阿部ブログ

日々思うこと

中国・四川省における主要な核施設

2012年11月06日 | 日記

2008年5月12日に発生した四川大地震で、同地に集中する核関連施設が大きな被害を被った事は良く知られている。
これは1960年代中期に毛沢東が内陸部に主要な核関連、及び軍事施設を移動させた事による。銃後の構えだ。
特に軍事工業都市と位置づけられた四川省の北川県や安県を含む棉陽市、江油市、楽山市に核研究施設(通称2機部)、兵器工業部(通称5機部)、宇宙開発企業(通称7機部)の関連施設が集中的に建設された。

四川省内の核施設は、確認されているだけでも研究用原子炉×1、核燃料生産施設×2、核兵器製造施設×2が配置されていると言われるが、このほか、軍関連の中国空気動力研究及び発展中心、中国燃料気渦輪研究所など国防研究所が18個所所在すると言われている。

特に棉陽市には核兵器開発に関する構造設計など主要な研究所群が存在し、実験用の小型原子炉がある。また棉陽市の北には金属プルトニウムを小型の球体に加工する特殊工場があり、更に西には核弾頭爆発を増強させるための素粒子に関する特殊用途の高速中性子炉炉がある。それと同市の北部には実戦用核兵器を貯蔵する大規模な秘密トンネル網が存在すると言われる。

毛沢東の指示により、中国原子力研究設計院は、中国初めての核兵器研究基地である第221工廠を1968年に青海省から四川省棉陽の西南物理研究院に移動させた。因みにこの第221工廠は1964年初めてイスラエルと共に原子爆弾を製造(実態は組み立て)した工廠である。
この第221工廠を皮切りに四川省近傍に原子炉や実験研究施設など多数建設し、これ嚆矢として中国における原子力工程実験研究が本格化した。

以下に四川省地区における主要な核関連施設(軍需・民需)を列記する。

◎中国核動力研究設計院(Nuclear Power Institute of China (NPIC):成都)
NPICは、中国最大の大型設計研究所で人員は3,700名以上と言われる。NPICは、国家科学技術委員会の支援を受け原子力の安全性と経済性を高める研究を実施しており、その為、その隷下に原子炉工学研究所、原子炉設計研究所、原子炉運転研究所、原子炉部品材料加工研究所など4つの研究組織を有する。

◎原子炉工学研究所(反応堆工程研究所)は四川省狭江県南郷に所在し、高中性子束炉(燃料照射、材料照射用、125MW、1979年運転開始)j。同研究所は、臨界集合体HFETRC、ホットセル、5MW低出力炉(同位元素製造用)、Co-60ガンマー線照射設備他を有する。

◎西南物理研究院(Southwestern Institute of Physics (SWIP))は成都に所在し、核融合研究(トカマク、逆磁場ピンチ)の研究を実施している。主要装置は、HF-1、HL-1 M、HL-2A、及びスイミングプール炉(3MW)など。

◎中国工程物理研究院(China Academy of Engineering Physics (CAEP))(第902工廠)棉陽市・・・前身は西北核兵器研究設計院(国防第9研究院)であり、現在第839核工業基地で研究開発を行っている。同市の北部の山間部は大規模なトンネルが掘られ核兵器庫となっている。
この第902工廠は、1958年設立で12の研究所、100余の研究室、30以上の生産施設があり、職員は8000を超える大規模なもの。
また、この工廠は核兵器の設計研究機関としては、有数の原水爆開発功労者を輩出している。例えば于敏、王淦昌、周光召、彭桓武など。
多数の研究組織から構成される研究院であるが、その担当する分野も広範囲に及び核物理、プラズマ物理、レーザー、材料科学、光電子科学と最新のコンピューティング研究と応用数学の研究も実施されている。

◎中国原子武器研究基地:棉陽市

◎西北原子武器研究設計院(国防第9研究院):棉陽市

◎楽山原子聚変研究院(第858工廠):楽山市・・・前身は長春第503工廠であり、遠心分離法によるウラン濃縮工場で200tSWU/年の能力があると言われる。

◎第821工廠:軍用Pu生産炉(1,000MWth)と再処理工場を有する。広元市に所在。

◎宣賓核燃料工場:核燃料再転換と燃料成形加工(PWR燃料製造)

◎西南物理研究院:棉陽市 1968年青海省から移転、前身は1964年原子爆弾第1号の製作に成功

◎峨眉機器製造工場(第525工廠):峨眉山市

◎中国第3家原子能生産連合企業(第814工廠):楽山市 4万人規模の工場・・・中国の三番目の原子力生産企業で、重水工場でもある。

◎?陵原子燃料組立工場(第816工廠):現在は大型化学肥料工場に転換しているが、昔は燃料部品工場で原子弾頭を製造。

◎中性子爆弾製造工場(第857工廠):江油県に所在し、名前の通り中性子爆弾を製造。

◎四川原子工業工程学校(都江堰分校、夾江双福基地)

◎四川宇宙開発技術研究院:中国宇宙開発科学技術集団公司に属し、宇宙開発製品の生産基地、兵器開発生産基地である。

◎総装備部中国空気動力発展研究中心:本部は棉陽市、各研究所は安県の各鎮にある

◎白竜江原子基地(第821工廠):中国第2原子能生産連合企業(広元市)3万人規模の工場で核弾頭を生産し、中国最大の原子炉が所在する。同社は中国最大のプルトニウムの主要生産メーカ。

◎第23原子工業建設総公司(広元市)四川大地震の時は棉陽基地管理処、広元基地管理処の2か所の被害が甚大。

◎第24原子工業建設総公司(棉陽市)

◎原子力関係機器製造機関・施設としては以下のものがある。

①東方電気(本部は成都):火力・水力・原子力発電機器製造(原子力分野では仏アルストムと提携)子会社の製造工場が四川省綿竹市にある。

②中国二重社(旧第二重型机械集団公司)(本部は四川省徳陽市(Deyang))鍛造工場などを保有。即ち圧力容器製造を行う。

最新の画像もっと見る