フクロウは夕暮れに

接触場面研究の個人備忘録です

大会1日目

2008-04-04 02:10:17 | I AMSTERDAM
今日から3日間の大会です。午後からアムステルダムの自由大学までトラムに乗って出かけました。自由大学は見たところそれほど立派でも歴史があるわけでもなさそうで、大学の雑な雰囲気が感じられます。

コーヒーブレークでようやくこの学会に誘ってくれたNekvapil教授に出会うことができました。Nekvapilさんと共同でパネルを組織したSpolsky教授とも挨拶が出来ました。Nekvapilさんとはもう3年越しになっている本が6月にでるという話や、6人のパネルで言語管理をやっているのはNekvapilさんと私とファンの発表だけだからがんばろうとか、そんなことを話して別れました。

午後の発表は3人の個人発表を聞きましたが、やはり研究テーマが近いのでわかりやすいし、親近感があります。一人は、デンマーク語とドイツ語のバイリンガルの子供たちの話で、デンマーク語の小学校ではきびしくデンマーク語だけ話すプレッシャーがあり、ドイツ語の小学校ではcode-switchingにあまり厳しくないという違いがあると、子供たちのストラテジーも違ってくる。ドイツ語小学校の子供たちは目に見えるcode-switchingをするけれど、デンマーク語小学校の子供たちは目に見えないcode-switchingをするというのです。そしてそうしたcode-switchingは、転移ではなく、ストラテジーなのだと言いたいんですね。これはじつはほとんど言語管理の内容なのだと思います。

もう1組は、ブリュッセルの企業がどの程度多言語話者を求めているか、他のヨーロッパの都市ではどうかといった話でした。面白かったのは、ベルギーにおける言語意識ですね。ブリュッセルはフランス語とオランダ語を公用語とするところですが、政治的な理由でバイリンガル教育は認められていない。社会レベルではフランス語とオランダ語のバイリンガルは、敵同士というと語弊がありますが、お互いにライバル関係にあるベルギーの2つのコミュニティの両言語を使う人間となって、かなり変な人間と見られてしまうのだそうです。だからこの2つの言語の組み合わせにもう1言語、あるいはもう2言語話せると、それは問題としては見なされなくなる。などなど、多言語使用については実例がいくつも出てきます。

去年から早稲田の宮崎さんが多言語主義ではなく複言語主義でしょうということを言っていましたが、こちらの学会ではmultilingualismという言葉が飛び交っているので、もうしばらく多言語主義でいこうかと思った次第です。
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