時々新聞社

慌ただしい日々の合い間を縫って、感じたことを時々報告したいと思います

格差社会への対応

2006年09月10日 | 格差社会
昨夜のテレビ朝日で放映された「緊急特番!!仰天格差社会ニッポン!」という番組を見た。
それなりに、現代社会の矛盾を告発する内容になっていたが、結論はどうもいただけない。
番組の中で、森永卓郎が今のような格差社会が出現した原因について、以前は派遣労働に対する業種が特定されていたが、その後の規制緩和、派遣労働法の「改正」によって、一般事務労働はもとより製造現場にいたるまで、ほとんどの業種に拡大されたことが述べられていた。
以前にも本紙の中で格差社会について論じたことがあるが、規制緩和の名の下に、派遣労働があらゆる業種に認められるようになったことが、現在の賃金格差、収入格差の根本的な原因である。
収入の格差はそのまま結婚や子供の教育、健康、老後の生活資金などの格差につながっていることは明瞭であろう。
これに対して、番組が提供した答えは、余りに貧弱なものであった。
女性のコメンテーターは、生活保護制度を取り上げ、それを就労や教育支援などのバックアップ機能を兼ね備えたものにする必要があると主張していた。この主張には、一定賛同できるものがあるが、そもそも、生活保護などがなくても自立できる、働く意思のある者がきちんと正規職員として働けるような社会の仕組みを作ることが重要なのではなかろうか。
また、都会のサラリーマン暮らしを捨て、田舎で自給自足に近い農業に取り組み、年収300万円でも豊かな生活が送れるという例が紹介されていた。この例などは、森永氏の著書(「年収300万円時代の経済学」)に対応した内容である。
確かに、豊かさというものは、経済的な基盤によってのみ成り立つものではなく、編集長もこうした田舎生活に憧れている一人である。しかし、個人の努力や工夫によって、格差社会を乗り切れるという主張には賛同しがたい。
このような格差が生まれた最大の原因は、森永氏も主張しているように、規制緩和によって、派遣労働の業種をどんどん拡大し、さまざまな業種で企業が安い労働力をふんだんに利用できるようになったことが最大の原因である。また、偽装請負など、違法な派遣労働を野放しにしていることに最大の原因がある。「規制緩和」という言葉を聞くと、庶民の多くは何か新しいことが行われると期待をするが、この労働者派遣法の実態は、企業の儲けにとって不要あるいは邪魔な「規制」を撤廃しただけの話であり、賃金の切り下げに道を開いた最悪の法律「改正」であったことは間違いない。
読者諸氏は、ボトム10という言葉をご存知だろうか。ある外資系企業では、能力主義を導入し、成績評価の悪い(言い換えれば、会社にとって都合の悪い)10%の社員に露骨な退職干渉などを行っている。個々人が努力しても、社員全員が平均点以上の成績を取ることは理論上まったく不可能である。ボトム10を退職させた後には、また新たなボトム10が出現し、退職を強要されるという悪循環を生むのである。
したがって、個人の努力次第で、年収が下がっても生活できるなどという番組の結論はどうもいただけないのである。
個々の国民は、自らの努力や能力開発を怠ってはならない。それは当たり前である。しかし、多くの国民が、現在の格差社会に矛盾を感じているのなら、規制緩和の名の下に行われてきた派遣労働、不安定雇用を元に戻して、企業に対する規制強化を改めて行うよう政府に要求することなくして、現在の格差社会を解決することは不可能であろう。