時々新聞社

慌ただしい日々の合い間を縫って、感じたことを時々報告したいと思います

とんでもない難病患者への補助削減

2006年10月24日 | 医療・社会保障
特定疾患として医療費が公費補助されている潰瘍性大腸炎とパーキンソン病について、国は補助の対象を重症者に絞る方針を打ち出したという。
特定疾患は、原因不明で治療法が確立していない難病のことで、国は121種の疾患を指定し、このうち特に治療が困難で患者数が比較的少ない45疾患に医療費を補助している。重症者は無料で、重症者以外は収入に応じた自己負担となり、上限は月2万3100円である。
患者数が少ないと、治療薬が大量生産できず医療費が高額になる、治療できる医療機関も少なく通院が困難といった事情のためだ。
しかし、厚生労働省は早ければ来年度にも、パーキンソン病など2疾患については、重症者以外は補助対象から外す方向で検討を進めている。
そもそも121種の難病のうち、45疾患にしか補助を行っていないこと自体が患者の生存権を奪っているわけであるが、医療費の増大を理由にして、更にこの補助を削減しようとするのはとんでもないことである。
一般に、難病患者本人は通常の仕事に就けず、家族も看病などの必要から正規の職業に就けないことが多く、難病患者を抱える家庭は年収が低いことが多い。
補助が打ち切られると、一般の病気と同様に3割負担となり、自己負担は一気に月3万円前後になる。
厚労省は患者数5万人未満の疾患を医療費補助の目安としてきたが、潰瘍性大腸炎(約8万人)とパーキンソン病(7万3000人)の患者が多く、2疾患を合わせると患者数で29%、予算額で26%を占めている
潰瘍性大腸炎では補助対象者の66%が軽症で、パーキンソン病も5~7割が重症ではないと推定されている。両疾患の補助対象を重症者に限定すれば、40億円近くを削減できるというのが言い分である。
患者団体などは、今回の補助削減に強く反発しているというが、当然であろう。
国民医療費32兆円の中で、難病関連予算はわずか0.1%に満たない。補助打ち切りで難病患者に経済的な痛みを強いる割には、医療費削減効果はほとんどない。過剰な薬剤使用や検査など、圧縮できる分野はほかにあるはずだ。
特定疾患の予算は、病気の追加指定や患者増に伴って増え、今年度は約240億円にである。莫大な金額と言えば確かにそうであるが、軍事費や高速道路、鉄道建設などの大型開発につぎ込んでいる予算に比べれば微々たる数字ではないか。
国民の命に関わる予算が削減されることがないように、国は責任を持って対応してもらいたい。