時々新聞社

慌ただしい日々の合い間を縫って、感じたことを時々報告したいと思います

労働災害のない社会を

2006年10月26日 | 社会問題
労災が認められなかった人のための国の再審査機関「労働保険審査会」で、不服申し立てを受けてから結論を出すまでの期間が極端に長期化し、「迅速に不服を処理する機関」としての存在意義が問われかねない事態となっているという。
最近は年度内に処理できない案件が毎年1000件を超えているのに対し、再審査にあたる委員はわずか9人しかおらず、結論までに8年以上かかったケースもあると報道されている。
仕事のストレスによる自殺など、時代とともに労災の範囲が広がり、今後も申請件数の増加が予想される中で、制度見直しを求める声が高まっている。
労災の申請は、まず地元の労基署に行い、認められない場合は都道府県の労働局、さらに厚生労働省の付属機関の労働保険審査会に不服申し立てをするという“3審制”になっている。
同審査会は「裁判を起こさなくても、迅速に不服を処理してもらえる機関」として1956年に設置された。労災申請件数は、過労による精神障害によるものが2001年度の265件から05年度には656件に増えるなど、救済範囲の拡大などで年々増加。これに伴い、再審査の請求件数も増え続け、1995年度に326件だったのが2005年度は463件に上っている。
これに対し、再審査を行う委員は医師らたった9人である。この9人が3つのグループに分かれ、合議で裁決を下すが、年度内に処理できず、次年度に繰り越す案件が2002年度以降1000件を上回り、2005年度は1164件に上ったという。
厚労省によると、現在、7年がかりの案件が2件、6年が8件、5年が37件あり、昨年3月に裁決が出た兵庫県の元保母の自殺事案では8年3か月かかった後に「不認定」となった。このケースでは、後に行政訴訟で労災が確定している。
厚労省は、再審査の遅れの理由として、労災申請自体の増加に加え、「精神障害による自殺など判断が難しい事例が増えている」点を挙げる。
この記事に接して、編集長は2つのことを痛感した。
1つは、再審査制度にふさわしく、人員を増員し、迅速な審査を行うこと。特に、疑わしきは、労働者の利益になるような裁定が行われることを望むものである。
いま1つは、そもそもこのような労働災害が増えている根源には、企業の人減らしによる労働強化が厳然と存在している。厳しいノルマや競争によって、過労やうつ病などの精神疾患を患う労働者が増えていることは容易に想像できる。他の人は何でもないことでも、精神的に弱い人は必ず存在するものである。
労働現場である企業への規制強化なくして、労働災害はけっしてなくならないのである。したがって、労働現場そのものへの規制強化、特に違法なサービス残業、上司によるパワーハラスメントなど、労働災害を根本から取り除く制度の確立、規制の強化を強く望むものである。