時々新聞社

慌ただしい日々の合い間を縫って、感じたことを時々報告したいと思います

薬害肝炎患者救済、患者を限定する和解案

2007年12月14日 | 医療・社会保障


薬害C型肝炎集団訴訟の大阪訴訟控訴審で、大阪高裁は、和解骨子案を原告の肝炎患者と被告の国・製薬会社に示した。肝炎ウイルスに汚染された血液製剤「フィブリノゲン」の投与をめぐり、国の法的責任の期間を最も短く認定した東京地裁判決の基準にあう全国各地の原告と今後の提訴者に限って和解金を支払うが、それ以外の原告には訴訟にかかった費用を出す内容。同判決にあてはまらない未提訴者の救済には触れず、国の主張を反映し、救済範囲を限定するものとなった。
患者全員救済を求める原告側は「被害者を製剤の種類や投与時期、提訴時期で線引きする不当な内容」と批判し、「受け入れ拒否」を表明した。
骨子案は、今年3月の東京地裁判決を踏まえ、フィブリノゲン製剤の投与をめぐって法的責任が生じる期間を、国については1987年4月~1988年6月、被告企業の田辺三菱製薬(大阪市)側は1985年8月~1988年6月と指摘。別の血液製剤「クリスマシン」も1984年1月以降、製薬会社に責任があるとした。この範囲で被告側が責任を認め、原告らに謝罪するという趣旨の文言も盛り込まれた。
そのうえで被告側は、(1)肝炎の発症患者に2200万円、感染者に1320万円の賠償を認めた同判決に沿い、この期間に投与を受けた人へ和解金を用意(2)それ以外の原告には「訴訟追行費」の名目で計8億円を支給(3)これらの総額は原告側に一括して支払い、分配は原告患者200人に任せる――などとした。骨子案は非公開で、総額は30億円余りとみられる。
高裁は、和解案提示にあたっての「所見」も当事者に示し、「全体的解決のためには原告らの全員一律一括の和解金の要求案は望ましいと考える」と指摘した。だが、国・製薬会社の過失時期の認定が異なる5地裁判決を踏まえればその内容に反する要求とし、「国側の格段の譲歩がない限り、和解骨子案として提示しない」と説明したと報じられている。
一体、何度薬害を起こせば気が済むのだろうか。
スモン、HIVそして肝炎など、本来人々の健康に寄与すべき薬剤によって健康が破壊されるという事態は、何としても避けなければならないことである。
特に、HIV、肝炎への感染は、薬そのものに問題があったわけではなく、薬に混入していたウイルスによるものだが、当時、まだウイルスの分離技術がなかったとはいえ、その被害にあった人を差別せずに救済すべきと思われる。しかし、裁判所としてはあくまでも現在存在する「法律」によって国や製薬会社の「法的な」責任を判断せざるを得ないため、限界があるのは致し方ない。その点から言えば、もう政治判断しかない。
今回の和解案での患者への支払い総額は、わずか30億円だそうだ。アメリカ軍への1年間の思いやり予算が1400億円、政党助成金が年額300億円であることなどを思えば、国民の健康や命の値段として、余りにも安すぎないだろうか。
線引きをしなければ、患者が無限に広がると国は主張するが、薬剤投与が確認され、肝炎に罹患している患者が無限に存在するはずはない。差別をせずに、救済の手を差しのべるべきだろう。