今月はじつに久方ぶりに(すみません、少し文学風になりました)文芸誌『新潮』と批評誌『現代思想』を買った。
『新潮』には北杜夫と辻邦生の書簡が掲載されている。本屋ではすでに売り切れになっていたのであきらめかけていたら、なんとヤマダ電気に売っていた。さすがにヤマダ電気で文芸誌を買う人はいなかったようだ。北杜夫がその昔、マグロ調査船で出かけたパリで旧制高校時代からの友人、辻邦夫に再会して別れ、日本に戻ったところから書簡は始まり、辻邦生が足かけ5年のパリ生活から戻ってくるところで終わっている。ちょうど60年前後の頃の話だ。辻邦生はギリシャ旅行後に小説を書き始め、北杜夫は芥川賞を受賞する、そんな小説家誕生の時期の友情がよく伝わってくる。森有正が『どくとるマンボウ航海記』を読んで驚嘆していたというエピソードも挟まれている。もちろんトーマスマンや埴谷雄高も。
『現代思想』は昨年物故した加藤周一特集。加藤周一は二度横顔を見ている。一度目はモナシュ大学で講演に来たとき。二度目は神保町の岩波ホールの交差点でタクシーか何かを待っているのを見たとき。じつに風貌の立派な大人物風であった。特集では、林達夫と加藤周一の比較をしている文章があって面白かった。実に似た知性のかたちと生活の姿勢を持っていたのに、体を悪くして亡くなる直前に、林達夫は読みたい本の話をし、加藤周一は書きたい本の話をしたところに違いが現れているという視点は少しだけ面白い。僕なら、林達夫の含羞と加藤周一のロマンティシズムについて比較するかな。
いずれもぼくの学生時代のスターたちだ。こちらはできの悪い学生然として、いつまでも読者の席に座っている。
『新潮』には北杜夫と辻邦生の書簡が掲載されている。本屋ではすでに売り切れになっていたのであきらめかけていたら、なんとヤマダ電気に売っていた。さすがにヤマダ電気で文芸誌を買う人はいなかったようだ。北杜夫がその昔、マグロ調査船で出かけたパリで旧制高校時代からの友人、辻邦夫に再会して別れ、日本に戻ったところから書簡は始まり、辻邦生が足かけ5年のパリ生活から戻ってくるところで終わっている。ちょうど60年前後の頃の話だ。辻邦生はギリシャ旅行後に小説を書き始め、北杜夫は芥川賞を受賞する、そんな小説家誕生の時期の友情がよく伝わってくる。森有正が『どくとるマンボウ航海記』を読んで驚嘆していたというエピソードも挟まれている。もちろんトーマスマンや埴谷雄高も。
『現代思想』は昨年物故した加藤周一特集。加藤周一は二度横顔を見ている。一度目はモナシュ大学で講演に来たとき。二度目は神保町の岩波ホールの交差点でタクシーか何かを待っているのを見たとき。じつに風貌の立派な大人物風であった。特集では、林達夫と加藤周一の比較をしている文章があって面白かった。実に似た知性のかたちと生活の姿勢を持っていたのに、体を悪くして亡くなる直前に、林達夫は読みたい本の話をし、加藤周一は書きたい本の話をしたところに違いが現れているという視点は少しだけ面白い。僕なら、林達夫の含羞と加藤周一のロマンティシズムについて比較するかな。
いずれもぼくの学生時代のスターたちだ。こちらはできの悪い学生然として、いつまでも読者の席に座っている。