フクロウは夕暮れに

接触場面研究の個人備忘録です

オーストラリアのムスリム

2005-08-27 12:45:28 | today's focus
オーストラリアではこのところ、ブッシュの戦争を応援する側として、またロンドンのテロを受けて、忠誠心による締め付けが急務になっているようです。とくにイスラム教徒たちの団体がテロリストの温床にならないようにすることを政府は公言しています。

先日も多言語放送SBSで有名なジャーナリストがムスリム団体のスポークスマンに対して厳しい質問をしていました。イスラムの教えとオーストラリアの法律とはともに共存できるのか、あなたたちはどちらを尊重するのか、といった感じです。

首相はじめ政府関係者はオーストラリアに来たいと言った人間がオーストラリアに忠誠を誓うのは当然のことで、オーストラリアの精神を尊重しない人間は他の国へ行けばよいと述べています。しかし、こうしたアネクドートが、どの国も難民を受け入れる義務があるとする国連憲章をまったく念頭に置いていないこともまた明らかですね。

ニューサウスウェルズ州のある大学の学長もまた外務大臣から「危険人物」の講演をなぜ許可したかと不満を伝えられ、危険な兆候についてはつねに法に則ってモニターしているが、その限りでの自由な発言を大学は支持していると述べざるを得なかったようです。

ブッシュの時代の西側に属していると信じているオーストラリアにおいて、反対のビジョンを語ることは非常に努力のいることのようです。私はと言えば、その昔、内村鑑三が同じような不寛容に直面して2つのJについて述べたことを思い出したりしていました。信頼をベースにおいた多文化主義のオーストラリアと、現在のオーストラリアは大きく違っていると言わざるを得ません。
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The last day in Melbourne

2005-08-27 12:30:15 | Weblog
もうメルボルン最後の日になってしまいました。昨日あたりからコートがなくても外を歩けるようになり、いよいよ春の到来です。

今週はモナシュ大学の図書館に通って少し資料を探していました。10月から授業で初めて言語政策について話すことにしたので、そのためにオーストラリアの言語政策の重要な報告書をコピーしたりしていました。言語政策が報告書として何冊も出ているというのはやはり驚きではないでしょうか?89年の多言語主義を全面に出した報告書と91年の英語重視の報告書ではがらりと政策の色彩が変わっていますが、私がオーストラリアで仕事を始めたのは89年の報告書に基づいてたものであり、91年の報告書による政策の変更を何となく感じながら94年まで仕事をしていたということになります。こうした政策についてほとんど念頭におかずにあの頃は仕事をしていたのですね。
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モナシュ大でlunch

2005-08-19 17:32:15 | Weblog
書き忘れましたが、17日(水)はモナシュ大でヘレンさんらと昼食をご一緒しました。恒例になっている水曜日のリサーチセミナーの予定をみせてもらうと、SwainやNorton-Pierceなどを呼ぶことになっているようです。なかなか活発ですね!
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中国人日本語話者の会話研究

2005-08-19 17:26:43 | research
今週は、Quick Time Playerに録画した会話データを見ながら、接触場面における中国人の日本語会話を見ていました。さまざまな会話維持のストラテジーが使用されており、日本人参加者よりずっと会話維持に関心があることがわかります。逆に言うと、沈黙に対する許容度が低いのだろうと思います。日本人側には言語ホストとして相手の発話を待つ傾向が顕著になることも無視できないのですが、中国人側が超上級のため、大きな影響はないだろうと思います。

沈黙の原因を調べていくと、中国人側がまとまった話をした後に、日本人側が相づち的発話で終わらせたときに、沈黙が多く生じていることがわかります。これは中国語の会話システムでは、次の話し手がすぐにまたまとまった話を始めるということがあり、それを期待していたにもかかわらず、日本人側が開始しないことからくるものではないかと思います。細かな分析に手間取りましたが、結論は予想の範囲内ですね。
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贈与論

2005-08-16 16:25:05 | today's focus
久しぶりに分野外の本を読んでいますが、もう25年も前に出版された『中世の風景』(中公新書)もその中の2冊(上・下)。私の学生時代に確か買った気がするのですが、成田空港で購入してしまいました。25年前の論客(網野善彦、阿部謹也という気鋭に対して既存の伝統のしがらみが抜けない樺山紘一、石井進という顔合わせ)の日本とヨーロッパの中世を比較して問題点を探していくとても刺激的な書です。25年の間に彼らの語られた事柄がすでに常識としなっているのかどうかなのか私にはわかりませんが、興味深かった論点の1つに贈与論があります。

阿部氏がモースの贈与論から中世の転換期を語っていて、中世前期までのヨーロッパ(特にゲルマン世界)では、交流も経済もギフトによるものが中心だったのに対して後期からは貨幣経済が中心になっていったとあります。

ここからいろいろ想像をかき立てられることがありそうです。現代はもちろん貨幣経済による社会なわけですが、贈与の慣習や観念が微妙にその経済生活に影響を落としているし、その影響のありかたは社会によって違うように思います。

たとえば、中国人についての調査などをすると、贈り物がとても多いし、レストランなどでもだれがお金を払うかでものすごいタクティクスを使うわけです。日本でもお中元、お歳暮、そして賄賂など多くの贈与習慣が見られます。ただし、こうした贈与のコミュニケーションを見てみると、どうしても貨幣経済に対するリアクションとして贈与の何を強調するかに関する焦点がちがってくるようです。

