フクロウは夕暮れに

接触場面研究の個人備忘録です

開始の達人と評価の達人

2009-12-23 15:50:28 | today's seminar
昨日で今月の授業は終了。今学期の大学院では授業コーパスをつかって教室談話の分析を試みている。まずは基本ということで、Sinclair and CoulthardとMehanの授業モデルをつかってビデオと文字化資料を見ていた。

アプローチは違うが、どちらのモデルもInitiation-Response-Feedback, Initiation-Response-Evaluationと3部発話連鎖があり、2人の教師の授業ビデオを観察していくと、それぞれ、initiationとevaluationとが特徴的なことに気がついた。一方の先生は授業計画がきちんとできあがっている教師でテンポよくinitiationを使ってコミュニケーションを進めていく。ただし、次の次を考えながら発問をしていくので、1つの発問をしている間に次の活動をしている(縄文時代っていつですかと聞きながら、手と目は黒板に貼るためのカードをそろえている、みたいな)。学習者にはわかりやすい授業ということで評判が良いらしい。

もう1人の教師は、initiationのときはむしろ小さな声で目立たないように言うのだが、evaluationのところでは、フィラーなどを使いながらたっぷり時間をとって、学習者が発言できるスペースをつくり出していく。期待していない応答や、学習者の自発的な発話に対しても対応しながら自分の計画にのせていく。この教師の授業では学習者の活発な発話が目立つことになる。あるときには、学習者同士が英語で単語の意味を検討しはじめて、教師が置いてけぼりをくってしまうのだが、しばらくしたところで「わかりませ~ん!」と言ってそのグループのコミュニケーションに入っていき、同時に授業のコントロールを取り戻す、といったストラテジーもごく自然に援用するわけだ。

最初の教師が「開始の達人」と言えるなら、あとの教師は「評価の達人」と言えるのかもしれない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

浅草寺師走小景

2009-12-20 23:32:13 | Weblog
先週は上野公園を散歩したが、今週末は浅草寺。つれ合いが教えている留学生たちを連れて行くというので、天気もいいし、いっしょについていくことにした。

朝から仲見世の通りはすごい人で、なかなか歩くことができないくらい。もう何年も来ていないので、どうかと思ったが、まあ変わっているというわけではないようだ。ただ、聞こえてくる言葉はじつにさまざまで、中国語、広東語、ベトナム語、英語、オランダ語(?)など、ほんとうに外国人の観光客が多い印象。お店も外国人相手のお土産屋が軒を連ねている。本殿前の焼香でも、写真の二人の女性は、きっと外国の人なのだろう、その国のやり方でお祈りを捧げているように見える。

じつは浅草寺周辺は、仲見世だけではないのだけど、留学生もいるのでいろいろ徘徊するわけにはいかない。そこから隅田川まで歩く。スカイツリーなる第2東京タワーが200mばかり伸びて、すぐ目と鼻の先に見える。川縁におりて、そこから遊覧船に乗って、浜離宮、日の出桟橋まで観光。そこからゆりかもめでお台場。じつはここは初めてで、フランスの自由の女神のコピーを拝んできた。浅草寺の聖観世音菩薩と自由の女神を拝んでおけば、来年も安泰だろう。

気づいてみれば、すでに今年も10日ほどである。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

菊地君の博論文審査会

2009-12-17 23:03:38 | today's seminar
今日は手話研究をしている菊地君の博論審査会だった。

ぼくは手話を学んだことはないけれども、日本手話と日本語対応手話の違い、聾者と聴者の手話には聾者の側からのフォリナートークが現れることなど、彼のおかげで学んだことが多い。学部のときからのつきあいなので、じつは最初からぼくのところで育った初めての博士ということになる。しかし残念ながら手話言語については教えていないわけだから、「育った」というだけなのが残念なところだ。まあ、会話分析のイロハとか、複合移行適格場の話などに食いついてきてくれたのだから、きっかけぐらいにはなったのかもしれない。

手話の研究が次第に会話に向かって言っている中で、彼の研究はまさにその先端のグループの一員の資格があるのだろうと思う。相互行為的な手話研究の展開は、音声言語の研究の発展をみれば、将来は明るいわけだが、そのさらに先を見据える必要はあるのかもしれない。

とにかく、ご苦労様でした。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

朝鮮族研究学会国際大会を覗かせてもらう

2009-12-12 22:48:35 | research
前回にもちょっと触れたように、1月中旬は中国東北部を訪ねる予定で、今日はたまたま目白大学で行われた朝鮮族研究学会国際大会に参加させてもらうことにした。

