはあったと思われるため、求刑の20年を若干減刑した裁判官の判断は適切なものと思われる。
ところで、精神鑑定とはいったいどのように行われるのか、一般にはわかりにくい。
犯行後、何ヵ月あるいは何年も経ってから、犯行当時の精神状態を正確に把握することが果たして可能なのかという疑問が湧く。
そもそも、通常の精神状態で殺人などの犯罪を犯す人間が存在するのだろうか?どこか精神を病んでおり、人間としての理性や感情を抑制できなくなっているのが普通ではなかろうか。特に、犯行後に遺体を切り刻むという行為は、尋常な精神状態でできることではない。
とすれば、この種の犯罪の容疑者は、すべて「心神喪失」で無罪になってしまうことだろう。
ちょっと演技力のある容疑者なら、犯罪直後の警察の取調べや裁判などで、「覚えていない」、「気がついたら遺体があった」、「自分が殺したかもしれないが、朦朧としていて記憶がない」などと言い続ければ「心身喪失」で無罪を勝ち取ることも可能になってしまう。
また、「心神喪失」と判定され、凶悪事件を起こした容疑者が無罪となり釈放された場合、社会はどのような気持ちで彼らを迎えることができるだろうか。容疑者もまともな社会生活を営んでいくことができるだろうか。
今回の判決は、鑑定医の判断をほとんど採用しない内容になっており、新聞などでも、その点が議論になっているが、犯行後数年を経て行われる「犯行当時の精神状態」に対する鑑定の意味や信頼性についても大いに議論が行われることを期待している。