時々新聞社

慌ただしい日々の合い間を縫って、感じたことを時々報告したいと思います

格差根絶のために行動を

2006年10月18日 | 格差社会
所得格差の最大の要因となっている派遣労働であるが、その中でも特にひどいのが偽装請負である。
本紙でも何度か取り上げてきたが、今日は明るいニュースに接したので、紹介しておこう。
キヤノンの工場で働く請負労働者が、違法な「偽装請負」の状態で働かされてきたとして、労働組合を結成し、18日に正社員として雇用するようキヤノンに申し入れたそうである。この中には、キヤノンで10年間も働いている労働者もおり、「正社員になって、いいものづくりをしたい」と訴えている。
宇都宮光学機器事業所でレンズの製造などに携わる4人が18日昼、労働組合東京ユニオンのメンバーらとともに、東京都大田区のキヤノン本社を訪れ、要求書を会社側に手渡したという。
要求書によると、組合に入ったのは17人で、全員が今年5月までの1年間は派遣労働者として働いたが、それ以外の期間は、キヤノンから製品の生産を請け負った人材派遣会社の労働者として働いた。ところが、その間も「実際はキヤノン側の指揮命令を受ける偽装請負が続いていた」という。
このような偽装請負は、実質的には派遣状態とみなされる。17人は1年以上働いているので、労働者派遣法で定めるメーカー側の直接雇用の申し込み義務が適用されると主張している。
キヤノンで6年半働いているという男性(31)は「世界一のレンズを自分たちが造っているという誇りがある。できることなら正社員になってこれからもそれを造り続けたい」と述べた。
キャノンでは、宇都宮工場や子会社の大分キヤノンなどで偽装請負が発覚し、労働局から昨年文書指導を受けた。今年8月には「外部要員管理適正化委員会」を設置し、年内をめどに偽装請負の解消を目指しているとのことである。
このニュースを見て、編集長は2つのことを痛感せざるを得なかった。
1つは、昨年の時点で文書による是正指導を受けておきながら、未だに解決をしていないキヤノンの姿勢についてである。その気があれば、すぐにでも解決できることではなかろうか?サボタージュもいいところである。企業の社会的責任ということが言われるようになって久しいが、日本の大企業は、こういう最低限の自浄作用さえ失っているのが現状であり、誠に情けないかぎりである。
もう1つは、日本社会の抱える問題や矛盾について、評論家のようにあれこれと批評をするのは大変やさしいことである。肝心なのは、それらの問題を実際に解決することだろう。今回の事例のように、声を上げ、行動を起こすことなくして、自らの生活や社会のあり方も変えられないということである。
個人の努力も大切であり、これは私も否定はしない。しかし、さまざまな社会の矛盾を生み出している政府や官僚機構、企業などは、財政的にも組織的にも巨大なものである。これに対して、個人はあまりにも非力である。同じ志を持つもの同士が、力を合わせることなくして、個人の幸福は得られないのである。
まだ、この17人が正社員としての地位を確保したわけではない。17人全員が今後の人生をキヤノンの正社員として過ごせるようになることを心から願っている。