中野に近い東西線の落合駅までは、じつは僕の住む千葉からは1時間あまりで行くことができる。10時からの大会だったが、10分前に駅につき、そこから10分ほどを歩くことになる。駅から地上にあがると、そこは首都高中央環状線の坂道になっていて、いつか作るつもりの環状線の脚なのか、ゴミ焼却センターの煙突のような四角い塔がその道の真ん中にどん、どんと立っているのが見えた。へーと思っていると、後ろからものすごい人数の年配の一団が追い越していく。みな、リュックを背負っているのと、なにかタグをつけているので、町歩きツアーだったかもしれない。歩くのも速くて、かなり迫力あり。

信号のところから狭い道に曲がって住宅地に入っていくと、そこは古い家と新しい家が混在する不思議な風景が続いてる。コンクリート打ちっ放しの家があると思えば、木造の住んでいるのかいないのかわからない家や、昭和の雰囲気絶大の歯科医院があったりする(写真参考)。そんな家並みが坂道の両側に続いているわけだ。この坂道は名前がついているようで、江戸時代の地図を見たら、もとの姿がわかるのかもしれない。

ようやく目白大学に到着して、学会で手続きをすませる。面白いのは参加料にお弁当がついていたこと。ぼくは午前の研究発表の分科会が終わったらすぐに帰ることにしていたので断ったのだが、たしかに住宅街にあるから、こんな気づかいも必要なのかもしれない。朝鮮族研究学会を運営しているのはどうやら日本に住む中国朝鮮族の研究者や経済関係の人々のようだった。スライドや資料は日本語で示されていたが、発表自体はほとんど朝鮮語(韓国語も?)で行われていた。

ちょっと遅れて入った最初の発表は、貿易関係の研究所の人で、延辺自治州と新潟のニット産業の小さな町の経済関係の事例を報告していた。延辺はまさに中国の辺境にあたるが、そこは海に近く北朝鮮にもロシアにも近いために、経済開発がさかんな場所でもあるらしい。朝鮮族の文化資本をどのように利用すべきか、なんていう政策的な発表もあった。韓国の高麗大学の学者は到着が遅れてその分科会自体のスケジュールがめちゃくちゃになってしまったのだが、滔々と北京郊外の朝鮮族在住地域の社会経済的な調査を報告して、中国籍でかつ朝鮮語を使用できる朝鮮族の経済的優位について話していたのが印象に残っている。

文学研究のコメンテーター役の研究者は、私たちは3言語を所有しているのではなく3言語に所有されているのだ。だからアイデンティティといった閉じた系をもちにくく、むしろ3言語に開かれた系を持っている、なんて発表者の研究とほとんど関係のない話をやっていた(この研究者だけ日本語だったので理解できたわけだ)。高麗大学の学者の話にもこれは通じている話なのだろう。

残念ながら朝鮮語がわからないので延辺の知識はあまり増えなかったけれど、日本には5万人の朝鮮族と自分を考えている人々が住んでいて、その中には研究者もビジネス界の人々もおり、そして国際大会をも運営するほど学会活動は活発な様子だった。そう、活発で明るい、それが大会を覗かせてもらった印象だ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

論文間に合わず

2009-12-09 23:35:17 | Weblog
最近あまり更新していないのでメモ風に。

今学期の大学院は久しぶりに教室談話に戻って、研究準備の運動をしている。授業コーパスのデータのビデオを見ながら、学生さんたちと分析を試みている。Sinclair and CoulthardからはじまってMehanに移るところ。最後は、GoffmanのFootingでやってみる予定。ブログのどこかで触れたいのだが、まだうまくまとめられない。

寒そうな曇り空。今日は終日、家で仕事。博論審査の論文を読み続ける。

少しだけ論文に手をつける。外国人の言語問題について少しずつ書いているけれど、なにせ1週間に2,3時間しか使っていないので蝸牛の歩み。まっすぐ進まず、いろんな茂みやあなぼこで道草を食う。10日が締め切りだそうだから、明らかに間に合わない。しかし、よい頭の体操なので、とにかく最後まで終わらせたい。母語話者ー非母語話者パラダイムについて考え中。年末までにできるかな?

1月には中国の北の端、延吉市に短い調査にいく予定。ロシアや北朝鮮との国境が間近なので、なにが見えるかわからないと思って注文した単眼鏡が届く。カールツァイスの一番安いもの。手のひらに隠れる位なので荷物にもならず、威力を発揮してくれそう。

旭川の旧友から余市のリンゴジュースが届く。うれしいおくりもの。余市というところが素晴らしい。
さて、お返しは何にしようか?なんて考えるのが正しい師走の過ごし方のはずだが。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする