時々新聞社

慌ただしい日々の合い間を縫って、感じたことを時々報告したいと思います

「偽装請負」の根絶を

2006年10月05日 | 格差社会
「偽装請負」で急成長してきた企業が、今回事業停止処分を受けた。
この企業は、クリスタルグループに所属するコラボレートである。
この会社は、先日、本紙の「偽装請負」の記事で紹介した光洋シーリングテクノにも労働者を「派遣」していた企業である。
報道によると、クリスタルグループは、バブル崩壊後の15年間で年商を10倍近くに伸ばし、売上高が国内だけで5000億円を超え、グループ企業は昨春の時点で200社以上、従業員は12万9000人を数える隠れた大企業だそうだ。コラボレートが手がける製造請負はその中核部門だったが、「偽装請負」に対する批判の高まりなどによって、抜本的な転換を余儀なくされた。
クリスタルは、1974年に京都市で設立され、当初は工場の清掃の請負が主な事業だったが、やがてメーカーの人手不足(実質は人員削減)を補うために、製造請負に乗り出したという。
生産量の増減に合わせて人数を自由に調整でき、人材育成のコストも減らせる。人件費を抑制したい不況下の企業にとって、不法な製造請負(「偽装請負」)は都合の良いことだらけであった。
こういう「偽装請負」が労働者の給料を下げ、企業の収益を生み出す根源になってきたわけである。
一方、こういう「偽装請負」解消の動きに対して、企業側はその是正に消極的であり、ただ収益を上げるためだけに「偽装請負」を温存し、以前に本紙で紹介したように、日本を代表する世界的企業が法律違反を承知のうえで、「偽装請負」を続け、バブル期にも達成できなかったような莫大な収益を築いてきたのである。
最近では、賃金の安い外国人労働者との競争も激しくなり、請負単価もどんどん下落し、それにつれて派遣される労働者の給料も低下の一途をたどっているのである。
しかし、考えてもみよう。労働者の給料をどんどん削って、収益を上げるようなやり方や企業が自前で人材を育てないようなやり方を一体いつまでつづけることができるだろうか。また、低賃金で働く労働者が日本中に蔓延した時に、一体誰がその商品を購入できるというのだろうか。
熟練した労働者はどんどん少なくなり、技術力は低下し、「安かろう悪かろう」の製品が大量に市場に出回ることになりはしまいか。実際に、トヨタの大量リコールやソニーの製品回収といった最近の事例を見れば、一目瞭然ではなかろうか。この10年間、日本の技術力は、企業収益に反比例するようにどんどん低下し、国際市場でもその評価と信用を低下させてきたのである。
このような手法について、企業全体として反省する時期が来ていると思われるが、個々の企業は価格競争の中に置かれているため、解消に踏み出しにくい側面はある。しかし、「高くても優れている」商品を提供し、繁栄している企業は多い。このような方向にこそ、企業の未来があるのではなかろうか。
また、法律によって企業全体を規制し、このような「偽装請負」を根絶し、ワーキングプアと呼ばれるような低賃金の労働者をなくし、それによって消費を拡大することが日本経済の健全な発展にとって最も望ましいと思われる。
かつて、フォードは自社の労働者に他社の2倍以上の給料を支払った。やがて、その労働者たちがフォードの自動車を購入し、瞬く間にフォードを世界一の自動車会社に育て上げた。そのような思い切った資金循環を作り出さない限り、日本経済の成長は望めないと思われる。