フクロウは夕暮れに

接触場面研究の個人備忘録です

「動物と向き合って生きる」

2008-01-09 00:30:03 | my library
年末の帰省中に見つけた好著です。板東元著・あべ弘士絵で、2006年初版が角川書店から出ています。手に入れたのは2007年4月の再版です。

娘のために買ったのですが、家族3人で夢中になって読みました。小中校生の推薦図書ともなっています。

著者はあの有名な旭山動物園獣医・副園長で、旭川の旭山動物園を全国一の入場者数にした立役者です。小さい頃からの生き物に対する感動と人間に対する不信感から話は始まるのですが、その後は、旭山動物園に入ってからの野生種を目の前にしての驚き、そこから始まった動物園の改革、日本人の動物好みの偏向、動物園の社会的意義へと、話は次第に社会性を帯びてきます。

著者は、旭山動物園の特徴となった「行動展示」が、ペットと野生動物はまったく異なるという主張から始まっていることを強い調子で語っています。とくに著者が主張するのは野生種の動物が持っている尊厳(dignity)という問題です。著者は、死んでも他種の動物である人間から餌をもらおうとしない小熊の生き方に小熊の尊厳を感じ取っているのです。動物世界の共生とは、仲良く生きることではなく、一種緊張しながら調和していくことではないかと言います。動物と人間もまた、相手を理解不可能な存在として、その存在の尊厳性を認めながら共存していくことを目指すべきだと言います。著者の言葉は、動物の生とも、動物の死とも向き合う人だけに、説得力があります。

共生といい、尊厳といい、これはしばしばこのブログで取り上げてきたキーワードです。著者は動物について語っていますが、私には人間についての哲学を語っているように感じたのでした。
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