フクロウは夕暮れに

接触場面研究の個人備忘録です

データ共有におけるデータ収集者とデータ受給者の関係

2006-12-28 12:35:49 | research
26日は科研研究会を行い、久しぶりに科研メンバーと意見交換をすることが出来ました。8月のニューヨークの後、それぞれの活動に戻っていましたが、ようやく時間が取れたので懸案の事項をいくつか話し合いました。

もっとも時間を取ったのは、データを共有するときの原則の問題です。データを共有する事は、研究を発展させるためにもっとも有効な方法だと思います。とくに教室研究など、データ収集が容易には出来ない分野については、データを共有して比較が可能になるようにすることがとても大切です。科研で授業コーパスを構想するというのはこうしたデータ共有を実現するための第1歩というわけです。

(蛇足ですが、いじめ問題などでも実際の教室、学校に入ってデータを収集することが進められるなら、本当は何が問題なのか、多くの知見が得られるはずです。しかし、そうしたデータ収集を許可されることは残念ながらまれであって、あいかわらず「専門家」や「オピニオン・リーダー」と言われる人が深い洞察や臆見やヘンケンで争鳴しているのが実情です)

さて、データ共有では、調査協力者(被調査者)、データ収集者、データ受給者の3者の尊厳が守られることが重要になります。調査協力者については以前にデータアクセスの制限レベルについて紹介したことがあるので、今回は、データ収集者とデータ受給者の関係を中心に相談の結果を書いておきます。この議論にはもちろんCHILDESの原則やそのCHILDESが参考にしている医学系のデータ共有組織の原則が元になっています。

結論から言うと、以下のようなことが一応の案として決定しました。

(1)データ提供者は主要な研究成果を発表するまで占有的にデータを使用する。 ただし、占有的に使用出来るのは科研終了後4年(2011年)を目安とする。

(2)データ1次受給者(科研グループ)は、データ提供者の許可を得て、データ使用が出来る。データ1次受給者に対するデータ使用許可は、研究テーマが重ならないこと、1次受給者の使用するデータの母集団の中でそのデータ提供者のデータの割合が3分の1以下であることを基準とする。

(3)データ一般受給者(コーパス利用者)は科研終了4年後(2012年)にデータ使用が可能となる。その際、使用可能なデータは、文字化資料と音声資料に限られる。

以上のように、データ収集者の労力というものを尊重して、占有できる期間を設けること、科研グループには、データ使用は出来るがデータ収集者との信頼関係を損なわない条件をつけておくこと(科研グループは映像データも使用可)、一般受給者は期間的な制限と、調査協力者の保護を目的にデータの種類の制限をもうけておくということを考えました。

このへんが妥当なところかと科研グループでは相談したのですが、皆さんのご意見も伺いたいところです。
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