「漫画家たちの戦争」のシリーズも、3冊目。
今回のテーマは、「子どもたちの戦争」。
この巻の作品の著者たちは、
ちばてつや、巴里夫、永島慎二、わちさんぺい、小沢さとる、あすなひろし、石坂啓、弘兼憲史らの顔ぶれ。
ちばてつや氏の満州での戦争体験や引き上げの苦労話については、「ひねもすのたり日記」(小学館)の第1巻に書いてあるもので見たことがあった。
そちらの方がより詳しく描かれているので、よいかもしれない。
この巻では、ちばてつや氏や弘兼憲史氏を除くと、今となっては少々地味な存在だった漫画家の方が多いかもしれない。
でも、私にとっては、高校時代夢中になって集めて読んだ永島慎二氏や、絵のユニークさが好きだったあすなひろし氏らの作品があったのは、うれしかった。
さて、この巻の8つの作品の中で、最も心に残るのは、巴里夫氏の『疎開っ子数え唄』だ。
巴氏は、少女漫画中心に作品を描いていた人であった。
久々に彼独特のタッチの絵を見ることができたのは懐かしくもあった。
その内容は、戦争中の学童疎開の生活を描いていた。
主人公の少女が受けるのは、親と別れてのつらさや空腹のひもじさだけではない。
周囲から受ける悲惨ないじめ、とてつもなくつらい体験の連続に、心がふさがれた。
これを読んで、今から40年ほど前に読んだ、「谷間の底から」(柴田道子著;岩波少年文庫)という本を思い出した。
子ども向けのこの作品も、学童疎開の実態を描いた作品だった。
あの頃、読んでまもなく絶版になってしまったが、やはり戦時中の学童疎開の生活のつらさ・大変さがひしひしと伝わってきたので、心に残っている。
私たちは子どもの頃に、学童疎開が描かれるような作品をよく目にしてきたが、今の子どもたちは、そんな作品に出合うことがあるのだろうか?
学童疎開のつらさ、ひどさを知ることがあるのだろうか?
知ってみても、その悲惨さについては、深く想像できないかもしれない。
親が守ってくれない環境で生きざるを得ない子どもたちにとって、そこはまさしく戦場に等しい環境になってしまう。
このテーマ「子どもたちの戦争」には、そんな二重の意味がかけられているようにも感じられた…。