日本では贈与であることをことさらに強調することで、貨幣経済とはべつなことを示そうとしているように思います。過剰な包装はその例でしょうか。それに対して、中国などでは贈与であることを隠すようにして、貨幣経済との対照をしないようにしているようです。連れ合いによると、香港人がお土産をデパートで買ってもその包装を取って裸のまま、まるで自分の家にあったものを持ってきたかのように示そうとすることがあるそうです。
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鯨とのコンタクト

2005-08-15 16:57:36 | Weblog
子供がこちらの小学校に通っているので、週末しか遊べないのですが、先週末はメルボルンから250キロほど離れたWarrnamboolからGreat Ocean Roadを走ってきました。Warrnamboolは綺麗な港町ですが、その海は鯨が冬に滞在することで有名なのだそうです。クジラ?とは思ったのですが、朝、さっそくいってみて、なぜそんなところに人が集まるかすぐにわかりました。

海の向こうにはもう何も隔てるものもなく、南極があるばかりですが、そんなところに鯨を見に来るというのは、なにか人間よりも大きくて、不思議なcreatureに遭ってみたいという気持ち、コンタクトを取ってみたいという気持ちに根ざしているのだと思います。コンタクトというのは、レムの『惑星ソラリス』の主要テーマなのですが、鯨も巨大な他者なのだと思います。
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メルボルン到着

2005-08-07 16:54:50 | Weblog
5日の朝、快晴のメルボルンに到着。

冬のメルボルンは雨の多い季節ですが、5日、6日とよい天気が続きました。レンタカーを借りたり、アパートを借りたりして1日が終わりましたが、昨年のフラットのとなりのフラットで、少し内装が新しいので、少しだけ幸福になりました。

夜、外に出ると、千葉では考えられない星の数々です。1年ぶりに南十字星と対面しました。しばらく完全休養します。その間に休暇の仕事の体制を作ることにします。
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アメリカの第1歩

2005-08-04 00:19:45 | old stories
81年の8月下旬、ビジネスクラスのチケットでアンカレッジを経由してぼくはJFK空港に到着した。シガーや葉巻の濃い臭いが漂う空港からシャトルバスまでの通路を歩いていくと、大男の警官が手持ちぶさたに立ちながら、掃除夫の男と話していた。何と太い声!何とドスの聞いた話し方!それがアメリカの最初の記憶だ。

そもそも日本人はふつうに話すときの声が小さい。だから、香港の義理の両親の家でご飯をごちそうになるときなど、最初のときは奥さんにずいぶん叱られたものだ。そんな小さい声で言うホウメイはおいしくないという意味だよ!(国際結婚は、こんなことの繰り返しです)

マサチューセッツ州に赴く前の数日、NYに遊んだ。天気はもう秋の透明な空が広がっていた。チャールズ皇太子とダイアナ妃の結婚パレードの映像がショウウィンドーの大きなテレビに映し出されていた、それは時期からすると、録画ものだっただろう。最初はワシントン広場の近くの安ホテル、それからもう少し北上したところにあるYMCAに泊まって、ただただNYを歩き回った。明らかに旅行者の格好のはずなのに、アメリカ人が道を聞いてくるのには驚いたものだ。

写真は今はなきワールド・トレード・センター屋上からのマンハッタンの眺め。これについて何をコメントすればよいだろう?
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オープン・キャンパス

2005-08-03 23:57:02 | Weblog
今日も蒸し暑い1日でした。このところ30度以上が続いています。でも去年みたいなことにはまだ関東はなっていないのでよしとしますか。

午後から文学部のオープン・キャンパスという名の2時間の説明会をやってきました。200人ほどの高校生で満員の教室で、文学部、学科の説明をしてみました。まあ、ぼくが説明をやってもピシっとはいかないので、冗談を言いつつ、大切なこと大切でないことをいいながらで、きっと煙に巻かれたことでしょう。文学部は現在の社会を前提にし、社会に機能する人間を生産するところではなくて、その社会の前提を深く理解し、疑い、新たな社会を構想する人間を育てたいと思っている、などと啖呵を切ってしまいましたよ。
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今年度第1回の科研研究会

2005-08-03 00:05:52 | research

千葉大で授業コーパス科研の研究会。2時から5時過ぎまで。
出席:村岡、吉野、横須賀、田中、大場

気温はたいしたことはないのですが、とにかく蒸し暑くて苦しいです。
国際開発教育センターの教室をお借りして、研究会を行いました。

1.今年度の予算について
とくに謝金の配分について、じつはあまりお金がないことがわかって、適当な時期にそれまで取りためたデータ数を数えて、データ収集の抑制をすべきかもしれないと話し合う。

*謝金アルバイトの人たち用の書類を配布。

2.今年度の研究会の予定について
Tentativeに以下のように決定
第2回研究会:9月28日または9月21日の午後4時半から
第3回特別講演会(山下先生にお願いか)
第4回研究会:12月23日

3.研究進捗状況報告
(1)村岡・田中の実践知研究
(2)横須賀さん、学部の中級・上級クラスの縦断研究
(3)吉野さん、10月からの中級クラス

最低限の記録としての調査記録表についてその項目を検討。改訂版をつくること。

4,暫定的な文字化規則の検討
・同時発話について、話順番号はどうすべきか?この問題は、話順番号をつけること自体が分析になるため、文字化作成者にお願いすることには無理がある。簡単に作成できる方法を探すべき。

5.Quick Time Playerのデモンストレーション
・分析用として使えそうという反応でした。よかったよかった。

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